だましことば
@sotome8755
第1話 言霊師
日本には古来より言霊という言葉が存在する。
近年、ある動画が投稿される。男が一人、なにもない空間に向かって叫んでいるだけの動画である。それを見たある男はそれを言霊師と呼んだ。
とある日、男が一人電車の中でなにもない空間と会話していた。2006年生まれの俺からすると、近年よく見る光景である。今の時代は多様性を大切にしている。たいして気にもならない。ただ、その時だけ何か変な感じがしたのを覚えている。
耳につけたイヤホンをそっと外して好奇心を満たす。前に座っている中年の男はスマホを、一人でしゃべっている男に向け、その光景を撮影した。しかし、その時あることに気が付く。一人で話しているはずの男の前になにか光っている綿のようなものが浮いている気がしたのだ。なにかの見間違いかと思い、目をこする。そこには何もなかった。その後はそのまま何もなくただ家へ着いた。
「おかえり!」
甲高い声とともに妹の
「おう、帰ったのか」
琴理の後ろから、出張の多い両親に代わって俺の面倒を見てくれている祖父の
じいちゃんは芯のある人で、熱い一面がある。一方琴理は天然味強めのきゃぴきゃぴFJKで、2歳離れた俺にはもう眩しい存在になってしまっている。
「お兄ちゃん今日も勉強?」
受験生であるおれにとって勉強は命に等しい。
「おう、じゃ、ご飯の時呼んで」
そう言い残し俺は2階に上がる。ノートの横に参考書を開き、勉強の状況を整える。最近は、気づいたらご飯の時間になるまでスマホを触ることが多い。気合を入れなおすために「よし、やるか!」一言自分に渇をいれ勉強に臨む。その時だった、目の前に今日電車で見た光る綿が現れた。
「うわああ!」
急に目の前に現れたことで驚いた俺は大きな声を出す。
「どうした!」
じいちゃんがすぐさま駆けつける。
「なになに?」
じいちゃんにつづいて琴理が部屋に入ってくる。
「なんかここに光ってる綿みたいなのが!」
焦った俺は吐き捨てるように言った。それに対し、琴理は変なものを見る目で俺を見た。
「勉強しすぎて、お兄ちゃんが変になった...」
だけどその時、じいちゃんだけが真剣なまなざしで俺を見ていた。
時間が経つと綿は消え、じいちゃんと琴理は下へ行き、やはりなにかの幻覚かと思っていると突然ドアをノックする音がする。
音とともに俺はドアへ吸い込まれた。
**********
2000年、ローマ教皇がある声明を出した。
「言霊は実在する」
その日以来、ローマ教皇は表舞台に姿を現わさなくなり、その言葉の真偽はわかっていない。
1999年、ノストラダムスの大予言の人類絶滅の前日、世界に激しい光とともになにか不気味な声を聴いたという人が殺到する。
しかし、それは一部の人にのみ起こっており、これを主張する人々が真実を言っているかは定かではない。
だましことば @sotome8755
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