【短編】怖い話のけいじばん【体験談】

松本うみ(意味怖ちゃん)

廊下のおばあさん

――――――――――――――――

24歳 事務員 女性の書き込み

――――――――――――――――




それは、私がまだ小さかった頃の話です。





当時は両親と同じ部屋で寝ていた私ですが、その日はなんだか寝付けずに、両親も寝静まった真夜中にも、一人布団の中で起きていました。


このままでは眠れないなあと思い、なんとなくトイレに向かうと、その帰りになんだか人の気配を感じたんです。


それは外から伝わってきます。私はそっと玄関の覗き穴から、外を見てみました。





すると、そこには2つ隣に住んでいるおばあさんがいたのです。


マンションの廊下を、右へ左へ行ったり来たりしているようです。


そのおばあさんは普段はとても愛想がよく、優しく挨拶をしてくれるような人でした。


でも今のおばあさんには、その面影はありません。


なにやらうつろな目をしていて、まるで幽霊のように青白い顔をしているのです。


そんな様子のおかしいおばあさんを眺めていると、おばあさんは突然わが家のドアの方に向き直りました。


そして、ゆっくりとこちらを指さしてきたのです。


無表情だった顔を、にっこりとした笑顔に変えながら。


私はその瞬間に怖くなって、急いで両親のいる寝室へと、逃げるように戻りました。


得体の知れない恐怖感、モヤモヤとした感情で、その日は結局眠れなかった気がします。





その後そのおばあさんとすれ違うことは何度かありましたが、そのときはいつもと変わらない明るいおばあさんでした。


いったいあの夜の行動はなんだったのか、それは未だに分かりません。





あのおばあさんが亡くなったと最近両親から知らせを受けたので、ここで供養させていただきます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る