私たち新聞部!
ここは埼玉県にある神崎徳栄高校。神崎駅から歩いて10分ほどに位置する学校は文武両道を目標に掲げ、計44つもの部活が盛んに活動を行っている。
部活が多いこの学校では新聞部だけでも5種類あり、久住ショウジは少女の情報を集めるため、人気はほとんどなく趣味全開のオカルト新聞ばかりを出してる『シモフレ新聞部』に入ることを決めた。
それから、慣れない授業の忙しさなどで1年と2か月が経過してしまっていた。
夢はだんだん薄れていくものでこのころにはショウジの記憶からは女の記憶なんてなくなっていたのだった。
「お疲れ様です。ヤモリ部長。原稿かけたので持ってきましたよー。」
「ああ、ショウジ君。いい所に来たね。見ておくれよ。『月間シモフレ』の7月号が出たんだ。今月号はなんと、付録にアイマスクが付いてくるんだ。」
部室に入るとたくさんのダンボールと部長の森谷シュウゾウ、通称ヤモリ部長が出迎えた。ダンボールは趣味のオカルト道具をネットで買っているが、1年前に見たものもあるので開ける気はなさそうだ。
ヤモリ部長は嬉しそうに付録のアイマスクを見せてくる。モサモサの天然パーマで埋もれているが、アーモンド型の目とまつ毛が3本生えているムカつく絵が刺繍してあるのが見える。目玉のところには左側にシモ、右側にフレと書かれていた。
私は興奮している部長を押しのけて、定規やカッターなどの道具が乱雑している作業机へと原稿を置く。
「あー。すごいっすね。」
「反応薄くないかい。もしかして知らないの?」
ええ。まあ。と短く返事をする。部室前にある感想箱の中身をチェックしていく。読者は少ないが、コアなファンがいるため10枚以上もの手紙が入っていた。これは嬉しい。
「この新聞部にいながら『月間シモフレ』を見ていないなんて。我が部の創始者そして絶世の美女、霜触ツウカのオカルト記事が認められ、今年の1月から連載を始めたのだぞ。もっと興味を持つべきだ。」
「OGでも会ったことないので知らない人ですよ。」
手紙から「面白くない。」や「これ誰が読むん?」といったアンチ要素が含まれているものを処分しそれ以外を作業机に置いた。ヤモリ部長は心が弱いのだ。後ろ向きなコメントを見たら泡を吹いて倒れるだろう。
「よし、それより部屋、片づけましょ。汚ったないです。ダンボールだらけじゃないですか。」
パンッと手を叩き笑顔を向ける。ヤモリ部長は顔を引き攣らせ後ろに下がった。
「次号の新聞を制作が……。それにボクは『月間シモフレ』を読まなくては行けないのだよ。」
そう言って逃げようとする彼の首根っこを掴む。
「制作も何もコラムしか書いてないでしょう。400字程度なら1時間でおわります。それに今は、『月間シモフレ』より掃除が優先です。」
ヤモリ部長は雑誌を読めない悔しさからか、目から血流を流している。そして、とぼとぼとダンボールが乱雑している床に腰を落とした。
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