第15話 2日目の訓練終了 ★デューク SIDE

 予想通り2日目の訓練では、序盤であっさりと中級魔法を全属性クリアしていた。そんなリオ殿の姿を、殿下の水の上級魔法である『隠密魔法』で隠しつつ、3時間の訓練を終えて殿下の執務室へ戻った。


「あっさりだったな……」


「本当に、あっさりだったね……」


 2人で話したかったので、リオ殿に上級魔導書を渡し、部屋まで送ってから戻っていらした殿下が、深く長いため息を吐いた。


「明日は南の森に行く予定だったけど、変更無しで良いのかい?」


「この調子じゃ、上級まで簡単に取得出来そうだよな。無詠唱で、あれだけポンポンと中級魔法を放つとは……魔力量も8000を超えてるし、上級も大気魔力を使えば……リオ殿なら明日1日で出来てしまう気がするな」


 大気魔力を使っているとはいえ、3時間も集中してずっと魔法を撃ち続けれられる者なんて見た事も無い。確かに魔導師はそれぐらいの時間を練習する事もあるが、集中力が足りなくなり、2時間経ったぐらいにはミスが目立ってくるはずなのだ。リオ殿はノーミスで3時間ぶっ通しだぞ?それも魔法を初めて扱った翌日に、だ。


「だよね……まぁ、たとえ上級魔法を全属性クリアしたとしても、当分は秘密にしておく必要があるからね」


「しかし、さすがに陛下に報告しない訳にはいかないでしょう」


「ひと月もせずに予言の日が来るんだ。決起会のパーティーが行われるだろう?魔力量の増加は報告したとしても、切り札として上級魔法を使えるのであれば隠しておきたい」


 確かに、王位継承権第一位の殿下に無理難題を吹っかけて来る輩が出て来るだろうからな。何かしら切り札はあった方が良い。最悪、リオ殿が絡まれたとしても、切り札があると無いとでは大違いだからな。


「あぁ、そうだ。殿下、リオ殿と魔力循環をしてみてはどうだろうか?リオ殿の魔力の色は白だと思っていたのだが、どうにも違うようで」


「ん?珍しいね。デュークでも分からないのかい?」


「あぁ。視覚では白だろうってぐらいだ。魔法を使うのに大気魔力をメインで使ってるから青が混ざって分かりづらい。私が人物鑑定すればハッキリするのだろうが、リオ殿のステータスは守るべきだろう。殿下のみ知っている方が良いと判断した。私は他の召喚者とは面識もないから、異世界人特有の物なのかすら不明だろ?」


「なるほど、確かにね。夕食の前にリオの部屋へお邪魔して確認してみるよ。分かったら明日にでも報告するね」


 デュークですら分からないと言う、リオの魔力の色を確かめるために、僕はリオの部屋に向かうのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る