お似合いだね

一途彩士

九度目の再会

「久しぶりだね」

 男は昔とかわらない、不気味な笑顔を見せた。それを無視して二つ席を空けてカウンターに腰掛ける。

 馴染みのマスターは私と男を交互に見て、「知り合い?」と首をかしげた。

「まあね」

 そう会話している間にも男は私のすぐ隣に座り直した。

「元気だった?」

「今この瞬間までは」

「それは大変だ、家まで送るよ」

「マスター、酒。安いやつで」

「悪酔いするから飲まないんじゃなかった?」

「こいつにぶっかけるのよ」

「ええっ?!どうしたの、そんなこというタイプだった?」

 マスターが私の荒れっぷりに目を白黒させている間にも、男は楽しそうに笑っている。それに気付いてしまって、腹の虫はとうとう収まる気がしなくなってきた。マスターは男に気を使ってか、小声で私に尋ねる。

「なんでまた酒かけるなんて…」

「こいつ、何べん殺しても戻ってくんの。もういい加減うざい」

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