第一章 Another World Online 第二節 ?????
第1話 突然の悲劇
鳴り響くアナウンス、突然目の前に現れたメッセージボード、それが消えた後に空中から転がり出たスキル結晶。
タク達やセイト達はクエストをクリアするのは初めて、もしくはスキル結晶が初めてらしく、混乱した末にスキル結晶が落ちて来て慌てている。
僕は慣れた物で、ポロポロと落ちて来る結晶を空中でキャッチすると、即座にインベントリに放り込む。
今回も有用そうなスキルをゲットできた。
「なぁ、ユキ、フィールド制限解除って……まさか」
「草原の先に行ける様になったんじゃ無い?」
「しっ!」
タクは拳を握って喜んでいる、タクもいい加減草原での進展しない狩りに飽きていたのだろうか?
「今のが草原を超えるキーだったんだね!」
「その様だが……貢献度1%か……」
「……私は2%」
「私はぁ、逃げ回ってるだけだったんですけどぉ〜、1%でしたぁ〜」
あっちはあっちで盛り上がってる様だ。
僕の貢献度は41%に83%、前回の超巨大ゴキの時も似た様な表記だった事から、おそらく残りの42%はレイーニャとティアの功績だろう。
事実、ワイルドドックリーダーはレイーニャが一撃で、ビックホーンラビットはティアが屠っている。
僕の功績はビックポイズンスライムのテイムとロックアーマークラブとの戦闘くらいの物だ。
今回のクエスト参加者は、僕とタク達の4人に、妹組の5人、セイト達の4人、それからアランの合計14人だろう。
ロックアーマークラブの死体は、何故か僕が貰う事になった。
セイトとマガネは、自分達が足手纏いで迷惑を掛けたからその迷惑料も兼ねて、と言うのと、話し合いをしている暇があったら装備を補修して、先に進みたいから、らしい。
マヤは口をへの字に曲げていたが、スキル結晶を振ったり透かして見たりしているだけなので、ロックアーマークラブの素材には興味無いのだろう。
唯一正常な反応を示したクリアは、でもぉ〜、あんなに苦労したのにぃ〜。と、悔しげだったが、色々と思う所があった様で、渋々了承した。
タク達はセイト等が良いならと、僕に受け取る様言ってくれたので、遠慮なく受け取る事にした。
軽く話し合いをした後に、良い時間なので今日は解散という事になった。
セイト達は、今日中に装備を補修して準備を整え、明日の朝から北の森に挑むらしい。
タクは今日の夜、一人で西の森に挑むつもりだと言ったので、じゃあセンリとユウミも連れて行ってあげてね、と言っておいた。
センリも動き足りないだろうし、ユウミは水魔法の他に回復魔法も使える。タク一人よりグンと生存率が上がるだろう。
僕は今日の夜、図書館でここら一帯の地形と歴史、生物の分布や採取できる素材なんかを調べようと思っている。
皆と別れた後、取り敢えずログアウトするべく図書館に向かった。
図書館には誰もいなかったので、ベットにお邪魔してログアウトする。
直ぐにリビングに下りた。アヤはまだ戻ってきていないので、夕食を食べる前に寝支度を整える。
しかし、雑事を終えてもアヤは下りて来なかったので、先に夕食を食べてしまう事とした。
夕食を済ませた後は、書き置きである。
ここはお昼の書き置きに合わせて書くべきだろう。即ち、最愛なる彩綾へ、夕食頂きました。君の雪より。と、こんな所だろう。
軽く雑事をこなしてログイン。
◇
目を開くと、図書館の質素な天井。ではなく、何故か豪華な天井が見えた。
上体を起こすと、そこはティアの屋敷のベットの上。
「あぁ、ユキ、やっと起きたか」
「……ティア? 僕、図書館で寝てた筈なんだけど……」
「うむ、私が連れてきてあげたぞ」
「そうなの……まぁ良いけど」
どうやらログアウトしている間にティアに攫われたらしい、ティアは怪力なので僕を運ぶくらい余裕なのだろう。
そんなに時間を掛けたつもりはないので、ログアウトした直後に来たのだろう。
「どうして連れて帰ってきたの?」
「どうしてって……ユキは私の侍女で友達で……こ、ここがユキの家だからな!」
僕の問いにティアは頰を染めて何事かブツブツと呟くと、大きな声でそんな宣言をした。
猫の次は歳下の少女に養われている僕。
「それに、アラン殿に聞いてな、ユキの為に肉をとってきたぞ!」
「へぇ、そう言えばお腹空いたかも」
くきゅるぅぅ〜〜。
「ふふ」
僕は別にお腹が鳴っても恥ずかしくないけど、それで嬉しそうにされると少し恥ずかしい、少しね。
「それじゃあちょっと頂こうかな」
「ああ! たくさん取ってきたからな、いっぱい食べてくれ!」
そう言って食堂に向かう途中、ティアが今日どこに行っていたのか聞いて見た。
「ティアは今日、何してきたの?」
「うむ、レイーナ殿に
「へぇ」
「その時に、アラン殿に見せて貰った肉を思い出してな。ユキに貰ったと言っていたが、何でも凄い売れ行きらしいじゃないか。ついでだから沢山取ってきたんだ」
「へぇ……ん?」
今、何て言った?
「ちょ、ちょっと待って——」
「ん? もう食堂についたんだが……」
そう言ってティアが前に進むと、本物の侍女の人が扉を開いた。
「その肉ってまさか——」
そこにあった物は——
「うむ、ビックコックローチの肉だ!」
豪華な料理に仕立て上げられた黒い塊。
「……嘘だよね」
「うん? 君が沢山取ってきたと聞いたから好きかと思ったんだが……もしかして違ったのか?」
悲しげに目を伏せる彼女に、僕はうんと言えなかった……。
因果応報、良い事も悪い事も、いずれ自分に帰ってくるのだ。
僕は今日、それを改めて思い知った。
地獄の食事を終え、出所さえ問わなければ不味い訳ではない夕食を、勇気と諦観と努力で吐かずに乗り越えた僕は。
その日、図書館での下調べを満足の行く結果で終わらせ、直ぐに寝た。
多分、きっと、夢に出る。
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