6畳の外 輝く世界

ちょき 和

第1話

昔から人の気持ちが分からなかった。好き勝手に喋ったら相手を怒らせてしまう。なんでも言い合える仲なんてどうやればできるのか分からなかった。僕は誰かとそういう関係を築きたいと憧れていた。でも僕はできなかった。怒らせてしまうのが怖くて心の中で思ったことを押し殺し、当たり障りのないことを口にした。話は盛り上がらない。変な空気が流れることが少なくなかった。そのまま沈黙が続くと相手はイライラし始める。いつからか人の話を聞くのに苦手意識がついた。

 自分の話をするのは楽でいい。誰かの地雷をふむことなく、ある程度好き勝手喋っても許されるのだから。相手をイラつかせることも少ない。自由に喋れて、憧れていたなんでも言い合える仲、友達をつくれたとすら思えていた。でも話しているとネタがなくなってくる。自分をもっと話せるようになる話題が欲しかった。テストや体育の記録は数字を言うだけなのにある程度盛り上がる、数字が高ければ高いほどいい。優等生になれば人気者になれて、友達を作れる。単純な思想に陥ってひたすら成果を上げることばかり考えるようになった。

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