第2話 黄金松のたきぎ<2>
コンコン
――
コンコン
ギィ
「おやまあ……」
ドアを押し開けて出てきたのは、十歳のヘジュを同じくらいの背の高さのおばあさんだった。
「あのっ今夜、泊めてもらえませんか?」
ナンシーもヘジュもにこにこをくずさないでお願いする。
「もちろんさ。こんなに寒いのに、子供たちを外に放り出したりしないよ。今日は黄金松もまだあるからね。暖まるといいよ」
おばあさんは、意外にはっきりした声でそう言うと、ナンシーたちを家の中に招き入れた。
「ねぇ、黄金松って?」
ヘジュがおばあさんに尋ねる。
「黄金松?ああ、黄金松はいいよ。樹液を溶かせば傷薬になるし、皮を煎じて飲めば、万病に効く。おかげでこの村の者は、 皆、健康だ。そして燃やせば、暖かい」
「それって、どんな木なの?」
「ああ。これだよ」
おばあさんはゆっくりと立ち上がり、台所の隅に置いてあった籠の中から薪を一本とると、ナンシーとヘジュのところに持ってきた。
「ただのクスクスの木みたいね」
ナンシーはヘジュの耳に小声でささやく。クスクスはどこにでも生えている、木肌の黄色い、珍しくもない木だ。それがそんなに重宝な ものだとは、聞いたことがない。
「ねぇ、これはどこに生えている木なの?」
今度はナンシーがおばあさんに訊いてみる。
「さあねえ。二週にいっぺん、薪売りが持ってくるだけだ。だがどこにあるのかなんて、教えちゃあくれない。それはそうだろうねえ。 やたらと教えてしまちゃあ、自分の商売にかかわるからね。それに、黄金松はたいへんな岩場に生えるという噂だから、無理に聞き出して 自分でとりに行こうと思う者もおらんのだろう。だから知っているのは薪売りだけさ」
「これはクスクスとはちがうの?」
ヘジュがさっきのナンシーの感想を口にした。
「ちがうともさ。クスクスじゃあ病など治らんし、あんなに暖かい火もおこせはしないよ」
「次に薪売りがくるのはいつ?」
「あと一週間後かねえ」
ナンシーとヘジュはこっそり顔を見合わせて、うなずき合った。
「あと一週間泊めてください!」
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