復讐

第20話 内藤智への殺傷

「...は?」


翌朝になった。

それから俺は画面に映っているその事実に驚愕する。

それは...ニュースだった。

だけど注目点はそこではない。


「...何で...里島が智を刺すんだ...」


そこには女子高生の殺傷。

里島めぐるが智を刺した、というニュースが入っていた。

まさかの事態だった。

横に居る華凛も驚愕している。


「...何でだろう」

「...分からないな」


そう思っていると電話がかかってきた。

それも...公衆電話から。

何だ一体。

思いながら俺はスマホに出る。


「もしもし」

「よお」

「...貴様...よくもまあのうのうと...電話なんか」


声に聞き覚えがあった。

それは...用場和彦。

俺が最も嫌悪する男だった。

一体何だコイツは。


「...お前に疑いがかかっているんだぞ。何でこうものうのうと」

「いやいや。それよりもニュース観たか?」

「...お前に関連性は無いだろう。...全ては里島めぐるがやった事だ」

「じゃあそれを仕組んだのが俺だとしたら?」

「...それがマジだったら俺はお前を殺す」

「ハハハ。やってみろや。...まあ冗談は置いて。めぐるがいきなり内藤智を刺してな。本当にいきなりですげービックリしたけど」

「貴様。他人事の様な」

「俺は悪くないぞ。勝手にやったんだよアイツらが」


頭おかしいのかコイツ?そもそも内藤智がそこまでイカれたのもコイツのせいだろ。

そう思いながら俺は静かに深呼吸する。

それからテレビ画面を観る。

そして...深呼吸して切り出した。


「お前が仕組んだんだろ」

「...もう一度言うが俺は...」

「お前のせいだ。初期の頃はお前は内藤智を洗脳した」

「...おう。もうそう思うなら勝手にしろ」

「いつか俺はお前をムショにぶち込んでやるよ。マジに」

「やってみたら良いじゃないか。そもそも俺は金を貸しているだけだ。何も悪くないし俺も被害者だぞ」

「金とか絡むとお前はクズすぎるな。我が義兄としてクソッタレだよ」

「...俺は何もしてないからな。勘違いすんなボケ」


そしてヘラヘラした感じで用場和彦は電話を切った。

俺はイライラしながら壁に八つ当たりしてから華凛を見る。


「逆探知とか出来ないかな」

「...それは出来ない。アイツ利口だから多分...これは公衆電話からかけている」

「そっか。...ますます燃えてきたよ」

「...華凛...あくまでお前が犯罪を犯すなよ」

「...そうだね」


俺達はそう話しながら居るとインターフォンが鳴った。

誰だこんな朝から。

考えながらドアを開ける。

そして愕然とした。


「やあ」

「何をしに来たんですか。佐藤栞先輩」

「...休戦協定を、と思ってね」

「...何故ですか」

「朝のニュース観たかな。...俺は気になっているんだ。...内藤智と用場和彦の関係性をな」

「...」

「俺達の目標は同じ。違うかな」

「...まあ確かにそうなんですけど」

「簡単に言ってしまうとね。俺は確かに華凛さんには相当な恨みがある。だけどそれ以外にも兄を病に犯した人。鉛中毒か何かにした奴だ。そっちの方が犯人だから恨むべきは違うものを恨まないといけないからね。今は俺達は共同すべきじゃないかな」

「...そうですね」


俺は華凛と一緒に佐藤栞先輩を見る。

すると佐藤栞先輩はニコッとした。

それからお礼を言ってくる。


「じゃあ先ずは何故、内藤さんが刺されなくちゃいけなかったか。それを考えないとね」

「...そうですね。確かに」

「そして里島めぐるの今後だよね」

「...はい」


そして考え込む俺達。

俺は促してから佐藤栞先輩を家に招いた。

それから俺達は対面に腰掛けてその対面に佐藤栞先輩が腰掛けた。


「...佐藤栞先輩」

「何かな」

「これが終わったらまた華凛を追い詰めるんですか」

「...いや。状況次第だね。それは。...俺はあくまで復讐は復讐するから」

「そうですか」

「...だから華凛さんの事は今は休戦。取り敢えず色々と協力しよう」

「俺は貴方の事が信頼出来ません」

「まあそうだね。じゃあお互いにライバル同士で協力しよう」

「...」

「根っからの信頼じゃない。上辺だけの信頼でね」

「...そうですね」


すると華凛が顔を上げた。

それから佐藤栞先輩をゆっくり見据える。


「佐藤栞先輩」

「...ん?何かな?」

「私は貴方が根本は良い人だって思います。だからその。今じゃない根本の争いをもう止めませんか。私が言える立場じゃないのは重々承知です。だけどこんなので争っている場合じゃないと思います」

「それは元から俺も思っている事だよ。だけどね。...俺は兄貴がやられてそのままで居る凡人に成り下がるのは勘弁だ」

「...」

「...すまないけど根っからの行動は止めるつもりはない。君には恨みがある」

「...分かりました」

「だけど勘違いしないでほしい。その為にも今のこの共同戦線で俺は嘘は吐かないつもりだ。...出来る事は全部協力するから。君達も俺を助けてくれ」

「「...はい」」


それから俺は佐藤栞先輩を見る。

そして見ていると佐藤栞先輩は手を叩いた。

そうしてからお菓子を取り出す。


「...君達にお土産だ」

「申し訳無いですが何か入っていたりしたらなので受け取れません」

「そう思って俺は取り敢えずこうするよ」


そして佐藤栞先輩は目の前で紙の包みを開ける。

それからパッケージに入ったお菓子を食べ始める。

そうしてから咀嚼した。


「...まあこの通り毒は入ってないから」

「...」


俺は静かにその目を見据える。

そして真剣な顔をする。

この人...の事は。

信頼出来るのだろうか。

そう思いながら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る