サメと海月と思いやり

ネコヤナギ

クラゲ

「こんにちは、」

ぎこちない挨拶に彼女はニヤッと笑みを浮かべる。

「こんにちは。まだ慣れてないんですか。」そう彼女は僕の不器用な挨拶をからかうように指摘する。これでこの会話は2回目だ。友人に紹介してもらった彼女はからかい上手で愛嬌のある人だ。そんな彼女とのデートはこれで3回目。1回目は彼女を紹介してもらったときと同じカフェでお茶をしたあと少し街中を散歩した。2回目は彼女が見たいと言った映画一緒に見てそのあと夜ご飯を食べた。そして今日、僕らは水族館に行くべく、彼女の最寄り駅で待ち合わせをしている。

「いい加減慣れてくださいよ。」なんて笑いながらからかってくる彼女が僕は好きだ。彼女は少しおせっかいなところがあるがそんなところも面倒見の良さが出ているんだな、と愛おしく思う。ハンカチやティッシュを携帯している彼女は

「女子力上げていきたいんで。」と自慢げに両手を腰の位置で組んで息をフンッと吐いた。

水族館に着き、一番に彼女が向かっていったのはクラゲのコーナーだった。

「私クラゲ好きなんです。クラゲって、死んじゃったら水に溶けていって水の中で過ごせるじゃないですか。それがすごく神秘的で羨ましいなって思うんです。」儚げな顔でクラゲを見ながら語る彼女を横目に

「海月さんは溶けても骨が残っちゃいますよ」と冗談交じりに指摘してみると

「なら、私はあなたの隣で一生を終えたいです」海月を見つめていた視線が僕の方を見つめる。不意打ちでそれはずるいだろ。ドキドキするに決まっているじゃないか。

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