諜報令嬢のあずかり知らぬところにて
藤芽りあ
第1話 プロローグ
「ユリアーナ嬢、断言します。あなたの男性を見る目は壊滅的です。どうか、自分で相手を選ぶのではなく、あなたという素晴らしい女性を選んだ私の選定眼を信じて……私と結婚して下さい」
昼下がりの午後。
お気に入りのカフェのテラスでお茶をしていた私、ユリアーナ・ガイルドの前に、顔見知り程度の付き合いであるキュライル侯爵家の御子息フレン様が現れて、失礼なことの混じった衝撃的なことを言い放ったのだった。
キュライル様の銀色に輝く髪と、紫色の美しい瞳に目を奪われながらも私は、口に含んでいたお茶を飲み込むと、カップをソーサーに置き、必死に冷静さを保ちながら尋ねた。
「……キュライル様、失礼ですが――ど、ど、どなたかとお間違えでは……?」
自分では冷静だと思っていたが、声が震えて最後の方は声がかすれてしまった。そんな私に向かってキュライル様は美しい顔を歪ませながら答えた。
「間違うはずがありません。これ以上あなたが他の男性との仲を深めようとするのなら……私はあなたを連れ去ってしまうかもしれません」
言いたいことは色々あるが、私はこの不可解な状況に思わず眩暈を覚えたのだった。
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