仕事終わりに犬系彼女の家に行ったら、お世話されると思いきやお世話してる気がする

穂村大樹(ほむら だいじゅ)

第1話 黒焦げ手料理

※「」……彼女

※『』……ポメラニアン(プチ)



//SE 夕暮れにカラスが鳴く声


//SE 鍵を開錠し玄関の扉を開く音

//SE 彼女と犬(ポメラニアンのプチ)が玄関に走ってくる音

「おかえりなさい!」

『ワン!』

//SE 彼女が主人公に勢いよく抱き付く音


「今日もお疲れ様だったね」


「今日は嫌なこと無かった? 大丈夫だった?」


「そっか。最近LINEでもたくさん愚痴こぼしてるから心配だったけど、何も無いなら安心だ」


「今日はわざわざ仕事終わりに私の家まで来てもらったんだし、君の疲れが癒えるよう精一杯頑張るね!」


//SE 彼女が主人公に頬擦りしながら

「いつも本当にお疲れ様」


「ヒゲなんて気にならないもん。むしろこのチクチクがクセになっちゃってるもん」


//SE プチが主人公の足にスリスリする音

『ワフワフゥ……』

「ほら、プチもスリスリしたいんだってさ。私もプチも仕事でお疲れの君に癒されてほしいんだよ」


「まあプチに関しては君を癒してあげようとしてるわけじゃなくて、ただ君のことが好きだからスリ寄ってきてるだけだと思うけどね」


「たっ、確かに体を寄せてスリスリするのは犬の特権だけど、人間だってスリスリしたい時もあるの」


//焦って主人公から離れる

「ちっ、違う、別に私が癒されたかったわけじゃないもん!」


「仕事で疲れて帰ってきた君を癒してあげようと思ったからこうして玄関までお出迎えに来たんだもん!」


「君を癒そうとするフリをして自分が癒されにきたわけしゃないよ⁉︎」


「……」


「……ふふ。バレてしまったらしょうがないね」


「君の言う通り、君を癒そうとしているかのように見せかけて実は! 私の方が癒されていたのだよ!」

『ワンッ!』


「仕事でお疲れだろうからさ、早くご飯を食べてお風呂に入って寝たいっていうのはわかってるんだけど、どうしても我慢できなくって……」

『ワフゥ……』


「私のわがままでぎゅーすると君に迷惑がかかるけど、君を癒すっていう大義名分があれば迷惑だと思われないかと思って」


「ってことでもう一回ぎゅーね!」

『ワンッ!』

//SE 彼女が主人公に抱きつく音

//SE プチが主人公の足にスリスリする音


「あぁ……。この考えられないくらい分厚い胸板がたまらないんだよね……」


//胸板をトントン叩きながら

「私昔水泳部だったけど、水泳部にもこんなに胸板分厚い人いなかったよ」


「水泳選手だってみんながみんなムキムキのバキバキってわけじゃないよ?」


「本気で水泳やってる人なら君より胸板が分厚い人ばっかりかもしれないけど、学生で、増してやお遊び程度でやってた部活だったからね」


//主人公の胸板に頬擦りしながら

「だから君のこの胸板の厚さはもうたまらないんだよね……」


//自分の胸を触りながら

「まあおっぱいが大きくて君の胸板より胸が分厚い女の子はいたかもしれないけど」


「はぁーっ。このままずっと離れたくない……」


「ってそういうわけには行かないってのは流石の私もわかってるから、あと十秒だけぎゅーってさせて」



//十秒間、匂いを嗅ぐ音

「スゥ……ハァ……スゥ……ハァ……」



//主人公から離れる

「ぷはぁ! 枯渇してた君成分、接種完了♪」


「え? そりゃ抱きついたら匂い嗅ぐでしょ」


「だって君、いい匂いするんだもん」


「うーんとね、なんて言ったらいいのかな」


「簡単に言うと……男臭って感じかな?」


「臭くない臭くない! 勘違いするような言い方しちゃったけど、一吸いするだけで安心して自律神経が整う最高の匂いだよ」


「え、危ない薬みたい?」


「いや、ある意味では危ない薬よりも危ない代物かもね」


//落ち込む主人公を見て抱きつく

「ちょっ、落ち込まないでね⁉︎  本当に臭くないんだからね⁉︎」


「匂い気にして体臭ケアするとか絶対ダメだから! せっかくの良い匂いが台無しになっちゃうから!」


「す、吸い取ってないから! 確かに君の匂いが嗅ぎたくてスンスンしてたけど、君の元気までは吸い取ってないから!」


//彼氏から離れる

「そっ、それじゃあ匂いの話はもう忘れて、疲れた君のために作ったご飯を食べてもらおう!」


「って言いたいところだったんだけど……」


「君のためにね? 本当に頑張ったんだよ?」


「いつも君にばっかりご飯作らせちゃって申し訳ないし……」


「でもこんなに料理が難しいと思ってなくて……」


//SE リビングの扉を開く音

「真っ黒になっちゃった……」

『クゥ……』


「ごめぇんね」


「にんじんもジャガイモも玉ねぎも真っ黒にしちゃった……」


「ごめぇんね」


//主人公がヒロインの頭を撫でる

「ちょっ、私犬じゃないんだからそんなにわしゃんしゃ撫でないでよ!」

//彼女が主人公を突き放す


「っていうかありがとなってお礼言われても困るんだけど!」


「むしろ何やってんだって怒る場面だよね⁉︎」


//主人公がプチを撫でる

//彼女が主人公に身を寄せる

「あっ、撫でないでって言ったけどプチのこと撫でるくらいなら私のこと撫でて」


「だ、だって君がプチ撫でてると嫉妬しちゃうから……」


「え、一緒に作ってくれるの?」


「でもお仕事で疲れてるのに今からご飯作らせるのは申し訳無いし……」


「出前でも取ろ? 私奢るから」


//主人公がエプロンを付ける

「ちょっ、本当に大丈夫だから! 仕事で疲れてる君をこれ以上疲れさせるわけにはいかないから!」


「え、出前よりも私と一緒に作ったご飯を食べた方が元気出る……?」


「そ、それなら仕方ない……のかな?」


「……よしっ! じゃあ一緒に作ろうっ‼︎」

『ワッフゥ!』

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