ショップ・イン・アンダーグラウンド
「いらっしゃい、よく来たね」
壁に様々な銃が飾られた隠れ家のような薄暗い店内。
部屋の奥にいたのは、椅子にもたれながらタバコを吹かした女性だった。
プレイヤーネームが表示されてないってことは、この女性が店主のNPCだろうか。
右目を完全に隠した金髪、切れ長な琥珀色の瞳、全身に纏うダウナーな雰囲気。
なんというか女性から好かれる女性って感じの容姿をしている。
少なくとも、悪印象は感じない。
……なんでこれでさっきのプレイヤーはブチ切れたんだ?
どうやら接客態度が酷いってわけではなさそうだ。
問題があるとすれば、原因は別のところにあるってことか。
「……ま、いいや。武器を見に来たんだ。一覧を見せてもらえるか?」
「いいよ。はい、どうぞ」
女性が答えると、目の前にウィンドウが出現する。
現れたウィンドウはカタログとなっていて、武器の大まかな情報が書かれていた。
————————————
・シェルブレイカー:6000ガル
・ダンシングハイブ:12000ガル
・鬼ヶ島:21500ガル
………………
…………
……
————————————
……えっと、高くね?
一番安いやつでも、有り金全部叩かねえと買えないんけど。
もしかしたら俺が相場を知らないだけで、これが正常価格なのかもしれんが……何にせよ、ぼったくり店の可能性は一気に高まったな。
となれば、それとなく探りを入れたいところだが……苦手なんだよなあ。
なので、
「なあ、ちょっと訊きたいことがあるんだけど」
「ん、なに?」
「さっき、ここを出てきたプレイヤー……じゃなくて傭兵が身包み剥がされてたんだけど、それって——アンタの仕業?」
馬鹿正直に訊ねる。
ソマガの経験上、下手に探ろうとするよりもズバッと訊いてみた方が上手くいくことが多かった。
あくまで俺の場合は、だけどな。
「うん、そうだよ。お金を払えないようだったから、代わりにちょっと
「自分の意志、ねえ」
その割には「二度と来るか!」みたいな捨て台詞吐いていた気がするが。
……ほぼ確でクロだよな、これ。
というか、NPCがプレイヤーから喝上げとかぼったくるとか、この街の治安どうなってんだよ。
うーむ、やっぱ入ったのは失敗だったか?
もう後の祭りだけど。
まあでも、こうなることを織り込み済みで店に入ったんだ。
もう少し店の中を見てから、一番安いシェルブレイカーを買って出るとするか。
ウィンドウは開いたまま、散弾銃が展示してあるコーナーの前まで移動する。
壁面に飾られた散弾銃はどれもが見事に手入れが行き届いていて、眺めているだけで少しだけ胸が高鳴る。
「よくよく見ると、めっちゃ精巧に作られてんな……!」
ネジ一本に至るまで緻密に再現されている。
工具さえあれば、普通に完全分解できるんじゃないか?
などと考えながら、一つ一つじっくりと観察していた時だ。
「——良かったら、試し撃ちしていく?」
背後から女店主に声をかけられる。
「あ、試し撃ちできんだ」
「うん。裏に射撃スペースがあるから、そこで好きなだけ撃って良いよ」
「……使用料とか取んないよな?」
「まさか。場所も銃もタダで貸してるよ」
蠱惑に微笑む女店主。
本当かどうか怪しいもんだが……毒を食らわば皿まで、か。
「じゃあ、ちょっとだけ」
そんなわけで店の奥の階段から地下に案内されると、簡易な作りではあったが射撃練習場が広がっていた。
階段を降りる途中で発砲音が聞こえてきたから何となく予想はついていたが、練習場の扉を開ければ、先客が人型の的に向かって試し撃ちしているようだった。
スナイパーライフル……しかも対物ライフルか。
ふっ、俺とは一番相性最悪な銃だな。
見る分には好きだが、自分では絶対に使いたくない武器種だ。
何せゼネとティアから思いっきりバカにされた記憶があるからな……!!
それはそうと……見たところ俺と同じ格好をしているってことは、あの少女プレイヤーも今日からこのゲームを始めた口か。
人のことは言えないが可哀想に。
初日からこんなぼったくり(?)店に入ってしまうなんて。
「銃は好きなのを使っていいから。終わったら扉だけ閉めてきてね」
そう言って、女店主は一階へと戻っていった。
「さて……じゃあ、何から試してみるか」
武器を借りるには、部屋の隅にある端末を操作すればいいらしい。
早速、端末を操作してみれば、カタログに載ってあったのと同じ一覧が表示されていた。
どれを使うか暫し悩んだ末、シェルブレイカーを試してみることにした。
他の銃も気になりはしたが、買うつもりがない銃を使っても仕方ないしな。
それからシェルブレイカーを装備したところで、ちょっとした事実に気づく。
「……あ、サブ武器側もレンタルできるじゃん」
サブ武器の枠にも同じくシェルブレイカーをセットした後、武器を呼び出せば、同じデザインのショットガンが両手それぞれに出現した。
「おお、二丁使いも試せるのは地味に嬉しいな」
場合によっては、大盾をショットガンに切り替えた方がいい場面もあるはず。
そうなった時の予行演習も兼ねて、存分に試し撃ちさせてもらうとしよう。
————————————
この店の商品は、相場と比べて倍近く高く値段設定されています。
主人公が懸念していた通りぼったくり店です。
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