廃屋にて
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62歳 会社役員 男性の書き込み
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これは私が小学生の頃の話です。
小学校から自宅へと向かう通学路、といっても山道のすぐ横を通っている国道なのですが、その通学路の途中には、一軒の納屋がありました。
それは小さな木造の納屋で、灰色のすすがあちこちについているような、ボロボロの廃屋です。
学校帰りの夕方にその納屋の前を通った時、そんな納屋の中で何かが動いたような気がしたんです。
いつもは人気がない廃屋なだけに、珍しく持ち主の人がいるんだろうか?どんな人なんだろう?と、私はとても気になってしまいました。
好奇心に導かれるままその納屋に近づくと、いつもは閉まっている扉が開いています。
そこから中が覗けそうです。
薄暗い室内を覗くと、その中には女性のようなシルエットが見えました。
灰色に見える服を着た髪の長い女性が、背中を向けて立っていたんです。
私はこの納屋の持ち主はてっきりおじいさんかおばあさんだと思っていたので、予想外の姿がなんとなく不気味に思えました。
だってこの廃屋にはおよそふさわしくないスラっとした女性が、明りもつけずにただ立っているんです。
小学生なら怖くて当然です。
私は声をかけるのも恐ろしくなり、その場をソッと立ち去ろうと後ずさりました。
その瞬間、急に女性の影が動きました。
ビックリしたのも束の間、女性はこちらを振り向いて、ギロっとした目でこちらを見つめてきたんです。
咄嗟にヤバいと思った私は、一目散に逃げて自宅へと帰りました。
その後は追いかけられたり視線を感じたり、といったようなことはありませんでした。
ただただ、ボロの納屋で女性と目が合った、それだけのちょっと怖い話だったのですが……。
続きがあります。
その日の翌日、通学路を通って学校へ向かう途中、その納屋の近くにパトカーが止まっていました。
後で大人に聞くと、どうやらあの納屋で首を吊って亡くなった人がいたそうな。
それは女性で、亡くなったのは昨日のお昼ごろだったそうです。
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