I AM A GOD 2ー我是上帝,ヤマト王権と大陸を巡る壮大歴史スペクタクル。
山谷灘尾
第1話 受験直前のアクシデント
名門、
「鉛筆はHBが5本もあればいいわね」
「うん」
「スマホは上着の内ポケットに入れておきましょうね。入試が始まる前に必ず出して切らなければダメよ。そしてそのトートバックの中に入れておくのよ」
「ママ、私、それぐらいわかってるわ」
「ユリナちゃん、うっかりが通じない世界なのよ」
「わかってるってば」
なんて神経質なんだろう、とユリナは思っていた。
「ママ、私、落ち着きたいの。ちょっと黙っててくれる?」
「ママ心配だから、こうやって何度も確認しているんじゃない」
「そのくらいわかってるわよ」
ユリナの声が甲高く部屋中に響き渡った。
ユカは少し反省した。落ちつくために深呼吸すると、娘から離れ、窓際のソファーに腰掛けた。
ユリナは塾で使っている日本史のテキストを開けると興味のある古代史についてのページを見始めた。
そこには日本の古墳時代、高句麗で作られた好太王碑のモノクロ写真が大きく写っていた。
好太王碑、それは高句麗が朝鮮半島での覇権を狙うために百済に侵攻する口実を記したものだ。百済や新羅は当時倭国と強い結びつきがあり、それを高句麗がよく思っていなかっためである。
その後、朝鮮半島の覇権を握りつつあった高句麗の
一方、倭国はヤマト王権が東北や南九州を除いた全国をほぼ統一しつつあった。ワカタケルノミコトー雄略天皇ーが鉄剣を武器に防衛力と生産力を向上しつつあった。各地に作られる大規模な前方後円墳は統一王朝の勢力伸長を如実に示していた。
ユリナは目を閉じて、巨大な前方後円墳を夢想していた。古墳の周りに巡らされた堀に揺蕩う深緑色の水、その上を飛び交う水鳥たち、周辺の木々のせせらぎ。ユリナは歴史や社会科科目が好きだった。アジアが特に好きで、外国語を複数覚えて将来は外交官か商社マンになりたいと夢みていた。
出発するには、もう小1時間ほどあった。
「ママちょっと下のコンビニへ行って、ミネラルウォーター買ってくるわ。休み時間に飲むのよ。水分補給は大事だからね」
「うん」
「部屋から出ちゃだめよ」
「うん、わかった」
ユカは部屋のキーカードを持つと足ばやに出て行った。ユリナはもう一度目を閉じて、さっき夢想していた前方後円墳を空想の中でもっと詳しくビジュアル化しようとしていた。しかし、眼前に出てきたのは何故か荒涼とした大地と猛烈な砂嵐の風景だった。そしてその視界は飲み込むようにユリナの全身を包んだ。何故か強風すらもユリナは両頬に感じた。
「どうして?」
次の瞬間だった。渦のようなものに飲み込まれて、ユリナはまるで谷底へ落ちていくように暗闇に引き込まれていった。全身が硬直し、恐怖で声も出なかった。次の瞬間、目を開けたとき、ユリナはさっき見ていた荒涼とした大地の上にうつぶせになっていた。
つづく
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