おじ戦士道 ~30年間戦い続けてきたおじさんって頼りになります~

伝統わがし

第一章 おじ戦士の戦士道編

プロローグ

 王都には冒険者の酒場という店がある。

 まだ昼にもなっていないというのに、すでに酒場は大勢の冒険者たちで賑わっていた。樫の木で造られた店内は、彼らの熱気に加えて酒と煙草の匂いにいつも包まれている。

 そんな店内を行き交う者とすれ違い、満席のテーブルの間をすり抜け、俺は依頼書が張られている掲示板の前までやってきた。

 今受けられる依頼内容にざっと目を通す。

 しかし生憎なことに、目ぼしい依頼はすでに残っていないようだった。


「ラルフ! 手が空いてるならこっちの依頼を手伝ってくれない?」


 近くのテーブルから、俺の名を呼ぶ声が聞こえてきた。

 よく知っている顔見知り冒険者のうちの一人だ。

 彼女のテーブルにはまだ三人しか集まっていない。冒険に出るには仲間の数が足りないのだろう。

 今日のところは、そこに飛び入りで参加させてもらうのも良いかもしれないな。そんな風に考えながらテーブルに向かおうとしたところで、別の五人組パーティが目に留まった。


 まだ若い人間の男女四人に、ドワーフの戦士が一人加わっている。

 人間のうち男二人は戦士と斥候、女二人は魔術師と僧侶だろうか。今時では珍しいほどバランスの取れた冒険者パーティだ。

 しかしながら、その中の誰の顔にも見覚えが無かった。どうやら全員が新入りのようだ。彼らは掲示板の右端にあった依頼書を自分たちのテーブルに持ち帰り、何事か話し合っている。

 あの依頼書は、確かゴブリン退治の依頼だった記憶がある。


 先ほど声をかけてくれた冒険者には、また今度な、と片手を上げて断りの返事をしておく。彼女が不満の声を上げるのを背中で聞きながら、俺は五人組のほうのテーブルへと向かった。

 彼らの受ける依頼のほうが、どうしても気になったからだ。


「お前たち、ちょっと話に加わってもいいか?」


 テーブルに向かって声をかけると、五人の冒険者は一斉に俺のほうを振り返った。

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