23 ストロー

 突然現れた生首にちょっとした騒ぎが起きたけれども、その場に女の子が駆けつけてきたり、男性がやって来たりして有耶無耶にしてしまった。それで僕達は、その男性、正人さんの家にお邪魔することになった。人数が多いからと、普段習字教室に使用しているという部屋に案内されて、皆で机を取り囲む。

 虎郎君に体を返したので、僕はみちるさんを抱えて座った。

 治君が、オレンジジュースに突き刺したストローを、がじがじと噛みながら飲んでいて、有太君にぺちんと頭を叩かれている。

「行儀が悪いぞ」

「へーい」


 それぞれに自己紹介をすると、抜け首の虎郎君が驚いたように声を上げた。

「えっ、光次くん?本物の光次くんなんだ」

「えっ……?」

 光次君が困ったような顔で虎郎君を見る。光次君の幽霊の話を聞かされると、三兄弟が目を丸くして虎郎君を取り囲んだ。

「お、おれがやっちゃったの!?ごめんなさい!」

「だからあの時光次の気配も近くにあったのか」

「おまえじぶんのばしょわかんなくなるなんてまぬけだなー」

 有太君が治君の頭にごつんとげんこつを落とす。

「悪かったな。不便だっただろ」

「ううん、そうでもなかったよ」

 虎郎君がのんびりした様子で言うのが、何だか少しみちるさんと重なって見えて、性質が少し似ているせいかなと思ったりする。

 そのみちるさんを、虎郎君が不思議そうに見つめた。

「それで、えっとみちるちゃんって言ったよね?みちるちゃんって、何?」

 虎郎君の言葉に、みちるさんに視線が集まる。

「なんだろね、うーん、人の首?」

 みちるさんが首を傾けて、虎郎君が花子さんを見て、花子さんがみちるさんをじっと見つめて、うーんと小さく唸った。

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