大人のなり方

色葉みと

大人のなり方

 数ヶ月後、私は18回目の誕生日を迎える。


 正直、もうすぐ成人するなんて実感は全くない。

 必死に今を生きているだけで時間は過ぎ、いつの間にか18年くらい経っていた。ただそれだけのこと。


 18歳になるからといって、成人するからといって、何かが大きく変わるのだろうか?

 そりゃあクレジットカードを作れたり、選挙権があったり、10年有効のパスポートを取得できたりするだろうけど。


 言ってみればそれだけだなと思ってしまう。

 権利と責任が増えるだけで、はたぶん変わらないから。


 例えば、『成人』=イコール『大人』ではないということ。

 制度的にも言葉の意味的にも『成人』は『大人』なのだろう。


 だがここで聞きたいことがひとつ。


「子どもは大人の言うことを聞きなさい」


 こんな言葉を言われたことってない?

 大人から一方的に理由も聞かされず言われたこの言葉。

 これ、どういうことだと思う?


 子どもは大人より知っていることが少ないっていうこと?

 子どもの安全を大人が守らないといけないっていうこと?

 子どもは判断を間違うから大人が正してあげないとっていうこと?

 子どもより大人の方がえらいっていうこと?


 確かに大人の方が物事をたくさん知っているし、大人は子どもの安全を守らないといけないのかもしれない。


 でもさ、大人だって判断を間違えるし、正しいと思っていることが実は正しくなかったなんてこと、ざらにあると思うんだよね。

 まあこんな話をすると、『間違い』って何? 『正しい』って何っていう話にもなるんだけど。


 そして、子どもより大人の方がえらいっていうのはよく分からない。

 会社のように何か明確なルールのようなものがあるわけでもないし、その会社でも年齢でえらさが決まるわけではない。

 だったらどうして大人の方がえらいの?

 地位なのか、名誉なのか、はてさて学歴なのか。えらいってどういうこと?

 そう考えてしまうのも無理はないと思う。


 そもそも、大人とは何なのか?


 子どもと比べて知識を持っている存在?

 子どもを守る存在?

 子どものように間違えない正しい存在?

 子どもよりえらい存在?


 それでは子どもとは何なのか……、考え始めたらキリがない。


 では、『大人』にはどうやったらなれるというのか?


 もしかしたらそんなの簡単だよと『大人』になる方法を知っている方もいるのかもしれない。


 でも私には分からない。

 これは私にとっての『大人』であって、誰かにとっての『大人』ではないのだから。


 さあ、私は『大人』になれるのだろうか。

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