恐ろしくも優しい貴方に、願い事を

紺青くじら

第1話 出会い

 もう、終わりだ。


 ぼろぼろの靴を履いた足を引きずりながら、私は死を覚悟した。

 もう、どれだけ逃げただろう。これ以上は、逃げられない。止めちゃダメなのに私は足を止め、その場で倒れた。ポタポタと、コンクリートの地面に血が落ちる。さっき撃たれた弓矢が、腕をかすめたらしい。


『貴方だけは逃げるのよ』


 姉さんの言葉を思い出す。涙が出る。本当は私も、あの場にいたかった。ずっと、姉さんと一緒にいたかった。


「姉さん……ごめんなさい、私……」


 逃げられなかった。足音が、近づいてくる。


 薄れゆく意識の中で、影を見つめた。ああ、どうか。頼むから。


「お願い……姉さんを助けて……」


 その言葉を最後に、私は気を失った。


 



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