第11話
朝食を終え、リルちゃんとまったりしていると、そこに一人のメイドが近づいて来た。
「ユウカ様ですね?」
メイドの少女は、俺に問い掛けてきた。中学生ぐらいの背丈に、ポニーテールにしている青い髪に、青い瞳。右手首に、青色の宝石がついたブレスレットをつけているぐらいでリルちゃんと装いは変わらない。
「は、はい。そうですが、どなた様でしょうか?」
「失礼致しました。私は使い魔のミルと申します。ユウカ様にメイドの手ほどきをするようにアルバート様より仰せつかっています。以後お見知り置きを」
「ミルちゃん。おはよう」
「リル、ちゃん付けしないで。私先輩ですからね!」
「えぇ~。なんで?」
「ちゃん付けされると威厳が無くなるんです!」
「いげん」
「な、何よ。私みたいな根暗には威厳もないっていうの!?そうよね!どうせ私なんかゴミクズ以下よ!生きている価値もないポンコツ……うぅ…グス」
「ミルちゃんなかないで〜。いいこ、いいこ」
「…グス、ちゃ、ちゃん付けしないで。頭撫でないでよ〜」
突然ネガティブになって泣き出したミルちゃんをリルちゃんが頭を撫でて慰めている。どうやら自己肯定感が大分低いらしい。
リルちゃんに慰められて、ようやく落ち着いたミルちゃんが咳払いして、元の口調に戻った。…顔は真っ赤だが気にしない事にした。
「…失礼致しました。お見苦しい所を見せてしまい、申し訳ございません」
「いえ、お気になさらず。えっと、改めて、ユウカです。昨日この屋敷に来ました。よろしくお願いします。ミル、先輩」
メイドとして先輩なら先輩と呼ぶべきだろうか。そんな事を考えて、ミル先輩と呼んでみた。すると、
「せ、先輩。…初めて言われた…フヘ、先輩」
何やら嬉しそうにクネクネしている。表情はだらしなく蕩けており、威厳の欠片もない。そんな姿を眺める俺に気づいたのか、ハッ!とした顔になり、咳払いする。
「し、失礼致しました。今日は挨拶に伺いましたが、明後日からよろしくお願い致しします」
「こちらこそ、ご指導ご鞭撻をよろしくお願いします。ミル先輩」
「あふん。先輩、ミル先輩、フヘ」
また異世界に旅立ったようだ。生暖かい目で見守る俺とリルちゃんに気づき、再び咳払い。なんか面白い先輩だな。
「そ、それよりもユウカ様。朝食が終わりましたら、アルバート様にお会いしていただけますか?」
「構いませんよ。アルバート様は自室にいらっしゃいますか?」
「はい。自室にて、ユウカ様をお待ちです。そろそろ『呪い』が来るそうです」
「分かりました。急いで向かいます。ありがとうございます、ミル先輩。行こうか、リルちゃん」
「はい!いきましょう!」
「オホォ…。フヘ、フヘヘ」
恍惚としたミル先輩に感謝して、アルバート様の元に向かう。
◆◇◆
「アルバート様、ユウカです。入ってよろしいでしょうか?」
ノックして確かめる。返事はなかった。あれ?自室にいるはずじゃ?もう一度ノックする。
「アルバート様、入ってよろしいでしょうか?」
返事が無い。これは、居ないのか?ドアノブを回してみると、…開いた。
「アルバート様?入りますよ?」
ゆっくりと扉を開けて室内を確かめる。すると、
「!アルバート様!!」
アルバート様は床に倒れていた。
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