トランスジェンダー アキラ ~「陸女」スピンオフ~

@nakamayu7

第1話 プロローグ

 なんだ、このタイトルは!

 俺はあれか?超ロボット生命体なのか?

 機械惑星から来たのか?

 人間以外のものに変形できるのか?


「それは『トランスフォーマー』だよ」

 隣に寝転がっているノリが突っ込んでくる。


「でも体が金属で出来てて、人間みたいな有機生命体より頑丈ってとこは当てはまるかもね」

「なんだと!トランフォーマー合体しちゃうぞ!!」

 俺はノリの上に覆いかぶさって、ぎゅっと抱きしめた。そのまま口付けする。


 俺は来見紗奈(くるみ さな)、『ノリ』こと芳津能理子(よしず のりこ)とは恋人同士、と言うか夕べ恋人同士になったばかりのできたてホヤホヤのカップルだ。


 俺は高校に入学してからずっとノリのことが好きだった。そして昨日、インターハイ優勝の勢いに乗って俺はノリに告白した。

 そしてようやく彼女を『モノにした』という訳だ。


 今、俺たちは、とあるホテルの一室で同じベッドの中にいる。さっきまで愛し合っていたけど、ようやく一段落着いたところでこの変なタイトルの小説への登場が決まったと聞いて、思わず突っ込んでしまったのだ。


 二人で一枚のシーツに包まっている。俺の顔のすぐ横にはノリの顔がある。息遣いまで聞こえる。

「ねえサナちゃん。前から気になってることがあるんだけど、聞いてもいいかなあ」

 ちょっと甘えた感じの口調で聞いてくる。かわいいやつ……


「何だ?」

「サナちゃんってどうして自分のこと『アキラ』って呼ばせてるの?」

「女みたいな名前が嫌だってのは分かるよ。でもんなんで『アキラ』なの?」

「ああ……それを話すとちょっと長くなるぜ」


「ふーん。もう一つあるんだ。サナちゃん、横浜の出身でしょ。なんでわざわざ長崎の学校に来たの?」

「女の子が好きだから女子高に来たのは知ってるよ。でもなんでわざわざ長崎なのかなって。だってめっちゃ離れてるじゃん」

「ああ……それも話すとちょっと長くなるぜ」


「長くてもいいよ。時間はたっぷりあるし。でも、私に話してもいい話なの?」

「ああ……今まで誰にも話したことないし、話す気もなかったんだけどな」

「辛い思い出?」

 俺はどう答えていいかちょっと迷った。辛い話といえばそうかもしれないが、思い出したくない話ではない。むしろ忘れてはいけない話だ。


「ノリには話すよ。お前には聞いて欲しいんだ」

「待って。じゃコーヒーでも淹れるよ」


 ノリは裸の体にバスタオルを巻いてベッドから出ると、備え付けの電気ポットに冷蔵庫から取り出した水を入れ、スイッチを入れた。

 2つのコーヒーカップにドリップ式のコーヒーパックをセットする。

 お湯が沸くまでの少しの間、俺は黙ってノリを後ろから抱きしめていた。


「ミルクは?」

「俺は要らない」

 ノリが淹れてくれたコーヒーのカップを持って、俺たちはツインのベッドに別れて向かい合わせに座った。


 さてと、どこから話そうか……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る