第53話 令嬢達との和解 ★リオ SIDE

 これから3度目となる、スタンピード後のパーティーが開かれる事となっている。そのパーティーに2人で出席する事になっているので、カミルがエスコートの為に、部屋へ迎えに来てくれていた。

 

 今日のドレスはカミルの瞳の色と同じ深い青紫色で、シンプルだがとても美しいラインを描いている。

 

「リオ、とても綺麗だ。目の前に女神様が現れたのかと思ったよ」

 

「ふふっ、大袈裟ね。カミルもとても素敵だわ。今日もエスコートよろしくね、私の王子様」

 

 カミルに寄り添い、パーティー会場へと足を踏み入れる。既に入場していたリズとデュークが私達を見つけ、声を掛けて来た。

 

「ごきげんよう、リオ。疲れたんじゃない?大丈夫?」

 

「ごきげんよう、リズ。私は平気よ。大変だったのは、カミルとデューク達でしょう」

 

「やぁ、リオ殿。先程ぶりだが、体調は悪くなっていないか?我々は魔物を屠るのなんて慣れているが、リオ殿はエリアヒールとエクストラヒールを少なくとも1000回はかけていたからな。魔力酔いとか大丈夫か気になっていたんだ」

 

「まぁ、デュークまで?私は大丈夫よ。普段から何時間もぶっ続けで魔法を放ってるのだもの。これくらいなら問題無いわ」

 

「リオ、本当に凄いわね!わたくしも、もう少し魔法の練習を頑張ってみようかしら。回復魔法は使えない事はないんだけど、ちょっと苦手なの」

 

「今度一緒に練習しましょう?教えるのは下手だけど、デュークもカミルも居るから……キースも誘わないと拗ねるかしらね?」

 

「ふふっ。そうね、拗ねると思うわ」

 

 2人で楽しく話しをしていると、カミルとデュークが何やらキョロキョロしている。どうしたのか聞きたいが、今は聞いてはいけない気がしたので、周りを気にしつつ知らないフリをした。

 

「リオ、ちょっと離れても平気かい?」

 

「えぇ、大丈夫よ。デュークも一緒に?」

 

「そう」

 

「了解」

 

 端的に話しをするのは、切羽詰まってる時のカミルの癖でもあるのだが、何かあった時にはそういう話し方をしようと2人で決めていた。


 何かは分からなくても、何か起こるかも知れないと、お互い理解していたならば、身構える事もできるからね。考え方が似てるからか、カミルのやりたい行動はそれなりに分かるのよね。

 

 のんびりしながらリズと飲み物を飲んでいると、決起会で難癖をつけて来た令嬢達がこちらへ近づいて来る。リズと目を合わせ、2人で頷いた。

 

「ごきげんよう、エイカー様、カミル殿下の婚約者様。先日は大変な失礼をしてしまい、申し訳ありませんでした」

 

 令嬢達は頭を下げ、キチンと謝って来た。

 

「え?えぇ、謝罪を受け入れますわ」

 

「ありがとうございます!スタンピードの第一陣に無理矢理されてしまわれていたので、とても心配していたのです。わたくし達の愚かな行動が引き起こしてしまったのだと……」

 

「あぁ!あれからずっと気になさっていらしたのですか?私はカミル殿下に守っていただけたので大丈夫ですよ」

 

「本当にごめんなさい。カミル殿下は皆んなの憧れで、婚約者様が羨ましかったのです」

 

「謝罪はいただきましたから、もうお気になさらなくて大丈夫ですわ」

 

「本当にお優しくていらっしゃるのですね。カミル殿下が大事になさるお気持ちが分かりました。わたくし達も精進いたします。何かありましたら、いつでもお声がけください。お力になりますので」

 

「えぇ、ありがとう。その時はお願いしますね」

 

 もう怒って無いわよと微笑み頷く私に、令嬢達は軽く頭を下げて離れて行った。

 

「リオはさすがね……わたくしなら嫌味のひとつぐらい言いたくなりますのに」

 

「ふふっ。彼女達も考える事が出来て良かったわ。自分の非を認めるのは、とても難しい事だもの」

 

「ええ、そうね。そこはわたくしも見習わなきゃって思ったわ」

 

「リズはちゃんと考えて行動出来るじゃない。賢いし」

 

「リオには及ばないわよ……行動力も凄いじゃない」

 

「私にはカミルが居てくれるからよ。1人じゃ何も出来ないもの。それに、リズ達も居てくれるでしょう?」

 

 頼りになる仲間がいると再確認した事で嬉しくなって、にっこり笑顔でリズを見ると、リズの顔が赤くなった。

 

「リオは人たらしね……」

 

 リズが何か小声で何か言ってたけど聞こえなかったわ。顔を赤くしているから、何かしら可愛い文句でも言ってたのでしょうけどね?ふふっ。

 

 ふと、何気なく周りを見ると、怪しい人影がカミルに近づいているのが見えた。

 

「え?カミル!?危ない!」

 

 怪しい人影は手に刃物を持っていた。カミルの背中に向かって走り出すのが見え、私も慌てて走り出した。身体強化魔法をかけ、一足早くカミルの背中に抱きつく事ができた。

 

「ゲボッ!」

 

 私の口からは、真っ赤で生ぬるい血が流れているようだ。私はどうしたら良いのかしら?まともに考える事が出来ないわ。意識が遠退いて行く……

 

「リオ!!!!リオ、何故……」

 

「リオ殿!大丈夫じゃないな、医者を呼べ!」

 

「リオ!」

 

 皆んなで私の名前を連呼してるのは聞こえていたが、何も反応出来なかった。もう限界だわと思った瞬間に、そのまま意識を手放したのだった。

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