第3話 スルースルの花園<7>

 「セアラ?無事だったのね?!」

 町の外れの老木の前に、少女の姿を見とめると、女性は走ってやってきて、少女を抱きしめた。

 「お母さん……」

 「あんまり心配させないで……」

 声が震えていた。

 「おい、セアラがいたぞー!」

 「本当だ、セアラだ!」

 「セアラー!よかったー!」

 たくさんの声が集まってきた。

 「みんな、心配してくれてたの?」

 セアラが小さな声で言った。

 「当たり前だろ!」

 「まだセアラに遊んでもらってないもんねー」

 「今さら何言ってんだよ、バカだな」

 セアラは目が熱くなってくるのを感じた。

 「ありがとう……」

 ナンシーとヘジュもそんな様子に微笑んでいた。


  ピシッ


 何かが割れるような音がして、皆はっとする。

 「木が……泣いている……?」 

 ナンシーがつぶやいた。


 ――わしはこの身の醜さゆえに生きながらえた……

 ――何百年もの間、わしを切ろうとする者は、おらなんだ……

 ――気味悪がって、誰もわしには近寄らなんだ……

 ――仲間は次々と倒されていった……

 ――気がつくと、わしは独りになっていた……

 ――それでもわしのそばに来る者は、おらなんだ……わしを愛する者はいない……わしは独りぼっちだ……

  

  ピシピシピシ……

  ザザー、ドサ


 人々の目の前で、年老いた木は、根元のうろから二つに割れて、倒れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る