第3話 スルースルの花園<1>

 ここは私の花園。私だけの花園。ここを育てたのは私。ここを美しくしたのは私。そう、だから私に従いなさい。 私はこの花園の女王なのだから……


          ※


「ねぇ、今日は穏やかでいいね」

 ヘジュはにこにこしながらナンシーを見上げる。

「そうだね……風もそんなに冷たくはないし……」

 ナンシーは、すこしぼんやりした声で答える。

「ナンシー!」

「え?」

「なにぼけーとしてんだ。変だぞ」

「ああ、ぼけーとしてた?ごめんごめん」

 ナンシーは自分の頭をコツコツとたたくと、いつもの顔に戻る。

「あんまり気持ちが良くて、ちょっとぼーっとしてたんだ、きっと」

「ふーん、それだったらいいけど。あれ、あの子……」

 ナンシーは、ヘジュの指さした先に目を向けた。そこには、ヘジュよりも二つか三つ年下の、七、八歳の女の子と、 その子を囲む十人くらいの男の子と女の子の姿があった。



「へーえ!良い子のセアラは今日もお母さんのお使い??」

「えらいわねぇー!へぇー!」

「そんなに忙しいから、私たちと遊んでる暇なんかないんだー!」

「そーだよなー!俺たちみたいな暇人とちがうもんなー!」

「おいっ、なんとか言えよ!」


「ちょっと!あなたたち、何してるの!」


「あ、まずい」

「行くぞ」

 子供たちの様子に腹を立てたナンシーたちが走ってくるのを見て、真ん中でいじめられていた子一人を残して、あとの子供たちは、 みんな逃げていってしまった。

「大丈夫?」

「うん……ありがとう……」

 ナンシーの言葉に少女は小さな声で答えた。

「あんなのひどいよ。大勢でさ。君だってどうして何も言わないんだよ!」

「……」

「いいよ。家まで送ってあげるね」

 ヘジュの言葉に答えられなくてうつむいてしまった少女の肩に、ナンシーはそっと手を置いた。

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