あやかしで一杯!
あげあげぱん
第1話 オバリヨン
僕の大学時代の話だ。
そのころの僕にはケウケという友人が居た。彼は妖怪が好きで、彼の妖怪話を聞きながら二人で酒を飲んだものだ。
これは、そんな彼との話をまとめたものである。
「君はオバリヨンという妖怪を知っているか」
ビールの肴にケウケが話し始めたのはオバリヨンという妖怪の話だった。
「それはどういう妖怪なんだい?」
「うむ。語ってしんぜよう」
ケウケは楽しそうに話しだす。妖怪について話す彼はいつも生き生きとしている。
「オバリヨンは新潟に伝わる妖怪でな。似たような話は日本の各地にあるんだが、これがなかなか面白い妖怪なんだ」
「君はいつだって面白いというだろう」
確かに、とケウケは頷く。
「さて、このオバリヨン。おんぶお化けとも呼ばれるんだが、何をしてくる妖怪か分かるかな?」
「おんぶというくらいだから、背に乗ってくるんだろう」
「その通り! この妖怪は夜中に道を歩いていると背中に乗ってくるんだな。だから、おんぶおばけと呼ばれるわけだ」
「なるほど、オバリヨンはどうして人におんぶしてもらうのかな?」
「それはだね。僕が思うに人を使って目的地まで移動がしたいのだろう」
「適当な人を捕まえて目的地まで行くのか? それはずいぶん当てずっぽうな方法のように思えるが」
「分からんぞ。オバリヨンは観察眼に優れているのかもしれない。かのシャーロックホームズは相手を見ただけでその人物がどこから来たか当てられた。その逆もできるかもしれん」
「ケウケの中でのオバリヨンはホームズ並みの観察眼を持っているわけだ」
「妖怪の可能性は無限大だ。大人気小説の登場人物みたいなことができたって驚かない」
「ずいぶんと妖怪が好きだね」
「それは君も知ってのことだろう?」
「うん、知ってる。君の晩酌につきあうようになって、色々な妖怪の話を聞いているからね」
「そうだな。できればここに可愛い女の子の一人でもいて欲しいが」
「がたいの良い男で悪かったな」
「あーすまん。つい、な」
「何がつい、だ。いいよ。正直な話をするのは気心が知れているからと思っとく」
「どうも。まあ、今日は客人が一人来てくれているんだがね」
そう言ってケウケは己の肩を揉む。僕は周囲を見回すが、僕たち二人以外には誰も居ない。
「怖い話をするじゃないか」
「怖くはないよ。今日、私は家に帰るまで妙に肩がこってね。これはきっとオバリヨンが私に乗っていたからだろう」
「つまり、オバリヨンは君の家にやってきたと。何のために」
「それはもちろん」
ケウケは、にっと笑って言う。
「私の話を聞くために、さ」
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