「カクヨム甲子園2024」の作品を読んで:ショートストーリー部門
snowdrop
傾向と対策
◆これまでの受賞作
『ショートストーリー部門』
・大賞
二〇一七年 恋愛✕近未来SF
二〇一八年 恋愛✕現代SF
二〇一九年 SF✕現代ファンタジー
二〇二〇年 恋愛✕ミステリー
二〇二一年 恋愛✕SF
二〇二二年 恋愛✕ホラー
二〇二三年 恋愛✕中華ファンタジーホラー
恋愛要素のあるSFやホラー作品が選ばれている。
・読売
二〇一七年 ホラー・ゴキブリが主人公
二〇一八年 現代ファンタジー✕SF
二〇一九年 SF✕ホラー
二〇二〇年 瞳の色が違う人との恋愛
二〇二一年 祖母と母と孫の現代ドラマ
二〇二二年 現代ファンタジー・不老不死
二〇二三年 現代ファンタジー✕恋愛要素
時代性や時事、話題に絡めた現代、またはファンタジー色のある作品が選ばれている。
・協賛
二〇一八年 海の家のバイトでの恋愛
二〇一九年 幽霊部長との恋愛ファンタジー
二〇二一年 コロナ禍の現代ドラマ
二〇二二年 美術部の現代ドラマ✕恋愛
二〇二三年 水泳部の現代ドラマ✕恋愛要素
※二〇一七年と二〇二〇年は協賛企業はなかった。
毎年テーマは変わるが、大多数の人が抱いている高校生らしい青春を感じさせるものが選ばれている。
■高校生にしか書けないものを書く
カクヨム甲子園は、高校生しか応募できません。
いまを生きる高校生の生の声、生の体験、いましかもっていない感受性を込めて書くのが良い気がします。
大人は、子供の頃を忘れてしまうものです。
書くときは、上手く書くための技術(他人の視線を意識した文章の書き方)を一旦忘れて、他人のためではなく自分が楽しむために書いてみてください。
■文字数を守ろう
ショートストーリー部門の応募規定文字数は、『四〇〇文字以上、四〇〇〇文字以下の作品』。
あれやこれや詰め込みすぎず、描きたいことを一つに決めて書かれるといいと思います。
◎四千字の場合の構成
短めの短編小説では、コンパクトながらも完結した物語を展開する必要があります。以下のような配分が考えられます。
・導入部:四百字(十パーセント)
主人公と設定の紹介
物語の基本的な状況説明
・展開部:二千四百字(六十パーセント)
主要な出来事の描写
登場人物の関係性の発展
葛藤や問題の提示と深化
・クライマックス:八百字(二十パーセント)
物語のピーク
主要な葛藤の解決または転換点
・結末:四百字(十パーセント)
物語の締めくくり
主人公の変化や学びの描写
■推敲を楽しもう
「……」三点リーダーや「――」ダッシュの引き方、「 」の使い方、文章頭のひとマス明けなどなど、文章の書き方としては正しくないからといって、読まれないことはありません。
書きたいもの、伝えたいもの、作者の書きたい熱量のこもった、読んで深く味わえる作品ならば、多少のことは目をつぶってくれます。
パソコンやタブレットを使う人もいるでしょう。でも多くはスマホで書いて投稿していると考えます。横書きに慣れているため、文書の書き方を守った入力は手間に感じると思います。
でも、正しい文章の書き方のほうが読みやすいです。
大事なのは、作者が作品に込めた熱量です。
多少の間違いを恐れる必要はありません。
あくまで、「多少」です。
誤字脱字衍字はしないように、書き終えたら声に出して読み、おかしなところがあれば直してください。
伝えたいことも伝わりにくくなります。
■人をむやみに殺さない
登場人物が死ぬ作品があってもいいです。
ただ、「感動させるにはキャラを殺せばいい」と安直に考えるのはやめたほうが良いと思います。
物語の山を作るため、安直に殺されるキャラクターにとって実にいい迷惑な話。読者を感動させるためだけに殺されるのだから。
これまでカクヨム甲子園に応募されてきた作品にも、恋人や幼馴染や友達、主人公自身が死ぬ作品が多く書かれてきました。主人公やその人物に読者を感情移入させ、印象的な死ぬ場面を描いて感動させるのは一つの方法ですが、誰もが思いつく方法です。
描きたい物語に必要ならば構いません。
他の人が思いつかないような展開を考えてみてください。
死を描きやすいジャンルは、ホラーやSF、悲恋ものでも描けるでしょう。
■異世界転生ものは選ばれていない
これまでは、というだけです。
ファンタジーはものでも内容次第だと思います。
ただ面白いだけではなく、異世界ものに何かを混ぜるのも一つの方法かもしれません。
