第13話 ニューデバイス2
今回思いついたのは今までに無いくらいに目立たない隠しカメラ。
もちろん、マイクとしての役割も果たすのは当然の事。
最近巷で多い隠しマイクやカメラの類は、眼鏡やボールペンなどに隠しカメラを仕込むもの。
でも、それらもこの世界では既に有名になりつつあり、周りから見ても見抜きやすいものとなってきている。もはや時代遅れなものだ。
___僕は常にオリジナルにこだわっている。
という事で、今回僕が作るのは女性用ピアスにカメラを装着するというもの。
両耳に作るのでどちらからでも違う角度で画像を映し出す事が出来るし、万が一片方を無くしても、もう片方で仕事を遂行できる。
____
まず初めに小さいフェイクガーネットの石の中に隠しカメラを仕込む。怪しく光るオレンジとも茶色とも言い難いその色が、内部に埋め込まれたマイクを分かりづらくしてくれる。さらにそのガーネットの周りをブラックロック(黒い石)で取り囲む。その中に超小型集音マイクを仕込むのだ。こちらも黒い石の為、内部にマイクが埋め込まれているなんて誰も気づかないだろう。耳に着けても違和感のないサイズと、長時間使用でも疲れないように最大限に薄く削りだす。
このギリギリの発想が僕の発明心を掻き立てる。
両方のピアスが出来上がるとその後、耐熱ボックスに入れ、水・火・寒さに耐えられるかの検査を実施する。
とにかくあらゆる場面に対応出来るように細部までこだわり尽くすのが本当にたまらなく刺激になる。
最終的にはピアスとしても田中さんが欲しくなるくらいのレベルに。
その物自体がそんな装置だなんて誰にも気付かれないで、寧ろファッションアイテムとしての立ち位置で作り上げる事が大切だ。
___そして今回も完成させてみた。ピアス型カメラ&マイク集音装置___
______
「DAVIDさん、今回の装置も完成しました!どうでしょうか?」
「JACKが作ったとなれば・・・これは特殊装置なんだよね。普通のピアスにしか見えない。そうだね、これは単なるピアスではなく隠しマイクなのかな?」
「いえ、真ん中のガーネットの部分に隠しカメラが埋め込まれています。その周りのブラックストーンには隠しマイクを内蔵させている”ピアス型カメラ&マイク集音装置”なんです。」
「それは凄いですね!カメラもマイクも。それをピアスとして田中さんに付けてもらえば私達もその場にいるのと変わらない状況で全てが把握出来るという事ですね。本当に見事としか言いようがありませんね。」
「いや、そう言って頂き本当に嬉しいです。有難うございます!毎回、DAVIDさんを驚かせる事が一番の目的で作る感じになってきました。今回も誰にも気付かれない自信がありますので。」
DAVIDさんが驚く姿を見るのが僕の中の第一関門突破みたいになっている。
今回も本当に良い装置が出来たぞ・・・。
今度は田中さんがどうこれを見るかだ・・・。
____
「DAVIDさん、JACKさん、こんにちは。もうJACKさんの装置が出来たんですか?本当にお仕事が早い!」
「そうなんです田中さん、まずはこのピアスをどうぞご覧になってください。」
僕はピアスとだけ言ってその装置を田中さんに差し出した。
「えー、素敵!このピアスJACKさんが作ったんですか?凄い!わざわざ今回の私の役である桐山冴子用に作ってくれたんですか?確かに雑貨の輸入業とかやっている方ってこだわったものを身に着けていそうですもんね。それにしてもこんなに素敵なピアスを有難うございます。それで、実際に使う装置はどれなんですか?」
僕とDAVIDさんがお互いの顔を見ながら思わず笑ってしまう。
「いや、実はそれ自体が装置なんです。」
僕がそれを伝えると驚いた田中さんはピアスを持ち上げてじっと見つめている。
「え?これが、ただのピアスじゃないんですか!!え、マイクとかですか?」
「勿論、マイクでもありますが、カメラでもあります。真ん中部分にカメラを仕込んでいて、周りの黒い石の所にスピーカーマイクが埋め込まれています。ちょっと耳に付けてみて下さい。」
すぐさま田中さんが両方の耳にピアスを付けてみる。
「では、いきますよ。こちらのモニターをご覧ください。」
田中さんはパソコンモニターを見ると「えーー?」と言う顔でこちらを見る。
「これ、私の目線とほぼ一緒ですね。凄いー!」
「それでこのパソコンのボタンを押すと・・・。田中さん、何か話してみてください。」
「あーあー、マイクのテスト中・・・。」
パソコンのスピーカーから田中さんの声が聞こえる。
「す、すごい!私の声がパソコンから!」
「それでこのスイッチを入れると・・・。田中さーん、聞こえますか?」
「え?耳元からJACKさんの声が聞こえる!」
「そうなんです。これは田中さんには私の声は聞こえますが、音漏れがほとんどなく周りの人には僕の声は聞こえないんです。なのでピアス越しに私達は会話が出来るようになっているんです。」
「えーーー!JACKさん天才過ぎる!」
「そうなんですよ、だからJACKは本当に天才なんです。こんな装置をすぐに考えて作ってしまいますからね。」
「いやいや、有難うございます。まあ、僕からしたらお茶の子さいさいです。」
自慢げに話す僕に向かって田中さんが抱きついてくる。
「え??」
「すごーい!JACKさんちょーー天才!!全然分からない!ピアスにしか見えない!!えー!!仕事終わったら欲しい!!」
「申し訳ございません。うちは仕事が終わると全て壊して証拠を残さないんですよ。確かに欲しくなりますよね?でも、田中さんが仕事後も忘れていつまでもそれを付けていると・・・こちらから田中さんが見てるもの全て丸見えになりますけど・・・。」
「あ!やだ、恥ずかしい。確かにそうですね。寧ろずっと私がする事を見られちゃうんですね!それはキケンキケン!」
「ははは、ですよね。仕事用です。あくまでも。でもそれくらい周りから見てもバレないものをJACKは作れるんです。毎回彼の仕事は芸術としか言えない位ですよ。」
なんだか田中さんがそのまま付け忘れてくれたのを考えると・・・いけない想像も期待してしまうが・・・。邪念は無用だ。
「ちゃんとトイレに行く前にも伝えてください。言い忘れた場合は女子トイレのマークが見えた段階でこちらの映像など切りますので終わりましたら連絡ください。そこで改めてスイッチ入れますので。あと、仕事が終わった時も忘れない様に伝えますので耳から外したらこの箱に入れてください。充電が自動でされます。付けたままお風呂にでも入ったら大変ですから、とにかく仕事が終わり次第外すようにお伝えしますから安心してください。」
「確かに!お風呂とかトイレもキケンですね!優しいんですね、JACKさん。言われなかったら付けっぱなしだったかも。」
少しだけ勿体ない事をした気分にもなったが、そんな事の為に作ったのではなく高野さんの依頼、そして山内さんの事を調べる為のアイテム。
___これで準備完了だ。そしてこれからDAVIDさんの考えで僕らの”駒”が動く事になる。今回も楽しみだ・・・。
「それでは田中さん、追って連絡します。ある程度ご自身が輸入に精通する人物だという事を頭に入れて始まる前にいつものように役作りをお願いしますね。」
「もう準備はしていますよ!任せてください!ご連絡お待ちしていますね。」
楽しみな時間が幕を開けるぞ・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます