第17話 服を脱いで、そこで横になりなさい 私の命令に二人の少女は従います

『ねえシャル、この一か月の間に何があったの?』

『そんな冒険者みてえな恰好してるし、帰ったらオヤジさん泣いちまうぞ。』

『そうね。正直言って世界がまったく変わっちゃった感じかな。』

『それで、目的だった魔法に関する調査はどうなったんだ?』

『竜人は魔法に関係していなかった。人間に魔力を与えたのも、竜人に魔力を与えたのも龍種だって判明しましたよ。』

『それで?』

『魔力を与えられた人間がこの大陸にいたから、まだ他の大陸に広まっていない事も分かったし、成長に伴って魔力を失うのは魔力を鍛えていなかったから。』

『鍛えるって、どういう事だ?』

『理屈は分かったんですけど、どうするかは決めていないんです。人間にとって魔法は必要不可欠という訳でもないし、正しく使えるか分からないですからね。』

『確かに、俺たちは魔法なしで生きているもんな。』


 岩場に出てもワイバーンは現れません。

 この辺りにいた野良のワイバーンは追い払ってあるからです。


 こうして王都に帰った私は、調査項目をまとめて報告書を作成し議会に提出。そして魔法士養成所を辞めました。

 私は家から出て独立し、一人暮らしを始めます。


 換金した金貨を使って王都の郊外にあった土地と家を買って生活を始めます。


『さてと、まずは土地を硬化して基礎づくりね。』

『そんなの広域魔法で一発じゃない。はやくお菓子の工房を立ち上げましょう。』

『リーズは急ぎすぎよ。まずは地下室を作ってアキさんとのゲートを繋げないといけないでしょ。』

『それこそ、里の洞窟にあったゲートを書き換えるだけだから簡単じゃない。』

『えっ?リーズもあのゲートを加工できるの?』

『あの程度の魔法式なら、一度見れば理解できるわ。』


 こうして広い地下室を作ってゲートを開きました。

 ゲートを作ったおかげで、アキさんとの念話も通じるようになっています。


 次に、魔石を確保するために冒険者ギルドに登録して活動を開始します。

 Fランク冒険者としてスタートした私は、薬草の採取依頼10回分を半日で終わらせ、1日でゴブリンを50匹討伐してDランクまで昇級しました。


「あの、シャルさん少しよろしいですか。」


 声をかけてきたのは、冒険者ギルドで受付してくれるお姉さんです。

 年齢は30才くらいでしょう。

 白いブラウスに黒髪のショートカット。

 美人とは言えませんが、黒淵のメガネが誠実さを物語っています。


「何でしょう?」

「ギルドマスターがお話を覗いたいと言っているのですが、お時間ありますか?」

「……いいですけど、もしかして不正とか疑われています?」

「はい。いくらなんでも、19才の女性が、ソロでゴブリン50匹というのは前例がありませんので。」

「やっぱり……。いいですよ、やましいことはありませんから。」


 それから私は応接室に案内されてギルドマスターと対面しました。

 40代と思われるギルドマスターは、銀色の短髪でそれほど体格が良いわけでもない。

 剣士というよりも、狩人タイプに見える。


「悪いね。ここを任されているグリス・ローゼンだ。」

「えっと、本名が必要ですか?」

「その方が話が早いと思うよ。」

「えっと、シャルロット・ジャルディと申します。」

「ジャルディって、まさか議長の血縁なのか。」

「はい。オスカー・ジャルディは父です。」

「お待ちください。シャルトットさんといえば、魔法士養成所の副所長さんで、竜人の里調査依頼をいただいて、先日戻られたばかりの……。」

「そうか!ゴーリなんかが対応したあの仕事の依頼主かよ。」

「ええ、ゴーリさんやセインさんに助けていただきました。」

「……そんなお嬢さんが、何で冒険者に?」

「目的は魔石を採取するためですわ。」

「いや、魔石なんか自分で取りにいかなくても買えばいいだろう。」