ファンタジーは受賞されています。が、未だに異世界転生ものが受賞されている覚えがないです。
すでにある作品よりも、新しい作品を選んで書いたほうが良いです。
小説は新規性、つねに新しいものが求められていますから。
■各賞についての傾向
現代ドラマでホラー、ファンタジーホラー、あるいはSFで恋愛など、複数のジャンルをかけ合わせて書かれた作品が、これまで選考に残られています。
ありふれた視点をちょっとずらすために別の要素を取り入れると、他作品との差別化もでき、オリジナリティを増すこともできると考えます。
大賞は、ジャンルを問わず、恋愛要素のあるアイデアやオリジナリティのある尖った作品が選ばれる傾向があると考えます。
尖ったとは、他作品と比べて抜きん出たものです。同じ題材を描きながら、他の人とは異なる視点で描き、「この書き方があったか」と思える作品。
応募する時、大勢の人が書くジャンルを選ぶより、選ぶ人が少ないジャンルの方が、選ばれやすくなる可能性があると考えます。
選ぶ側が求め、なおかつ尖った作品である必要があります。
『カクヨム甲子園』開始からずっと選考委員をされている河野葉月氏は、SFとミステリーが好きであり、編集長という立場上、これまで多くの作品に触れ、精通していると考えられます。
また、今年の選考委員は、児童文庫でミステリー作品を書かれている、はやみねかおる氏。ジュブナイル・エンターテイメント・ミステリー作家と呼ばれ、「現代ミステリー作家」「本格推理小説作家」と位置づけられています。
ミステリー要素のある作品が、多く応募されるかもしれません。だけれども、相手はプロ。得意とするジャンルで挑むのは、よほどの自信家か正直者です。
受賞を目指すなら、相手の得意ではないジャンル、書いたことのない作品世界を選ぶのも方法の一つです。
恐いミステリーは、ホラーになります。ホラーも得意なのかもしれないでしょう。
ただ、はやみねかおる氏自身は、「文学を書いているつもりはない。むしろ職人に近い」と話しています。子供たちを楽しませ驚かせる作品を書く職人なのです。
文学的な作品は苦手かもしれません。
読売新聞社賞は、時代性や時事、話題になったもの、あるいは新聞社として発信したいメッセージを代弁するような、文学的で読みやすい作品を選ぼうとするかもしれない。
協賛企業は毎回テーマを設けられています。
選考する人は出版社の人間ではなく、会社の代表として選考するため、テーマに適したセオリーどおりの作品、「大勢が思い浮かべる高校生像を描いた作品」を選んでいる傾向がみられる。
二〇二四年の株式会社キングジムからの選考委員は、「ポメラ」の開発担当をされていた、立石幸士氏。
一九七二年生まれ。一九九六年東京電機大学卒業後、一九九八年キングジム入社。二〇〇八年に自身が企画したデジタルメモ「ポメラ」が大ヒット。現在は株式会社キングジム執行役員開発本部副本部長。
テーマは「道具」。
「高校生活でも、部活や学業、趣味の時間……と、日々さまざまな道具と共に過ごされていると思います。そんな日常での道具との接点から、自由に発想を広げた作品をぜひ読んでみたいです。たとえば……
・本当にこんな道具があったら、もっと面白く/便利になるんじゃない!? というアイデア性を感じる作品
・生活に寄り添うような道具が登場する作品
・道具を起点に、物語が動くような工夫がある作品
などなど。もちろん上記に限りません。現実に存在しない道具でもOK! 我々の想定を超えるような、あっと驚くような作品をお待ちしております」
と書かれています。
道具を中心に展開され、その道具が主人公の成長や自己理解につながるような内容が求められているのでしょう。
また、現実には存在しない道具を使用して、読者が驚きや興奮を感じるような展開も目指しているとあり、SFやファンタジー作品でもいいと思います。
道具というテーマを探求し、読者に新たな視点を提供する物語が求められていると考えられます。
◆最後に
必ずしも恋愛要素がいるとは限りませんが、大賞を目指される方は、昨年の受賞作とかぶらないものを書かれてはいかがでしょうか。二年連続して似たような作品は、選ぶ側としても敬遠すると考えるからです。
世にある他の賞でも、同様なことがいえます。
できるなら隔年を置くことを勧めます。
ご参考までに。
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