免罪符

オキテ

裁判

ここは教会近くの裁判場だ。


 裁判官の背後には平等を司る神の像が置かれており、平等な裁きが下されているかを監視している。


 神に背を見守られ、裁判長は大きな溜息を吐いた。


 証言台に立っているのは若い女だ。


 ブルネットの髪に、白くきめ細やかな肌。


 サファイヤのような碧眼を持っているが、その相貌には飲み込まれそうな程の闇が広がっていた。


 だがあの表情は何だ。


 何故彼女は微笑んでいるのだ。


「被告人」


 裁判長は暗い声色で呼びかける。


「そなたは友人の幼い子供を散歩に連れ出し、そして自宅で……手斧で子供の首を刎ねた。異論は無いな?」


「えぇ、ありません」


 女は罪をあっさりと認めた。


 その言葉を聞いた裁判長の眉間に深い皺が刻まれる。


「……そなたは、これから自身の身に何が起こるのか分かっているのか」


「えぇ、もちろんです」


 女は裁判長をしっかりと両目で捉えた。


「数週間の猶予の後、斬首刑……でしたわね」


「そうだ……それなのに、何故そなたは笑っていられるのだ」


 質問された女はより口角を上げて、こう答える。


「これでようやく……この残酷な世界から去り、天国へ行く事ができるからです」

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