「えっ?魔石って買えるんですか!お店で見たことないですけど。」

「あんなもん、質の悪い宝石扱いだから、うちで買い取っても二束三文で宝石商に卸しているくらいだからな。」

「全部買い取ります!」

「まあ、値が付くと分かれば、冒険者も本気で採取してくると思うが、あんなもん何に使うんだ?」

「何に使えるか、これから研究するんですよ。面白そうでしょ。」


 こうした経緯があって、魔石買取の契約をギルドと締結しました。

 この時点での買取価格は、平均レベルで銀貨1枚。

 質の良いもので、銀貨3枚という格安のものでした。


 銀貨10枚が金貨1枚に相当するのですが、金貨1枚あれば、質素に暮らせば1年生きていけるというもので、荷物にならない事から冒険者の間でも評判になっていきました。

 私もすぐにCランク冒険者に昇級し、ダンジョンに潜っているのですが、私の場合は凍結庫があるので、オークやオックス系シープ系などの食用モンスターも狩っています。


 シープ系は少し臭みがありますが、オークやオックスの肉は癖がなく、シルバードラゴンのアキさんにも好評です。


 アキさんはうちの地下室に籠って、魔石から魔力を取り出して魔法を活動できないか研究してもらっています。

 そのため、頻繁に美味しい食事をとる必要に迫られ、我が家には、料理上手なメイドさんとお菓子作りの得意なメイドさんを住み込みで雇うようになりました。


 赤毛のアリーは料理が得意な15才で、金髪のサリーは菓子作りの得意な13才。

 二人とも処女で魔法を使えます。


『ねえリーズ、二人には魔力の訓練もさせて、魔法を失わないように指導してあげたいんだけどどうかな?』

『いいんじゃない。二人とも素直ないい子だし、私も賛成よ。』


 実は、二人ともソラリスの孤児院の子で、パン屋のご夫婦に鍛えられた二人なんです。

 それから、男の子も二人孤児院から来てもらい、今は御者見習いとして勉強してもらっています。


「アリー、悪いんだけど裸になってこの長椅子で横になってくれるかしら。」

「は、はい……。」

「変なことはしないから大丈夫よ。ちょっとね、魔力を強化させてもらうわ。」

「魔力の強化ですか?」

「うん。大人になると魔法が使えなくなるって聞いたことない?」

「あっ、サーシャさんに聞きました。」

「私は院長先生に。」

「それはね、魔力を流す管が十分に開発されていなくて、詰まって切れちゃう事が原因なのよ。」

「管が……」 「切れちゃう……」

「そう。だから、今のうちに訓練して、大人になっても管が切れないようにすればいいのよ。」

「そんな事ができるんですか!」

「私に任せてちょうだい。」


 裸で寝たアリーの下腹部に手をあてて魔力を流し込みながら循環させます。


「今、魔力を流し込んで身体の中を循環させているんだけど、分かるかな?」

「はい。お腹が熱いです。」

「魔力が身体の中を回っているのは分かる?」

「はい。体中が熱くなってきています。」

「これを毎日2時間、自分でやるのよ。」

「自分で……。」

「管が太くなれば、それだけ使える魔力の量が増えるから、魔法も強力になっていくわ。」

「どう変わるんですか。」

「アリーが使うのは氷の魔法だったよね。」

「はい。」

「だったら、氷を作るだけじゃなく、氷の矢を飛ばしたり、氷の壁を作って身を守る事もできるわよ。」

「氷の矢……。」

「氷系以外の魔法も教えてあげるわ。」


 同じようにサリーにも魔力を注いで魔力回路を強化していきます。

 魔力の循環を一か月続けただけで、二人の魔力量は倍に増えていました。


 そんな中で、アキさんの取り組んでいた、魔石からの魔法発動に成功します。



【あとがき】

 ついに魔道具の開発に。

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