第3話 君に幸あれ

 定時を過ぎ3時間、いよいよライのストレスが上限を突破した。充血した瞳で天を仰ぎ彼は言った。

「せんぱーい。幸せな瞬間ってどうやって作るんでしたっけ?」

「ライ帰ろう。な? 甘味でも買って帰るといい」

 ううう、と小さく唸り、力無く椅子に埋もれたまま動く様子はない。ここ数日忙殺されていたし、無理もなかった。

「ほら、立てるか?」

 椅子を揺らすが「いやー」と反論、今度は「チョコ食べるよな」と聞いて答えを待たず一口チョコを口に突っ込んでおいた。

「いいかライ。幸せは余裕がないと感じにくいシロモノだ。やることはわかるな?」

「はい、先輩の膝枕で就寝ですね」

「何故そうなる?」

 そして響く寝息の隣で、穏やかな明日を願った。



*****

毎月300字小説企画、第24回参加作品

お題「作る」

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