第24話 200年経っても、鉄筋とセメントの家は残っていました
私はメイドを二人、UNNAの家用に雇いました。
以前の生活を思い出した以上、UNNAでの普通の暮らしなんて耐えきれません。
茶髪セミロングのベスと茶髪ショートカットのシアンです。
当然、二人とも魔法が使えます。
家に魔道照明を完備させて、魔道コンロと冷温庫を設置。
買い出しはゲートを使ってDIとDCに行ってもらいます。
「リーズ様、飛行魔法ですぐにバランスを崩しちゃうんですけど、どうしたらいいですか?」
「浮くのは重力魔法を使うんだけど、両手両足から出す風魔法のコントロールが重要よ。」
風魔法のコントロールに関する訓練を教えてあげます。
「これがうまく出来るようになれば、飛行艇を操って人を乗せて飛ぶこともできるわ。頑張ってね。」
「「はい!」」
各町の繁華街に家を買って商店に改造します。
そこにもゲートを作ってから人を雇い、タマゴと砂糖、それにパンとスイーツの販売を開始します。
タマゴとスイーツの価格は、これまでと比べ物にならないので、爆発的な人気店となりました。
これまでタマゴなどを扱っていた商店から人を雇い入れたので、それほど問題にはならないと思います。
人気が出た時点で、両隣の敷地を買取り、店を広げてフルーツや海産物などの商品を増やしていきます。
商店には魔道照明や冷温庫を導入してあるので、夜まで客足が途絶えません。
そして、私の元に、ジャルディア王国内務局課長のトーマスという中年のおじ様がやってきました。
「突然の訪問をお許しいただきたい。」
「本当ですよ。このまま追い返したいくらいです。」
「いや、申し訳ない。実は王国の商人から、タマゴや砂糖の取引に応じてもらえないと泣きつかれましてね、それで内務局で対応させていただく事になりました。」
「また内務局の課長さんですか……。」
「えっ、以前にも内務局で接触させていただいた事があるんですか?」
「ええ、以前ジャルディアに住んで、商売をしておりましたから。」
「それは存じませんで、失礼いたしました。」
「なあ、昔のことですからいいですけど。」
そう、200年前の事なのです。
「各町のD商会は、全てリズ様が所有されていて、ジャルディアとの取引禁止を厳命されていると聞きました。」
「そうですわね。」
「なぜ、ジャルディアとの取引に応じていただけないのでしょうか?」
「それは、昔、内務局から理不尽な追徴課税を求められ、軍部からも脅迫を受けたからですわ。」
「お言葉ですが、私が内務局に勤務して20年以上になりますが、そのような事は起きていません。」
「もっと前の事ですわ。」
「それは、お父上の時代ということですか?」
「いえ、父は商人ではなく、政治家でしたから無関係です。」
「失礼ですが、お見受けしたところ、20才程に見えますが……。」
「信じられないかも知れませんが、私の父はオスカー・ジャルディ。ジャルディアの初代議長です。」
「えっ?議長……?」
「私はその娘、シャルロット・ジャルディですわ。」
「えっ?……えっ?」
「確かに、220年ほど前に、オスカー・ジャルディ氏が港町ドットをタギリア王国から独立させてジャルディアを建国したと学んでおり、その後13年ほどの間に信じられないほどの発展を遂げたと教えられました。」
「よかった、そこは歪曲されていないのですね。」
「その後のジャルディア王国への移行については、不明確な記録しかなく多くの研究者を悩ませてきました。」
「不明確も何も、現王族は私の親族ではありません。元はイバノールという一族で、それを副議長のドドンパがでっち上げただけじゃないですか。」
「そういう見解もあるのですが、現国王を否定するというのは反逆罪とみなされますのでなかなか声をあげるのは難しいのです。」
「まあ、タギリアでもクーデターで政権がひっくり返りましたし、父が政治から離れたあとの事ですから、明確な否定はしませんでしたけど、200年もこんな王権政治に反発しない国民には何の期待もしていませんわ。」
「いや、オスカー氏や親族の方が否定していれば、こんな事にはなっていないですよ。」
「あら、そうかしら……。」
「我々に国王を否定する材料はないんですから、当時の副議長に肯定されてしまったら国民はどうする事もできないじゃないですか!」
「父は最初から王権など望んでいなかった訳ですし、あの時やってきたスガレとかいう内務局の課長さんに伝えましたわ。」
「ちょ、ちょっと待ってください。あなたは本当にオスカー氏の娘だというのですか?」
「なぜ、嘘をつく必要があるんですか?」
「いや、しかし、……どう見ても……。」
「ドラゴンの庇護をうけて不死になっていますが、私はシャルD商会長としてジャルディアに貢献し、裏切られた本人ですよ。」
「も、申し訳ございません。頭が混乱してまいりました。一旦引き上げて出直してまいります。」
「出直すって、馬車でしょ。王都まで帰ったら2か月かかるじゃないのよ。」
「ですが、200年前のことをきちんと調べないと交渉になりませんから。」
「はあ、仕方ないわね。元あった屋敷の座標は分かっているからゲートは開けるわね。私もジャルディアの王都がどうなっているか興味あるから、連れて行ってあげるわ。」
ここまで来た馬車は帰してもらい、課長さんと補佐の娘さんを連れてゲートをくぐるよう促します。
「な、なんですかコレ!」
「二つの空間をつなげる魔法よ。」
「そんなの、聞いたことありませんよ。」
「落ち着けスーザン。確かに200年前の記録で、王都の外側にあった商会の敷地と山間部にある拠点を行き来していたという証言があった……。」
「龍族の開発した魔法ですから、普通の人間には作れませんけどね。」
「この虹色の渦の向こうが、ジャルディアの王都だというんですか?」
「そうよ。200年前の家の壁に作ったゲートだけど、さすがに壁は残っていないでしょうね。さあ、行きましょ。」
鉄筋とセメントの壁は残っていました。
屋敷自体も、多くの壁が残っていました。
さすがに敷地は雑草に覆われ、何本もの大木がそびえています。
「ここが屋敷跡であれが、城壁?」
「そうですよ。ジャルディア王都の城壁。」
「いや、200年前の建物が、これだけ残っているとは……。この埋め込まれた鉄の棒が崩壊を防いでいるのか……。」
「この壁だって、石じゃなさそうなのに、何でこんなに硬いんですか?」
「火山灰と石灰と砂利を練ると、これだけ頑丈に固まるのよ。これも、龍族の知識ですわ。」
「石を切り出して作った城は、建築に30年。絶えず5000人の労働者が働いていたそうだが……。」
「この屋敷は2日で作りましたし、作業したのは3人だけでしたね。」
「なぜ3人でこれだけのものが……。」
「身体能力を強化する魔法がありますからね。これくらいは簡単ですよ。さあ、町に行きましょう。」
4人乗りの飛空艇を出して街はずれまで飛びます。
「話しには聞いていましたけど。本当に飛ぶんですね。」
「魔法で飛ばせているだけですよ。」
「私だって魔法は使えますけど、こんな魔法は考えたこともありません。」
「あら、まだ処女なんですね。」
「えっ……。」
補佐のスーザンさんは顔を真っ赤にしています。
「あら、魔法士養成所で教えられたでしょ。無暗に性交渉をしないようにって。」
「そ、そうですけど。」
「性交渉が直接の原因ではないので、幼いうちから十分な魔力操作を行うように指示して退職したんですけどね。」
「えっ、魔法士養成所におられたんですか?」
「私が提案して作った施設ですからね。」
「えっ?えっ?それって……。」
【あとがき】
さあ、200年前の陰謀に向かい合います。
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