第2話 黄金松のたきぎ<3>

 「黄金松~、黄金松~…」

 どこかとぼけたような男の声が近づいてくる。

 「ああ、薪売りさん、五束ほどちょうだい」

 「私のところも。この木のおかげで、うちはみんな健康よ」

 「わしは、古傷が痛まんようになった」

 「僕はこの前風邪をひいたけど、すぐに治ってしまったよ」

 薪売りの周りに集まった人々は、皆口々に黄金松をほめた。

 「へぇ、本当にみんな感謝してるのね」

 木の陰から、ナンシーとヘジュは黄金松の人だかりを見ている。 黄金松の荷車を引いているのは、三十にも六十にも見えるような男だった。

 「なんか不思議な人だね。あの人なら、断崖絶壁にはりついて黄金松を切っていたっておかしくない気がするよ……」

 「そうだね……あ、あの人、帰っていくよ。早く追わなくちゃ」

 ナンシーとヘジュは、空っぽになった荷車を引っ張っていく男のあとをこっそりつけていく。

 「あの人、案外速いね」

 ヘジュの言うとおり、空っぽの荷車は、夕暮れの中にするすると消えてゆくのだった。

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