【郷倉四季】質問1 「ヤンキー漫画」はこの先どのように生き残っていくんでしょうか?
【人物紹介】
郷倉四季
三〇代前半。姫路市在住。市内で引っ越しを予定。図書館が近く、古本屋が電車で一本の場所になる。スタバも近い。環境が変わったら作業速度が二倍から三倍になると信じている。車の免許も取る予定。今日、自動車学校からの資料が届いた。明石校のだった。僕は何かを間違えたらしい。
ーーーーーーー
質問1 「ヤンキー漫画」はこの先どのように生き残っていくんでしょうか?
漫画家って一度は憧れる職業なのかも知れませんね。
僕も漫画家になりたい時期がありました。
ノートに絵を描いていて中学二年からデッサン教室に通った結果、高校二年の夏に僕には才能がないと諦めました。
個人的にこの挫折は大事な経験でした。
さて、今回の往復書簡の前半のテーマは漫画にして良いかも知れません。倉木さんに漫画を50作ほどピックアップしてもらったものを送っていただいていますし。
この50作のリストは往復書簡を続けていく中で触れて行ければと思うのですが、今回は僕の前回の質問の中にあった「ジャンル」について触れていきます。
以前、僕と倉木さんは漫画の実写映画に関する対談なども行っていましたので、今話題にするなら「幽遊白書」でしょうか(やりとりしている頃は話題になってました)。
「幽遊白書」をウィキペディアで調べるとジャンルは「少年漫画」「学園漫画」「ファンタジー漫画(オカルト)」「格闘漫画」「シュールコメディ漫画」と出てきます。
ふむ。
「シュールコメディ漫画」ってなんだろうと思いつつ、個人的に「幽遊白書」と言えば「ヤンキー漫画」だと思っていました。
ウィキペディアではそうではないようです。
ヤンキー漫画って息の長いジャンルですよね。少し前ですが「東京卍リベンジャーズ」が話題になりましたし、実写化で「今日から俺は!!」も世間で再発見された印象もあります。
今、もっともホットなジャンルとは言えませんが、なんだかんだ令和でも存在感を示しているので、今後も話題になる新作はありそうです。
当然、少々古臭いジャンルというレッテルは張られている気はしますし、「今日から俺は!!」が若い子たちに受け入れられた背景には、ヤンキー文化が身近にないので、一種のコスプレ的なニュアンスで親しまれたと言う記事を読んだこともあります。
勇者やディズニープリンスと同じファンタジックで記号的なファッションとして、ある種のヤンキーたちは受け入れられているのでしょう。
氣志團とかそんな存在ですし。
ちなみに、少し話をズラすと今回、ヤンキー文化を調べてみるとファッションの側面と共に音楽との繋がりも見ることができました。
その時代の不良なファッションで若者の代弁者として歌を歌う。
代表の一人に尾崎豊が出てきました。「15の夜」の歌詞に社会からはじき出されてしまった不良たちが何人が共感したのか、と考えると彼らのような存在は必要だったんだなと思います。
同時に令和の不良たちが共感したり、憧れたりするアイコンとなる存在はいるのか、と考えてみました。
浮かんだのは、ラップのフリースタイルの腕を競うMCバトルや日本のアマチュアキックボクシング及び総合格闘技大会のBREAKING DOWNの存在でした。
彼らは社会に弾かれながら、しかし、ヤンキー文化を競技化することでエンタメとして社会に受け入れられています。少なくとも僕にはそのように見えます。
あるいは、ユーチューバーもその一環に入るのかも知れませんが、僕はその辺に詳しくないので、今の時点で言及はいたしません。
ただ、こうして考えてみるとヤンキー文化的なものは戦後日本のカルチャーの一つを担っていましたし、現在も生き残っていることが確認できます。
倉木さんは、この令和の「ヤンキー漫画」ひいては「ヤンキー文化」について、どう見ていますか?
