第116話

 虚ろの庭ホロウ・ガーデンでの役割分担の話。


「ご飯出来ましたよー」


「おぉ…今日も美味そうだの」


「主、いつも我らの食事を作って頂き、感謝します」


「メイドとしてのスキルを遺憾無く発揮しておりますわね。今日も美味しそうですわ」


 食事や洗濯は私の役割となっている。というのこのパーティ私以外生活力皆無なのである。ルミちゃんは魔神だったからか、魔法で大抵の事は出来たのでそこら辺大雑把だし、グラーゼルさんは肉を焼くしか出来ないと豪語、師匠は論外。師匠の場合、転生する前、妻に出会うまでは干し肉や生の野菜しか食べない状況だったらしく、それを妻に言うと叱られたとの事。その後は奥さんが料理を担当していたため包丁を触る事も無かったそうな。


 という訳で料理担当は私に決まった。洗濯はなんでかって?ルミちゃん以外が壊滅的だから。ルミちゃんは綺麗好きで、清浄魔法ですぐに服ごと綺麗にするためそもそも洗濯という作業がそんなに必要ではない。問題は残りの2人だ。グラーゼルさんは5日ぐらいなら大丈夫だと平然と言うし、師匠は(ry


 ルミちゃんはともかく後の2人は色々と心配になる。なので私が皆の服を洗濯する事になった。ルミちゃんの服は新品のように綺麗だ。綺麗好きで清浄魔法のお陰だろう。後の2人は…、うん…。何がとは言わないけどもう慣れたよ…。


 ちなみにお風呂は毎日必ず入る私とルミちゃんに対して、グラーゼルさんは2日に1回入るタイプ、師匠は気が向いたら入るタイプである。3日入らなければ強制的にお風呂に入れさせている。そうでもしないと師匠は何時までもお風呂に入らないのだ。その甲斐あってか最近だと早めにお風呂に入ってくれるようになった。ついでにグラーゼルさんも。


 そんなこんなで私の家事力がどんどん磨かれていくのであった。あれ、おかしいな。槍術の鍛錬だったハズなのに。なんで家事力を鍛えているのだろう。まぁいいや、花嫁修行と考えよう。それに


「美味いのう!こりゃ龍の肉か!」


「美味い!流石主!」


「龍の肉は高級食材ですが、ここまで美味しくなるのですね」


 3人とも喜んでくれているみたいだし、細かい事は言いっこ無しだ。


 食べ終わり、3人が満足そうにしている。満腹になったらしい。魔族は健啖家が多く、細身の女性でも大盛り一人前をペロリと完食する。今のルミちゃんでも大人一人前を食べるのだ。グラーゼルさんや師匠はもっと食べる。2人前ぐらいは軽く完食する。


「スゥ…スゥ…」


「ゴォォ!…ゴォォ!…」


「グガアァ!!グガアァ!!」



 満腹になったので眠気が来たのだろう。ルミちゃんは私の膝枕で静かな寝息を立てているし、師匠は巾着を枕にしてイビキをかいている。グラーゼルさんに至っては大の字で地響きのようなイビキをかきながら爆睡している。


 食事後は食休みという事で短時間の睡眠を取る形にいつの間にかなっていた。私も寝ようかと思ったのだが、3人の内2人のイビキがうるさいのでとりあえず起きている。


 ルミちゃんに膝枕しているため、出来る事が限られているので最近では編み物を始めた。やってみると結構楽しい。今は3人の人形を作っている。最初に作ったのはアルバート様だった。拙い出来だったので上手くなってリベンジするつもりだ。セシリア様やミナト様の人形も作ろうかな。

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