Day.9怒ったような横顔がやっと安堵の息を息を吐いた
コウと初を見送ってから30分後。
雨が突然止んだのでオレは帰ることにした。
した、のだけど、部活棟の前で焚き火をしている男がいた。
(怖い!!!)
普通にめちゃくちゃ怖かった。
しゃがみ込んでるけど、それでもわかるくらい背がひょろっと高くて、背中を丸めて火を突いている。
真っ黒な髪はちょっと伸びてて、メガネもしてるから顔はあんまり見えない。
見えないのに、オレが見すぎておもクソ目があってしまった。
「うげ。……あれ、どっかで見たな」
向こうは覚えがないのかちょっと首を傾げている。
見つめあってても仕方ないから、焚き火男に近寄ってみた。
「あ、思い出した。初の友達の子と一緒にいる男だ」
「はあ?」
思いっきり不審がられた。
目付きの悪い顔がこちらを見上げている。
「ごめん。あの子、えっと〜〜オトチャン、だっけ。その子と一緒にいるでしょ」
「いるけど、お前はなんなの」
「オレ、武田正時。オトチャンの友達の最上初、の友達」
「ウイ? あー、オトの高校のときの友達か」
「それそれ。なんか見たことあるなーって見すぎたわ」
「いいけどさあ」
「で、なんで焚き火してんの?」
秋とかならわかるけどさ、今梅雨だよ。
こんな湿ってて暑い時に火つけなくていいでしょ。
つーか大学の敷地って勝手に燃やしていいんだっけ?
「オトがラブレター? もらってきたから燃やしてる」
「え、怖い」
「怖くねえだろ。俺のオトにちょっかいかける方が悪い」
「オトチャンと付き合ってんの?」
「付き合ってはいねえよ。なんであれの彼氏になんなきゃいけないんだ」
「やだ、怖い」
つーか意味わかんねえ。
付き合ってない女の子がラブレターもらってそれを焼くってなんだよ。
嫉妬なの? 付き合えよ。
「許可は?」
「事務所に落ち葉の片付けついでに花火するっつったら許可くれた」
「そっちじゃないんだわ。ラブレターだよ」
「捨てておくって言ってある」
「その100倍怖いんだけど」
なんだこいつ。怖いな、もう。
オトチャンたらも、ラブレター捨てるの任せるくらいの相手なら付き合えよ。
「ラブレターもらってキレるくらいなら付き合えよ」
「オトが俺に求めてるの彼氏じゃねえし」
「そうなん? なんかよくわかんないけど、それなら結婚しろよもう」
「お前が」
「トッキーってみんな呼ぶよ」
「……オトも図々しいめんどくさい奴だけど、お前もだな。トッキーが知ってるような関係の人間ばかりじゃねえんだよ」
こいつも大概めんどくさい奴だ。
でも確かに初とコウもめんどくさい。
めんどくさくない奴なんてのは、もしかしたらいないのでは?
「ふうん。ところで君、なんて名前?」
「今? 三沢伊織。さっきからオトチャンって言ってるのは園生陶子な」
「三沢と陶子ちゃんね」
「陶子を名前で呼ぶな。お前も燃すぞ」
「反応が予想通りすぎてウケる。はいはい、園生さんね」
笑って言い直すと三沢はブスッとした顔で焚き火を混ぜた。
ふと思い出して手に持ったままだったタオルを掲げる。
「これも燃やしていい?」
「いいよ」
燻る火にタオルを広げて被せる。
三沢がその上に落ち葉を足した。
パチパチパチ
いろんなものが燃えて辺りが煙る。
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