Day23 ストロー

 私にとって、マイストローは必需品である。

 まあ忘れてしまったときでも、比較的入手しやすいアイテムではあるけれど、とにかく私はストローが手放せないのである。


 べつにお上品ぶっているわけでも、環境に対する意識が高いわけでもない。私の耳がぽんこつなだけである。頭を上に向けると目がまわる。クラっとか、フラッとか、そんなかわいいものじゃない。ジェットコースターレベルの回転がくるのである。


 毎回くるわけではないけれど、きてからでは遅いのだ。

 数分から、場合によっては数十分動けなくなる。それがストローひとつで防げるのであればつかわない理由はない。


 事情を知らない人間のなかには『なあに? 意識高い系?』とか小馬鹿にしてくるのもいる。

 そういう人はたいがい、事情を説明しても今度は『なあに? 私かわいそうアピール?』とかいってくるので、適当に受け流すのが吉なのだけど。


 こっちだってこの夏のくそ暑いさかりにストローでちまちま飲むより、ごくごく一気飲みしたいわクソッタレ! と、こころでひそかに悪態をつくくらいは許してほしい。


 見た目ではわからない『不自由』を抱えている人間は、たぶん私が思っているよりたくさんいる。

 ペットボトルにストローをさすたびに、そんなことを考えるようになった。

 めまいとのつきあいがはじまって、はじめての夏。

 暑い。がぶ飲みしたい。と思いながら、ちゅーちゅーとストローを吸っている。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る