2 喫茶店

 いらっしゃいと声をかけられて、いつもの?と尋ねられて頷く。大学の近くで老婦人が切り盛りしている喫茶店は、僕の行きつけのお店になった。よし子さんを少し思い出させるおっとりとした主人が、丁寧に淹れてくれるコーヒーを飲むのが、僕にとっては気分転換にぴったりだったから。

 夏休みに帰省するという話をすると、それじゃあお土産に、とコーヒー豆を分けてくれた。よし子さんのお家では大抵お茶が出てくるから、帰ったら僕がコーヒーを淹れてあげようかななんて、そんなことを思う。みちるさんはコーヒーを飲んだことはあるだろうか。なんだかんだ色んなことを知っているみちるさんだから、コーヒーの味も知っていそうだな。

 店に少しだけ売ってあるお土産用の焼き菓子もいくつか購入する。

 休み明けにまた来ますと話し、ゆっくりしてきてねという言葉に送り出された。戻ってきたら、たくさん思い出話を聞いてもらおう。


 駅を出ると、懐かしい景色に迎えられる。まだたった数ヶ月しか離れていないのに、帰って来たんだなと感じるのは不思議な感じだ。

 僕の好きな人たちに、僕の好きになった場所や人の話ができたら良いな。

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