また、倉木さん自身が過去に「ヤンキー漫画」ひいては「ヤンキー文化」をどう受け止めてらっしゃたのか、などを伺ってみたいです。
●
質問自体は終わっているようなものなのですが、前回僕の小説に関する漠然とした相談に対して「さとくら君が読んできた小説で、オチが納得いかなかったものの続編を勝手に作って欲しいのだ」という回答をいただきました。
なので、ここでは僕なりの今まで摂取したヤンキー作品の続編というか、それを土壌にして作品を作れないか? という試みをしてみたいと思います。
まず、僕の目から見て「ヤンキー漫画」ひいては「ヤンキー文化」がどう映っているか書いてみます。
僕がヤンキー文化的なものを最初に認知したのは「GTO」です。それもアニメで、夕飯時にテレビで放送していたのを家族と見ました。今でもOPのL’Arc~en~Cielの「Driver's High」がめちゃくちゃ格好良かったのを覚えています。
「GTO」のアニメや漫画を僕が楽しめたのは、ひとえに教師ものだったからです。
ここには世代の断絶があります。
正当なヤンキー漫画は僕がカルチャーを楽しみはじめた頃には、もう出尽くしてしまって、それだけを描くのは古いものと言う空気があったように思います。
具体的にはゼロ年代初頭辺りで、その代わりと言わんばかりに「池袋ウエストゲートパーク」などが席巻していました。
「池袋ウエストゲートパーク」をヤンキーものと見ることもできると思いますが、正当なヤンキー漫画とは違うと僕は考えます。
僕自身の経験の中で、正当なヤンキーものが復権したのは映画「クローズZERO」の流行です。あくまで個人的にですが、イケメン俳優たちの演技や人気によって正当なヤンキーものは再発見されたように見えます。
平成は昭和で泥臭く描かれていたものを、シャープでお洒落な雰囲気を被せて、再流行を図る動きが一部あったように思えます。
ヤンキーものはその一つと言えるでしょう。
さて、そのような土壌を踏まえた上で、僕が作品作りとして考えたい構造は【ヤンキー】+【何か】の組み合わせです。
「GTO」で言えば、【ヤンキー】+【教師】です。
今回の出発点となった「幽遊白書」は【ヤンキー】+【オカルト】で、「東京卍リベンジャーズ」は【ヤンキー】+【SF】です。
そして、「今日から俺は!!」は作品を見ていないので、同じ作者の「お茶にごす。」で言えば【ヤンキー】+【お茶(文化系の部活)】になります。
あくまで僕の分類ですが。
ということで、僕なりに触れてきたヤンキー漫画で、倉木さんの言う「オチが納得いかなかったもの」で考えると、「R-16」がまず浮かびます。
僕自身あまり正当なヤンキー漫画を読んできていないので、「R-16」はほとんど唯一と言って良いかも知れません。
あらすじを調べると「神奈川県横浜市にある、不良だらけの地域に育った3人の少年。彼らがそれぞれの問題に苦悩しながらも成長していく姿を描いた青春ヤンキー漫画」と出てきました。
ヤンキー漫画にとって「地域」は結構重要ですよね。
そして、「3人の少年」。彼らは昔は仲が良かったけれど、今はほとんど敵同士になっています。
あらすじにはありませんが、そんな過去の3人の関係を知っている先輩が死んでしまうことから彼らの関係を決定的なものになってしまい、お互いに別々のチームに入って敵対していってしまうのが「R-16」だったと記憶しています。
ここから、ヤンキー漫画的作品の成立に必要な要素を抜き出してみましょう。
まず、舞台である「地域」があります。ヤンキーは地元を背負いがちみたいな話もありましたが、彼らのアイデンティティには土地や地域性があるのでしょう。
個人的にこの辺は祭りと不可分な関係性を結んでいると考えますが、今回は割愛いたします。
地域の後に友達、先輩などの周囲との関係性があります。関係性の成り立っていないヤンキー漫画は今のところ読んだことがありませんし、起きる出来事や事件の多くがこの地域にいる友達や先輩関係による部分が大半を占めます。
あとはチームと地域最強みたいな称号(「クローズZERO」で言う「鈴蘭制覇」)が絡んできて友情と喧嘩、あと男気な世界が成立します。
構造上の【ヤンキー】では何が描かれるかは、だいたい分かったように思います。
では、次に何を組み合わせるかですが、その前に想定される掲載誌を考えましょう。
ヤンキー作品そのものを受け入れてくれるジャンル小説はありませんし、文化的には漫画の方が主流です。
となると、コミカライズされやすい作品が前提でしょう。賞で言うと、カクヨムなどの投稿サイトなどで受け付けているコミカライズを前提とされている賞。
暫定的ですが、カクヨム、小説家になろう、アルファポリス、エブリスタに掲載し、そこで開催される賞を取ることを前提の作品。
コミカライズも視野に入れるなら、1話はツイッター漫画の1投稿4ページ+3投稿以内が個人的に読みやすいので、12ページ内で収まる内容。
穴だらけな回路ですが、そのように想定すると【ヤンキー】+【食】かなと思います。
「ダンジョン飯」とか流行っていますし、飯ものであれば終わり方もパターンが作れます。なにより、調べてみるとヤンキーとご飯の組み合わせってあんまりやられていない。
狙い目なのか、成功しないって分かっているから、誰もやっていないのか。
とりあえず、ヤンキーものの不満として飯のエピソードが貧しいんですよね。
「東京卍リベンジャーズ」でもカップ焼きそばを分け合うエピソードくらいしか印象的なものはないですし。
喧嘩すんのは良いけど、人を殴った後とかお腹すくんじゃないの?
という訳で【ヤンキー】+【食】です。
ここから、あらすじを〜と思うのですが、これは公開する内容でもありませんので、ここで割愛させていただきます。
ただ、時間が経って考えてみると【ヤンキー】+【食】は一度挑戦してみたい所存ではいます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます