転生先の魔王が討伐されてので好き勝手してやる、水曜日、土曜日11時更新

@pieropiero

第1話全員地獄行きふざけんな!

 この世界には別の世界いわゆる異世界というものがある。これは俺が魔王のいない異世界に転生し魔王を討伐するまでの物語だ。


 桜が咲き花見のシーズン春の気持ちの良い風が吹いている中二人の二十歳の男がコンビニに入る。


 一人は中肉中背の短髪黒髪に黒目の見た目をした東条屑こと俺。もう一人は中肉中背のツンツンしてる黒髪に黒目の見た目をした西宮和。俺達はカゴを手に取りお酒コーナーに向かった。お酒を流れるようにカゴに入れた。カゴ一杯にお酒を入れるとずっしりと重たくなる。


「このくらい買えばいいよな?」


 和は俺に質問した。その質問に対して腕を組んで少し考えた。


「……分からん。あいつは酒カスだからな。」


 別に俺と和は酒豪な方ではないが俺達の幼馴染に一人酒豪がいるのだ。酒豪ではない俺達は酒を飲む量が酒好きの幼馴染とは比べ物にならないのだ。


「これ以上は金銭面的に厳しいからやめとくか」

 と、俺達はレジに向かった。


 正直言ってあいつが飲み足りなかろうと俺には関係ない。


「次の方~」

 俺達は呼ばれるがままレジの前に向かった。そして店員は手際よく大量のお酒をレジに通した。


「合計で十万円になります」


「これで」

 俺はお金を支払いコンビニを後にした。


 正直十万円の出費は痛いな。


 そのとき白い軽自動車が前から猛スピードで向かってくる、ドン!俺と和に衝突した。それから長いこと寝ていたような感覚がした。


 俺は気を失っていたようだ。目を開くとそこは光り溢れる真っ白な場所だった。この場所には俺たち以外にももう一人いた。


 その人は身長は百六十センチメートル程度で、縦書きの大きな文字で巨乳と書かれた白いTシャツに薄グレーのスカートを身に纏っていた。


 女性の肌は透き通るように白く、血色が良く頬は淡いピンクに染まっていた。女性の髪は艶のある紺色のボブ、左端をヘアピンで止めている、目はキリッとしており美しく淡い紅色の瞳に黒い瞳孔、特上の特上の顔をした女性だ。


 その女性は俺と和の幼馴染で同じ大学に通っている南詩織だ。


 なんでこいつもいるんだ?


「ここはどこだ?」

 俺は気を失っている和の顔を叩き質問した。


 あの世じゃなくてドッキリであってくれ。俺は彼女もできたことないのにまだ死にたくない!


「分からないけど車と衝突した後で病院じゃないからあの世だろ」

 和は起き上がり答えた。


 やっぱあの世か、仮にあの世だとしてどうしてここまで落ち着いていられるのか……。こいつまさか彼女出来たことあるのか?俺にすらできてないんだこいつにできる訳無いか。


「詩織、どうしてお前もここにいるんだ?詩織も死んだのか?」


「へ⁉そっ……、そうみたいね」

 詩織は青ざめた顔で言った。


 どうやらこいつも分からないらしい。仕方ないので俺は潔く自分が死んだことを認めることにした。


「なんで死んだんだ?」


 同時に三人死ぬなんて考えられない。絶対に何かある。


「えーと……分からない」

 詩織は他所を見て答えた。


 何かおかしい、どうして死んだか知らない人間なんているか?ハッ!そうかきっと人には言えないような恥ずかしい死に方をしたんだな。後でなく程イジってやろう。


「馬鹿なのか?やっぱ酒で頭おかしくなっていたんだな。」

 和が当然馬鹿にして言った。


 こいつ、俺が後のお楽しみにで残してたのに先にしやがって。


「うるさいわね」

 詩織は悪態をついた。


 この反応本当に酒関連で恥ずかしい死に方したんだろうな……。


「それにしても死んだあとはどうなるんだ?」


「そりゃあ悪いことしてない俺らは天国で贅沢三昧だろ」


 和は胸を張って答えた。


 天国なんてあるわけないだろバカが。


「そうなったら私のおかげなんだから感謝しなさいよ」


 詩織が無い胸を張って言った。


 何故こいつに感謝を?


「ん?どういうことだ?」


 俺には本当にこいつの言っていることの意味が分からない、アルコールに頭がやられてるんだな。


「私は今日家であんたらを待ってたんだけど、お酒をもって私の家まで来させるのは酷だから車で迎えに行ったの、で居眠り運転してあんたらと事故したってわけ。だからこれからあんたらが天国で働かず永遠とぐーたら生活できるのは私のおかげってわけ感謝しなさいよ」

 詩織は再び無い胸を張って言った。


「お前かー!人殺しといて何が感謝しなさいだこのカス!まずはごめんなさいだろ人殺しが!」

 俺は詩織の胸ぐらを掴んで揺らしながら罵声を浴びせた。


「その通りだぜ。このアル中女!まだまだやりたいことあったんだぞ!俺は!」

 和も俺に便乗して詩織に罵声を浴びせた。するとこちらに向かってくる足音が聞こえた。足音の方を見るとそこには背中に羽の生えた白髪の女性がいた。


 すげぇ美人だな、彼氏いるのかな?


「そこのお姉さんビューティフルだね、綺麗な羽だね。その羽を使って空中エッチしない?」


「皆さんこれまでご苦労様でした。私は女神です。これからの皆さんについて説明しますね。まずあなた達は天国に行けません」

 女神様は俺を無視して、話を切り出した。


 性格わっる……、初めましての人間に『天国に行けません』って失礼にも程があるだろ。俺はそもそも悪いことしてないから関係ないのだが。


「当たり前だ、人殺しが天国に行けるわけない」


 分かりきったことだ、人殺しが天国に行ける訳がない。詩織とはここでさよならだ。


「そんな嘘よ‼私は安全運転していました。この二人が私の車の前に飛び出して来たんです。だから私は無罪です。飛び出してきた二人が悪いんです。」

 詩織は一生懸命に身振り手振りし女神に訴えた。


 この野郎この期に及んで嘘ついて助かろうとしやがって。


「はぁー⁉何言ってんだ?嘘つくなよ。お前さっき居眠り運転してたって言ってただろ!」


「うるさいわね!私みたいな美人に引いてもらえたんだから感謝しなさいよ!」


「女神様騙されないで下さい。彼女はお酒で頭をおかしくなっているのです。」


 絶対に俺達を殺したこいつを天国に行かせるものか地獄に行って魂浄化して輪廻転生してもらう。



「キャプチャー」

 女神様がそう言うと、俺達三人は突如現れた縄に拘束された。そして体勢を崩した俺達は倒れた。


 何だ……これは?魔法?女神の力?この力があれば好きなあのことも拘束プレイが出来るな。


「お静かに、南詩織さんだけが地獄に行くわけではありません。あなた達三人全員地獄行きです。」


「えぇー⁉」

 俺達三人は女神様の言葉に驚きが隠せなかった。


 詩織は分かるが何故俺達まで……?美人だと思っていたけどもう違う。


「東条屑さん、あなたは今まで数多くの人を自分勝手に利用してきましたよね。」


「あっ!」

 俺はつい声が出てしまった。そして大量の心当たりが頭の中を巡った。


 何故この女神がそんなことを知っているんだ。チクショウ!


「西宮和さん、あなたはギャンブル中毒者で数多くの人から返すつもりもなくお金を借り返す前に死にました。そのような行為は詐欺同然です。」


「あっ!」

 和も思わず声が出ていた。


 俺も金を貸していたけど返す気なかったのかこの野郎。


「南詩織さんは本日の事故のこともありますがお酒を飲み酔っぱらっては人に迷惑をかけたうえに酔っていない時は開き直って反省が見られないこと。また以前あなたが高校生の時に年下の女の子を誘拐しようとしたからです。」


「はっ!」

 詩織も思わず声を出していた。


 前々から危ないとは思っていたが高校生の時に誘拐しようとしてたのかよ。この腐れロリコンが。


「やばいなお前」

 和は詩織のことを蔑むように言った。


「よって全員地獄送りですがあなた達の暮らしていた世界とは違う世界が魔王によって荒れているため地獄行きのどうなってもいい人間に地獄に行くか異世界で魔王を倒すか選べるようにしているのですよ。魔王を倒した際にはこれまでの罪は帳消しとなり天国へ行けますどうしますか?」


 地獄行きの人間だけを送ったら危険だろ……、でも魔王を討伐したら確実にモテる。


「危ないのは嫌だけど魔王を討伐したら絶対にモテる、だから俺はいく」

 俺は覚悟を決めて言った。


「屑が行くなら俺も行く」

 和も覚悟を決めたようだ。


 なんだこいつホモなのか?同性愛は構わないが俺は違うので止めて頂きたい、転生したら和から逃げよう。


「地獄は嫌だし私も行くわ」

 詩織も覚悟を決めた。


「分かりました言語などは自然と理解できるようになっているのでご安心くださいではご武運を」


 俺達の足元に魔法陣が現れ俺達三人を光で包み眩しくて前が見えなくなった光が消えた時俺達は異世界に来ていた。


 異世界は中世のヨーロッパのような街中まさに異世界。


「へーすごいわねーまさに中世って感じね」


「おい、お前忘れてないぞ」

 俺の発言で詩織の額に多量の汗が流れる。


 こいつこのままいけるかなあ~とか思ってたのか?許せねえ。


「すいませんでした」

 か細い声で言った。


「あーん?今なんて?聞こえなかったんだけどぉー?声小さいよ、君のお胸みた……グホッ」

 俺は言葉を言い切る前に殴られ、体が宙を舞った。


 こいつ俺のこと殺したくせに殴ってきやがって、理不尽だ殴り返したいが力の勝負でこいつに勝てる訳がないから無理だ。いつか絶対復讐してやる。


「屑はバカだな~、詩織は胸だけじゃなくて器まで小さ……ゴハッ」

 和も言い切る前に殴られ体が宙を舞った。


 誰がバカだよ、このバカ!


「屑どうする?置いて行くか?」


「当然だ。人を殺した上に自分だけは助かろうとしてたんだからな」

 俺は冷たくそう言った。


 当然だ、俺達を殺し自分だけ助かろうとしてちょっと悪口言ったら殴ってきた。自己中にも程がある。


「ごめんなさい!なんでもするから許して下さい」

 と、詩織が力強く俺達にしがみついた。


 なかなかの力だな、さすがは剣道八段だ。


「やめろ、お前が悪いんだろ」

 俺と和は詩織を振りほどこうとするが詩織は手を離さない。


「しつこいな」


「ごめんなさいなんでもするから許して私が悪かったです。」


「だー!かー!らー!お前が嘘つかずに素直に答えてたら良かったんだよ」

 和の声が大きくなった。


「だからってこんな可愛い女の子一人異郷の地に置いて行くっていうの?」

 詩織も負けじと大きな声で言った。


 何が可愛い女の子だ、可愛いのは見た目だけで中身は誘拐犯兼殺人犯だろ、とはいえ埒が明かな

い。


「分かった、分かった。連れて行く、連れて行くから静かにしろ」


 何でもするって言うのなら自分から離れたくなるぐらいこき使ってやろう。


「ありがとう~屑~」

 詩織が俺に泣きついた。


 汚ねぇ鼻水着けてくるなよ……。


「何でもするって言ったこと忘れるなよ。」

 俺は念を押した。そして俺の言葉で詩織は離れた。


 まずはこの汚されたズボンを洗わせてやろう。


「さて酒場に情報収集に行くか」


「なんで酒場なんだ?」

 和が俺の顔を見て質問した。


 全くこいつはなってないな……。


「酒場に情報収集なんてゲームじゃ定番だろ」


「まあ確かに。」


 俺達三人は近くの人に酒場の場所を聞いて酒場に向かった。


 三十分ほど歩いて酒場に辿り着いた。酒場の中にハゲで屈強な体つきをしたマスターがいた。


「いらっしゃい何にする?」

 マスターらしき、ムキムキのハゲおじさんは元気な声で迎えてくれた。


 マスターは随分と気さくな人そうだ良かった。


「酒は今度にするよ。聞きたいことがあるんだ」


「何が知りたい?知ってることならなんでも教えてやるよ」

 マスターはカウンターにひじを掛けた。


 おお助かった。大抵こういう時は聞きたければ何か買えって言われる展開だからな。


「ちょっと屑、一杯ぐらい飲まないと失礼よ」


 詩織が嬉しそうに言った。俺は黙れと言わんばかりに詩織を睨んだ。


「すいません」

 詩織は悲しそうに下を向いた。


「冒険者になるにはどうしたらいいんだ?」



「一杯も飲まずにただ質問して答えてもらえると思ってんのかぁ⁉失礼だぞ」

 マスターが不機嫌そうに言った。


「え?でもさっき知ってることならなんでも答えるぞって、言ってただろ」

 和が困惑して言った。


 こうなるとこのマスターは一杯でも飲まないと絶対に教えてくれないだろうな。


「うるせぇな!ここは酒場だ。酒を飲まない人間にサービスする義理はない!」


「ちょっと待ってくれ……。」

 俺は二人を連れて店の外に出た。


「お前ら金持ってるか?」


「持ってない」


「持ってません」


「だよなぁ……。」


 それから少しの間俺達三人は酒をどうしたら買えるか腕を組み考えていた。


 金は無い、金を稼ぐための冒険者になる方法も分からない。詰みじゃん、餓死して地獄行くだけじゃん。地獄に行く前にあのクソ女神を殴ってやろう。


「詩織お前アイドルになれ」

 和が唐突に言った。


 アイドル?誘拐犯兼殺人犯の詩織が?人に夢見せられないだろ。


「なんでよ?」


「お前顔だけは良いからさスーパーアイドルの握手会とかなんとか言ったら金払ってくる人が現れるだろ」

 和が軽口をたたくように言った。


 顔だけは良いこの一言で理解した、こいつは本当に顔だけは良いのだ。


「嫌よ」

 早々に拒否された。


 余程嫌らしい、こうなったら早速脅しますか。


「お前俺たちにでかい借りがあったよな、それにさっき何でもするって言ったよな?」


「えぇー……、分かったわよ。あんたらろくなし死に方しないわよ」


「お酒に頭をやられた女子大生に居眠り運転で轢かれるとか?」


「そうよ!うるさいわね!」


「それでどうするの?いくら私が可愛くても巨乳って書いてあるだけの白Tシャツを着てる人をアイドルと思う人はいないでしょ」

 と、Tシャツの文字の書かれているところを引っ張り強調して言った。


 ここまで触れてこなかったが全くこいつは何というファッションセンスをしているのだろうか……。


「思いつきで言ったもののそれもそうだな。そもそもこの世界にアイドルなんて文化があるかも怪しい」

 と、和は再び腕を組んで考える。


「アイドル文化自体はあるだろ俺ら以外の地獄行きの人間が地球の文化をある程度広めているだろうし。アイドルだと思われるには踊ればいいんじゃないのか?」


「音楽無しで踊るの?」


「確かにしょうがない踊りはなしで行くか」


「それで一体どうするのよ」


「スーパーアイドルの南詩織さんの握手会はこちらから並んでください」

 俺は声を張って言った。すぐ周りに人が群がってきた。


「なんギラですか?」


「ギラ?」


「この国の貨幣単位のことだろ、一万ギラになります。」

 俺は和に説明し接客した。


 この国の物価は分からないがどうだ、値段設定はうまくいったか?


「1万⁉高いなぁ……。」


 はい失敗しましたー。


「おい説得しろ」

 と、俺は詩織に耳打ちで伝えた。


「確かに高いけどー?しおりんのためなら安いでしょ?」


「払います!」


「ありがとねー」


 流石だ、見た目がいいから少し説得するだけで高い金額も払わせることが出来るのか……これもう天職だろ。


 一時間後


「まさか四十七人も来るとわな」


「四十七万ギラも稼いだんだしこれで貸し借りなしよね?」

 俺に確認した。


 命に比べたら絶対安いだろうがこいつからこれ以上を望んでもこいつには無理だろう。


「もちろんだ。」


「うるさいわね。もう握手会はやりたくない握手の前に手に鼻くそつけるようなやつとかいて辛かったのよ」

 詩織は両腕を抱え震えた。


 途中から面倒くさくて何も見てなかったけどそんな奴いたんだ。


「まじか、お前それどうしたの?」

 和が質問した。


「鼻くそとは反対の手と握手したわよ」


「なるほど」


 和のやつ何感心してるんだ?というかそんなことどうでもいいだろ。


「お金も溜ったことだし戻るか」


 俺達は再び酒場に戻った。


「戻ったか兄ちゃんたち何にする?」

 マスターが気さくに声をかけてくれた。


 こんな気さくな人なのに腹黒なんだよな。


「日本酒!」

 詩織はカウンターに座り嬉しそうに注文した。


 この野郎、もう俺達殺したこと忘れてるんじゃないだろうな。


「異世界に日本酒なんてあるわけないだろ」

 和は両手を広げやれやれと首を振って、詩織をバカにした。


「はい日本酒ね」

 と、マスターは日本酒の入った瓶を詩織に渡した。


 和ってこんなにバカだったっけ?アイドル文化があって日本酒が無いわけないのに。


「早速だがマスター冒険者にはどうやったらなれるんだ?」


「そんなことか冒険者ライセンスを買って好きな職業を選べばいいんだ。冒険者ライセンス買ってくか?」


 そんなことっていうなら初めから教えろよ。俺がこの先魔王を討伐して大金持ちとなりハーレムを築いてもこの酒場には絶対来ない。


「3つ頼む、職業は何があるんだ?」


「まいど」

 と、マスターはクレジットカードのような大きさのカードを俺達に手渡した。


「職業は冒険者、魔法使い、僧侶、戦士があってだな。冒険者は魔法と剣術で戦う職業、魔法使いは冒険者が魔法に特化した感じで魔力が成長しやすい、僧侶は周りの人間の回復や強化を得意とするそして魔法使い同様に魔力が成長しやすい、戦士は近接戦を得意としどんな武器でも扱える筋力が成長しやす


い。どれにする?」


「私は人を轢き殺してもいいように僧侶にするわ」


「は?え?」

 俺と和は詩織の発言に戸惑いを隠せなかった。


 こいつ絶対俺達殺したこと悪いなって思ってないだろ、必ず復習してやる。


「俺は面白そうだし魔法使いだな、和はどうする?」


「俺もだ」


「決まりだな。酒と冒険者ライセンスで十万ギラだ。おまけで杖魔法を使う用の三本つけてやるよ」

 と、杖を三本をそれぞれ俺達三人に手渡した。


「ありがとうマスター。後おすすめの宿教えてくれ」


「それならそこの快楽の間がおすすめだよ」


 ラブホ?快楽ってラブホだよな……、まあ行ってみるか。


「サンキューマスター」

 そして俺達は酒場を後にした。


「馬鹿どもが本当は五万ギラなのに倍の額言っても気づかなかったな」

 と、マスターがほくそ笑んだ。


 酒場を後にした俺達は十分ほど歩きマスターに教えてもらった宿快楽の間に着いた。


 宿快楽の間は街の景観に見合わないピンクを基調とした色合いだ。


「宿をご利用される方ですか?一泊一万ギラです。」


「分かりました。」

 と、俺は一万ギラを支払った。


「では階段を上がって頂いて一番手前の部屋となります。」

 受付のお姉さんが案内してくれた。俺達は案内に従い部屋に向かった。


「なんとか宿も見つかってよかったな」

 和がベッドに倒れこんだ。


「そうだな」

 俺もベッドに倒れこんだ。


 全然ラブホじゃなかったー……、ちょっと期待してた自分が恥ずかしい。


「さてそろそろ行くか」

 和はおもむろに起き上がった。


「どこに?」


「魔法使いとなって俺は透明化を習得した。つまり覗きに行くんだよ、クリアー」

 和はゲスい笑いを浮かべた、そして和の姿は見えなくなった。


 詩織を怒らせたらどうなるかこいつだって知っているはずなのに失敗を恐れないなんて和、漢だぜ。


「俺にも頼む」


「任せろ、クリアー」

 俺の姿も見えなくなった。そして俺達は女性用浴場に向かった。


 これから男には入れない男の楽園女湯に入れる。思えばこのためだけに二十年間生きてきた、ついに目的が果たされる。


 俺達は女湯に入った。中には詩織しかおらず詩織は体にタオルを巻きお風呂に入っている。


「ちょうどいい」


「入浴を見て改めて感じるこいつ本当に顔だけだな」


「貧乳だからな」

 馬鹿にしたような和の声は少し大きかった。


「馬鹿お前……」

 俺は急いで和の口を塞いだ。おもむろに詩織が立ち上がったり俺達に殴りかかってきた。和は透明になっている俺達を的確に殴ってきた。


「ぶっ殺すぞ!人の裸勝手に見て文句言ってんじゃないわよ!」


「ぐふ……透明化してるのに何で的確に殴ってこれるんだ?」

 俺は今にも消えそうな声で言った。


「視線が気持ち悪いのよ、このカスども!」

 軽蔑の眼差しで俺達を見下ろした。


「すびばじぇんでじた」


 俺と和の顔は腫れて活舌が悪い。


 転生生活一日目にして人生二度目の死を味わうところだった。もう二度とムキムキペチャパイの詩織さんとは揉めないようにしよう。一日目からこんな感じで魔王討伐出来るのだろうか?

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