Day.7問題は体力なんだから一緒に走ろうかな

「オト、それは?」


 昼休みに食堂で伊織と待ち合わせをしていた。

 やってきた伊織は私が食べていたラーメンのトレーの横にある封筒を指さす。


「おてがみ? なんかもらった」


「読んだ?」


「読んでない」


「読まないの?」


「読む必要ある?」


 必要があるやなしやと問われれば、もちろんない。

 ぜーんぜんない。

 私はエロ狂いのビッチであるけど、だからこそというか、自分が相手からどういう目で見られているかを察するのはそれなりに得意なのだ。

 だからこの手紙がお付き合い希望のものだって渡された時にわかってるし、私の答えがお断り一択なのも間違いなし。


「じゃあ受け取らなければいいのに」


 開けもしないなら受け取る必要すらないと呆れたようにメガネを直しながら伊織が言った。


「押し付けられたの。そういうのは全てお断りしてるって言ったけど、それでもなんでも読まずに捨ててもいいから受け取ってって押し付けられて、本人は走り去った」


「捨てないの?」


「捨てるよ。ラーメン食べてからね。だって渡されたのさっきもさっきでさ、ほとんど伊織と入れ違いだったよ」


 捨てに行ってる間にラーメンが伸びたり伊織とすれ違ったら嫌じゃん。

 そう言うと伊織ふうんと言って手紙を拾い上げた。


「捨てておくよ」


「ありがと」


 伊織は手紙をポケットにくしゃっと突っ込んでから自分の昼ごはんを買いに行った。

 今無性にめちゃくちゃ伊織とシたかったけど、昨日シたから(もちろんめちゃくちゃにだ)今日はなしの日。残念。


「あいつ?」


 定食を持って伊織が帰ってきた。

 顎でしゃくられた方に先ほど手紙を押し付けていった男の子が背を向けて座っている。


「うん」


「めっちゃ睨まれたわ」


「ふうん。私の伊織には敵わないのにね」


「オトのことわかってないんだろ」


「間違いない」


 伊織は男の子の姿を遮るように私の向かいに座る。

 そしてサラダの入った皿を私のトレーに乗せた。

 サラダにはなんか肉も乗ってる。あれ、サラダ……なんとか……にく?


「野菜と肉も食べろ」


「ママ〜」


「こんなビッチ娘はいらねえ。これはサラダチキンな」


 伊織の私への理解度がすごい。

 そしてサラダとチキンはとても美味しかった。

 また食べよう。


「伊織、ありがと。美味しい。好き」


「野菜が足りてねえんだよ。愛してる」


 その後は二人で全然関係ない話をして別れた。

 その日の午後はどうしたら伊織が2日に1回ではなく週に5回にオッケーしてくれるかばかり考えていた。

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