第21話 盗人は貼り付けの刑と決まっています
「お嬢様、門番より連絡があり、国の役人が代表者と離したいと言っておりますが、応接で対応されますか?。」
「役人が?何の用かしら。まあいいわ、応接で対応します。」
来訪者はスガレと名乗り、内務局の課長だと名乗った。
神経質そうなメガネ君が同行している。
「シャルロットさんは魔法士養成所の副所長として働いてこられたお方だ。その頃の研究を元に、大人になっても魔力を失わない方法を開発されたと聞きましたが、本当ですか?」
「さあ、どうなんでしょう。タマタマかもしれませんし、確定した訳ではございませんわ。」
「ですが、こちらで訓練中の魔法士は、これまでにないほどの強力な魔法を使っていると聞き及んでいますが、如何ですか?」
「養成所の頃と違う事はしていませんし、その情報はどこから得られたものでしょうか?」
「風の噂ですよ。」
「魔法なんて個人差が大きいですから、その情報源の方がタマタマ強力な魔法を見ただけではありませんか?」
「そうかも、しれませんね。その優秀な魔法士には、是非軍の魔法兵になっていただけないかとお誘いにあがったのですが、面会させてはもらえませんか?」
「本人たちの意向で、ここから出ていきたいものは引き留めていませんから、お探しになったら如何ですか?」
「こちらでも探してみたんですが、こちらで働いていたという者はおりますが、魔法士の方は見つからないんですよね。」
「うちで教育した子供たちは、みな孤児ですからね。帰る家もないし、すぐに職に就いていると思いますよ。みな、優秀な子供たちですからね。」
「それで、直接勧誘させてはいただけませんか?」
「お断りいたします。国からの保護を受けられなかった子供たちですからね。私の方で、十分な教育を施したうえで卒業させますから、その時に兵士になりたいという希望があればお声がけしますわ。」
「そうですか。それでは、お願いします。」
まずは様子見といったところでしょうか。
子供たちは全員DCに移して、ここは大人だけにしておく事にしましょう。
その一か月後、今度は国防軍支援部隊の副隊長という男がやってきた。
短髪マッチョで、横柄な態度でメジと名乗った。
「こちらで、身体を守る魔道具を使っていると聞いたが本当か?」
「それは機密事項なのでお答えできません。」
「国の利益のためだ、答えろ。」
「お断りいたします。国であっても、個人の秘匿する知識と技術は尊重される。これは憲法14条で保証されておりますわ。」
「くっ、では、その技術を軍で買い取ろう。いくら出せばいい。」
「もし、そのような魔道具が存在したとして、副隊長レベルが交渉できると思っているんですか?」
「なにぃ!」
「そのような魔道具が実在したとすると、軍にどれくらいの経済効果を生みだすとお考えですか?」
「そ、それは……。」
「兵士が仮に1万人いるとします。年の手当が平均で金貨3枚くらいですかね。」
「……。」
「兵士のレベルが50%引き上げられて、損耗率も減少して、防具もより動きやすいものが望まれるのでそこでもコストダウンが図れます。」
「だ、だから軍に……。」
「まあ、単純に考えて、年間の経済効果は金貨5万枚といったところですかね。」
「ご、ごまん……。」
「当然、複数年にわたって効果が期待できますから、まあ最低金貨10万枚からの価格交渉となるでしょうね。」
「うっ……。」
「国家予算で考えるレベルの話ですけど、副隊長さんにそれだけの権限が与えられているのでしょうか?」
メジ副隊長は無言で帰っていった。
少し、セキュリティーを強化する必要がありそうです。
シールドの魔道具は、スイッチだけ出して壁に埋め込むように改修し、アルミ合金で覆います。
塀も5mまで積み重ねて侵入者に備えておきます。
3日後の夜、私はグリーンドラゴンのノーラに起こされます。
「西の壁を超えた侵入者が3人。」
「ついに来たのね。」
他のメンバーは起こさずに二人で外に出ます。
「こっち」とノーラに案内されていくと、兵隊らしい屈強な男が3人立っています。
「あらあら、隠れないんですか。」
「……女二人でどうしようってんだ。」
「ノーラ、拘束できる?」
「問題ない。」
男3人の足元の土が盛り上がって足を固定します。
「な、なんだこれは!」
「う、動けねえ……。」
「軍の兵士かしら?」
「……。」
「無言は肯定って言葉は知ってます?」
「……。」
「目的は何ですか?」
「……。」
「目的は魔道具の盗み出し。」
「な、何の事だ!」
「はいはい。リーダーはノーマン、メンバーはサトにアナン。」
「な、何故……。」
「意識を読み取るなんて簡単なんですよね。」
「くっ、魔法か。」
「まあ、そんなとこですけどね。」
キエーッとかいう声と共にナイフが飛んできて、シールドに弾かれる。
「不法侵入に窃盗未遂、殺人未遂も加わったんですけど、治安所も軍の一部よね。」
「殺す?侵入したって証拠もないし。」
「ば、馬鹿な。そんな事をしたら……。」
「どうなるのかしら?」
「ぐっ、軍の仲間が報復に……。」
「大っぴらにできるわけないでしょ。盗人行為を認めるようなものだもの。」
「どうする?」
「うーん、……治安所の前に貼り付けにして放置がいいかな。名前と罪状を描いて張っておけば、下手なことはできないだろうし。」
三人を眠らせ、夜のうちに治安所の前に貼り付けにした。
さあ、軍はどう出てくるかな。
この出来事は、龍族のメンバーには念話で知らせておきました。
様子見を頼んだ龍族のメンバーから受けた報告では、早朝から人だかりが出来て騒ぎになり、気が付いた治安所により回収されていったそうです。
その後、我が家へ問い合わせがないという事は、内内で処理されたと見るべきでしょう。
「ねえリーズ、武器を作ってみたんだけどどうかな?」
「魔石が組み込まれているという事は、魔道具なのね。」
「そうよ。このレバーの切り替えで、ファイヤーボール、アイスニードル、アイスアロー、ウィンドカッターに切り替えられるの。」
「へえ、魔石2個が直列に組み込まれているって事は、威力が期待できるってことね。まったく、魔道具開発はアキの趣味になっているわね。」
「だって、これだけいろんな素材があるのよ。このアルミ合金なんて軽くて丈夫なんだから、火や風や氷を打ち出すしかないでしょ。」
「いやいや、これは水を通すためのパイプだって。」
「右手でグリップを握って、このトリガーで発射よ。左手はここに添えて狙いを安定させるといいわ。」
「はいはい。じゃあ200丁ばかりお願い。」
「うん。300丁頼んであるわ。」
「300丁?」
「こことDCに100丁づつと、龍族のスタッフ用ね。」
「了解よ。それが終わったら、もう少し太いパイプで、高火力のものも作ってね。」
「ああ、それならあるわよ。最初に作ったんだけど、威力が強すぎて山が半分吹き飛んじゃったのよ。これ。」
「……魔石10個の直列じゃそうなるでしょうよ……。」
「魔石半分にしたのがこれよ。」
「最初からこっちを出せばいいのに、何で威力の高いほうから出したの?」
「だって、先にこっちを出したら、これでOKになっちゃって、最強バージョンを出せないじゃないの。」
「分かったわよ。両方もらっておくから。」
とりあえず武器の目途はたちました。
まあ、武器がなくても軍隊に負ける気はしないんですけどね。
【あとがき】
魔道小銃ですね。大砲も確保です。
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