31 またね
よし子さんの家の縁側で、僕はぼんやりしていた。僕の隣にはみちるさんがいて、ころころと遠ざかって戻ってきてを繰り返している。
もう夏が終わる。この夏は、何というか、こう、盛りだくさんの夏だった。
妖怪と呼ばれるような存在に出会って、抜け首の頭を探して色んな場所を歩いて。
最初はこの町でのんびりするつもりだったのだけど。
でもまぁ、悪くなかったな。
この夏、なんてものはいつだって一度きりで、同じ明日なんて絶対に来ないけど、この夏はこれからもきっと、何度も思い出す夏だろう。
「あおくん次はいつ帰ってくる?」
「次?うーん、多分年末かな」
「そっか。また一緒に遊ぼうね、あおくん」
「うん、そうだね」
にこにこと笑うみちるさんに僕も笑う。みちるさんはいつだって笑っているし、きっと何があっても変わらないんだと思う。例えばそう、いつかの未来に体とくっついて、普通の人間の形に戻ったのだとしても、きっとみちるさんはみちるさんだ。いつだって変わらない、僕の友達。
「あらあら、楽しそうね、みちるさん」
冷茶を持ってきたよし子さんが、のんびりした声を上げる。みちるさんが何だか変な笑い声を上げてこちらに転がってくる。僕はよし子さんにお礼を言って湯呑みを受け取る。
何でもない日常が、こんなに尊い。
また、次の休みに会おうね、みちるさん。
みちるさん 万事(よろずごと) 須堂さくら @timesand
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