問:雛田麻琴はヒーローですか?(またはあの子を救えますか)

あもと遊

プロローグ この物語ってどういう話ですか?

『勝利を想像(イメージ)するんだ! 侑斗』

 主人公に向かって、犬みたいなマスコットが熱く語りかけている。


「パパ、久しぶりにヒーローもの見たよ。面白いよな? 麻琴」

「そうかなあ」


 テレビを前にして、麻琴と呼ばれた少年は退屈そうにあくびをした。

 もう数時間はこのアニメを見ている。これ、ちょっと怖いシーンあるし。


 よく分かんない、と思いながら、パパに言い出すことができなかった。

 本当は、ゲームがやりたい。幼稚園で超流行ってるやつ。


「麻琴に困ったことがあったら、パパが助けてやるからな」

「……ホントに?」

 麻琴は手遊びをしながら答える。

「当たり前じゃないか、パパは何があっても麻琴の味方だぞ。たった一人の息子なんだから」

 パパは一片の曇りもない顔でそう言った。


「そうかな」

「そうに決まってる」

 即答してくれたことが誇らしかった。けれど、それを素直に出す気恥ずかしさから、クッションで顔を隠す。


 その日が、麻琴が何十回と見返すことになるアニメとの出会いだった。

 名前は『スクール*ヒーロー』。


 かつて多くの死傷者を出したという「ヒトキリ侍」の復活を阻止するため、式神の「ビャッコ」と一緒に戦うバトルものだ。

 増えていく頼もしい仲間たち、相容れないと思っていたライバルとの共闘、たくましく成長する主人公・侑斗。


 十年以上前に出会ったアニメを、麻琴はきっと一生忘れられない。挫けそうなとき、いつだって考えていた。侑人ならどうするかって。

 

 でも、侑斗には侑斗しかなれない。


これは、そんな簡単なことに気がついた青年の物語だ。じゃあ、彼はヒーローになれないの? あの子を救えないの? みたいな話。


 えっ、教室でビールを飲むJKとのラブストーリーだって聞いた?! そんな話じゃない、帰ってKUDASAI! いや、まあそうだったら……コホン、なんでもない。

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