第36話 第一陣 スタンピード ★カミル SIDE

 魔物が大量に押し寄せるという、スタンピードの予言された日となった。

 

 リオとソラと僕、デューク達の魔導師団、他にも僕の近衛騎士や兵士も来る予定だったのだが、予定の300人からかなり減って、100人程度となっていた。

 

 ソラが言うには、魔導師達が結界を張って、魔物をバラけない様にさえ出来れば、僕とリオなら余裕で倒せるらしい。ただ、どれくらいの時間をかけて、魔物が出て来るかが分からないとの事だったが。

 

 魔物は、とある場所から湧き出て来るらしい。空間の狭間だと言っていたが、異次元と考えて良いそうだ。そして『とある場所』も分かっているから、そこを中心に半径20m程の距離に魔導師達が高さ20mの結界を張ってくれる事になっている。

 

 僕とリオが、張り巡らされた結界が10mぐらい空いた場所に陣取り、出て来た魔物をひたすら屠る。余裕があったら、リオも双剣を振いたいと言っていた。

 

 何匹ぐらい出て来るんだろう?ソラは10万〜50万匹だと言っていたが、あまりにも差があり過ぎでは無いかな?

 

 さぁ、そろそろ時間だ。リオとソラは全く緊張感が無いな。来たら教えるよ〜と言うソラを、リオも信用してるからだろうが……儚い見た目と違い、肝が据わっているんだよね、リオは。大体、肝が据わって無ければ『最速』を試して見ようとは思わないだろうしねぇ……?

 

「来るよ〜」

 

 ソラが気の抜けた声で教えてくれる。確かにチラホラ魔物が見えるね……あれ?こっちに来ないぞ?スタンピードは暴走とかするんじゃないの?のんびりしてる様に見えるね。

 

「魔物さんたら、のんびりしてるのね」

 

「一度攻撃すれば、沢山出て来るよ〜」

 

「刺激しないとダメなのね?」

 

「そうだよ〜。カミル、雷魔法使える?湧いてる場所に落として見て〜。凄い勢いで出て来るよ〜」

 

「魔物に直接攻撃するんじゃ無くてかい?」

 

「それでも出て来るけど、『狭間』を攻撃した方が、一気に出て来るよ〜」

 

「えぇ……安全に魔物に攻撃しないかい?」

 

「それだと長期戦になるかも〜?皆んな疲れちゃう〜」

 

「リオ、どっちが良いと思う?」

 

「魔導師様達の防御壁にはずっと魔力を使ってますし、早めに終わらせた方が、次に備えられるかと……あまりにも多かったら、1発だけ超級魔法を撃ち込みましょうか?」

 

「使える様になったんだ……?」

 

「えぇ、上級の姿を隠せる魔法を私も使えるから……」

 

「こっそり練習したんだね……まぁ、時と場合で、ね」

 

「リオは特級まで余裕で使えるんじゃないの〜?」

 

「僕が控えて欲しいって言ったんだよ。目立ち過ぎると敵を刺激するからね。さて、じゃあ雷魔法を打つよ!」

 

 僕は集中して『狭間』を狙って雷魔法を落とした。凄い数の魔物が我先にと押し寄せて来る。

 

「飛んでる魔物は居ないね。取り敢えず、上級魔法をガンガン撃ち込んでみようか。リオは計画通りに魔力を半分は残して撃ってね」

 

「えぇ、分かったわ」

 

 2人で上級魔法を撃ちまくる。どちらかといえば、魔道師達の防御壁の方が心配だな……まぁ、デュークが何とかしてくれると信じよう。

 

「全体の3分の1ぐらい殲滅したよ〜」

 

「えぇ?もう?」

 

「2人でそれだけ上級魔法撃ってたら、魔物もどうしようも無いんじゃない〜?」

 

 リオが撃つのをやめた。魔力が半分になったのかな?

 

「リオ、魔力が減ったの?」

 

「ううん。土煙で見えないから、撃ち止めただけよ。カミル、魔力の残りはどれくらいある?」

 

「残り3割って所かな?」

 

「じゃあ、『魔力譲渡』しちゃうわね」

 

 リオが僕の肩に触れる。魔力を貰ってる間も、僕は魔法を撃ち続けた。譲渡と攻撃を同時に出来るか、昨日確認しておいたのだ。備えあれば憂いなし、だよね。

 

「あと1割も残って無いと思うよ〜」

 

「思ったより全然早かったね……」

 

「リオ、下に行こうよ〜。剣でも魔法でも良いから、撃ち漏らしを倒しに行こう〜?」

 

「僕も行くよ。リオは防御壁の左側に沿って見て回って?僕は右側に沿って行くね」

 

「はーい」

 

 ローラー作戦に近いかな?練習装置のお陰で幅20mぐらいは余裕で動く物を察知出来る様になっていた。僕とリオで並べば40mは見れる事になるのだ。それに生きてる魔物を屠るので、魔物の魔力の動きは余計に分かりやすい。練習装置は無機質な物が飛んで来るだけなので、魔物を屠るより面倒だったりするんだよね。

 

 壁に沿って歩いて行けば、最後はリオに辿り着くからね。今回のスタンピードは2時間半程度で終わったよ。歩いて殲滅するのに時間が掛かった感じだね。準備に4時間掛かってるから、魔導師団の者達が1番大変だったんじゃ無いかなぁ?まぁ、無事に終わって良かった。

 

 この後は、夕方からパーティーがあるらしい。僕達が無事に戻って来るって、本当に思ってくれていたのだろうか?疑心暗鬼になる事もあるけど、今はリオをはじめ、仲間が居るって思えるから耐えられるんだよね。

 

「僕達の勝利だ!撤収するよー!」

 

「バンザーイ!!」

 

「カミル殿下バンザーイ!」

 

「圧巻でした!」

 

「リオ様バンザーイ!」

 

 皆んなの喜びの声が聞こえる。歓声と共に、僕等は王城に帰還したのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る