第52話
「ボクはユウカを愛している。これから先も、呪いが解けた後もボクと歩んでくれ」
…
……
………ふぇ?
え、今、何て?プロポーズに近い言葉だったような…?
「アルバート様…?」
「本当ならば全て片付いた後にしようかと思っていたんだが、ミルとエルにそれは『死亡ふらぐ』だから止めてと言われてな。本格的に戦いが始まる前に伝えた方がいいと言われていたんだ。こうしてボクの話になったからせっかくの機会だと思ってな」
ミル先輩とエルくん死亡フラグなんて知っているんだ。『この戦いが終わったらあの子に告白するんだ』って確かに有名なフラグではあるけども…。あ、この後、コイツ死ぬんだなって察する事になるんだよなぁ。ベタ過ぎて、逆に生存フラグになりそう。…いや待て、現実逃避している場合ではない。何とか返事をしなければ。
「えお、あぅ、うえあぁ」
ダメだ。脳の言語分野がイカれた。言葉未満の音が喉から漏れるだけになってしまった。
だって、仕方ないじゃないか。今まで告白された事なんて無かったのだから。いや、まぁね、俺が悪夢を見た時に似たような事を言っていたけど。それはあくまで眷属であり、婚約者だからだと思ってたんだ。まさかここまで思われていたなんて知らなかったんだよ。眷属の効果で嫌われてはいないのは知ってたけど愛してると伝えられたのは初めてだ。
顔が熱い……口の中がカラカラに乾いていく…バクバクと心臓が高鳴る…。
「ど、どうして…」
「いきなりですまないな。ただ、ユウカには言葉で伝えないとと思ってな。ヤナギのを見る限り恋愛にちょっと疎そうだし、ボクの気持ちを知らないだろうから」
軽くディスられる俺。アルバート様曰く美優は俺に気があったらしい。全く気付いていなかった。そんな俺は何も言い返せない…。
既に頭がショートしている俺にルミエールさんとノワールさんが助け舟(?)を出す。
「ユウカさん、ここで及び腰になるのは女が廃れますわよ!女は度胸ですわ!」
「一世一代の告白を先延ばしにするのはいただけないな。いずれにせよ、キッチリと答えなければならんぞ?」
ダメだ逃げ場がない。逃げるつもりは無いけどもちょっと待って!上手い返しが分からない!
「こ、こちらこそ、末永くお願いします…」
何とか絞り出した言葉は何のひねりも無い言葉だった。童貞で処女の俺にはこれで精一杯なんだ…。恋愛力たったの五のゴミですみません…。
「ユウカ!」
「ひゃっ!」
アルバート様に抱きしめられる。今までのハグと違い、何と言うか情熱的である。アルバート様の顔は真っ赤になっている。俺の顔も同じだろう。顔が焼けるように熱い。顔が、顔が近い!吐息を感じる距離。今まで意識していなかったというか、ハグぐらいなら別に良いかと思っていたけど、こうして意識し始めると弱いなと自覚する。
「ユウカ好きだ!大好きだ!愛してる!」
「わ、分かりました、分かりましたから…」
今まではどちらかと言うと、落ち着いた印象のアルバート様がここまでグイグイ来るとは知らず、ただアワアワするしか出来ない俺。
「ユウカもボクに言って欲しい!」
何をなんて無粋な事は言わない。恥ずかしさはまだあるが、応えないのはダメだと分かっている。ぐるぐると回る頭の中にある言葉を紡ぎ出す。
「好き、です…アルバート様が。これからも、そばに居て、ください…」
「ユウカ〜〜!!」
「ひゃ〜〜!!」
「絶対離さないからな〜!」
「あらあら、
「二人の世界に入っているな。そっとしておくとしよう」
という訳で婚約者?から正式な婚約者にランクアップした俺達なのであった。
◆◇◆
後日。人間界のとある家にて
銀色のウェーブ掛かったロングヘアの少女が手紙を眺めていた。傍らには彼女の恋人らしき青年が寄り添う。隣の部屋には、彼女達の子供達がスヤスヤ眠っているため小声で話している。
「ねぇねぇミナくん!どうやらアルくんが正式に結婚するみたいだよ!」
「ふむ。アルがプロポーズしたのか。あまりそういうのに興味が無さそうだったが、好きな人が出来たら積極的なんだな」
「やっぱり姉弟だね!愛する人にはグイグイ行くべしって家訓にもあるし。式は…まだ未定みたいだね。やっぱりアレを片付けた後かな」
「そんな家訓初めて聞いたんだが?まぁだろうな。あいつらをどうにかしないと安心出来ない」
「今考えたからね。う〜ん。だとしたら早急に潰すべきかな」
「ああ。
少女と青年、セシリア・ローズ・ベルガンドとその伴侶ミナト・ライカ・ベルガンドが顔を見合わせ笑う。
魔人の中でも屈指の実力者である二人が動き出した。『炎獄』と『凍獄』の異名を持つ二人が。
全ては、大切な家族の為に。
全ては、未来の家族の為に。
その二日後、魔神教の支部の半数以上が何者かに襲撃され壊滅した事を後に知る形になる。
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