~喋る壁~(『夢時代』より)

天川裕司

~喋る壁~(『夢時代』より)

~喋る壁~

 宙(そら)の空壁(かべ)には表情(かお)が映って、俺の言葉は身憶(みおく)を横切り、斬新(あらた)の信仰(めいろ)へ自己(おのれ)を咲かせる幻(ゆめ)の自主(あるじ)へその実(み)を宿らす…。無想の四つ葉が男・女(だんじょ)を識(し)るうち他(ひと)の白壁(かべ)には無重が仕上がり、それまで活き得て躾(しつ)けられ得た男子の片手は外界(そと)の震えに温(ぬく)みを求めて、身寒い明日(あした)を横目に囁く女性(おんな)の母性(はは)へとその身を失(け)した…。

 純白(しろ)い気色を幻(ゆめ)の目下(ふもと)に置き遣る儘にて未知の感覚(いしき)を果命(かめい)に宿せる神秘(ふしぎ)の独気(オーラ)は身重を知り貫(ぬ)き、自然(しぜん)に象る愚行(おろか)の経過は主観(あるじ)に請われて不倖(ふこう)を観て居た。

      *

 僕は、矢張り、壁に喋り掛けて居る。でもその壁は、喋るのだ。

      *

 無用の用事を脳裏(あたま)へ振らせて俺の孤独を貯蓄して生く無応(むおう)の自然(あるじ)を傍観しながら、白亜(しろ)い途切(とぎ)りは〝無応〟の間(ま)に間(ま)に涼風(かぜ)を切るほど列伝(つたえ)を届かせ、自然(あるじ)の許容(なか)から嫌悪を導く孤動(こどう)の羽音(はおと)をつくづく聴いた。胸中(むね)の高鳴(なり)から共鳴(さけび)の程度が自然(あるじ)を越えて、自己(おのれ)の精神(こころ)を真心(こころ)に澄ませるオレンジ色した夕日を気取らせ、無言の許容(うち)から自然(じねん)を吃(ども)らす無言の胸苦(きょうく)は放蕩して逝き、遂には還らぬ街の一灯(あかり)を暗黙(やみ)へ葬り未信(みしん)を感じる。無意(むい)の清閑(しじま)に他(ひと)を宿せる空間(すきま)を知るのは都会の空気(くうき)に勝気を見据える幻(ゆめ)の論理に追随して活き、明日(あす)の果てから暗夜(よる)を照らせる無音の感覚(いしき)は男女(だんじょ)を仕留めて、事始(こと)の辛気を無造(むぞう)に射止める無理の限度(かぎり)は天に遠吠え、旧い形見を両手に据え保(も)つ勇気の過日(かじつ)に有利を観て居た…。

      *

 …喋って来るから、僕は相対(あいたい)するため仕方無く、あれやこれや思考を重ねて、壁の気に入る言葉(ないよう・ふんいき)を無意識の内に選んで、喋って居る。

      *

 無言の寵児に羽二重(ふたえ)が巻かれて〝併鏡(あわせかがみ)〟の無適(むてき)の気色に幻想(ゆめ)の生憶(きおく)が活き活きし始め、明日(あす)の孤独を刹那に牛耳る〝併せ・調子(テンポ)〟の器用の相(あい)では、言葉が通じぬ無様(むよう)の気迫が「試み」から退(の)く未用(みよう)に止められ、〝未信(みしん)〟の信者が神に追従(したが)う拙い寵児(こども)の気色を幻見(ゆめみ)て、〝器用〟を肴に本能(ちから)を寄らせる自然(あるじ)の生気を通感(つうかん)して居た。胸中(むね)の奥義(おく)から二性(にせい)を宿らす俗世(このよ)の昼夜が凡庸(ふつう)に明け暮れ、現世(このよ)の男女に活気が茂れる厚い陽気は基底(そこ)を看破(みやぶ)り、事始(こと)の気色に自己(おのれ)を募らす無意(むい)の本位は自重を蹴破り、昨日司(きのうづか)さの明日(あす)の形成(なり)には「酔い」を醒ませる未完(みじゅく)が発(た)った…。

      *

 …喋っている時、他人がそこに居る事は遠(とお)に分って居るが、頭が呆(ぼう)っとして、その他人を消したくなる衝動に駆られた訳だ。

      *

 文言(ことば)の体裁(かたち)に内実(なかみ)と活気が俺の幻想(ゆめ)から脚力(ちから)を根削(ねこそ)ぎ、明日(あす)の暗黙(やみ)には腕力(ちから)を示せる幻視(ゆめ)の脅威が落転(ころ)がり続けて、出来事(こと)の始めに機嫌を好くする産みの本能(ちから)は魅力を寄り添え、向うから来る独義(ドグマ)の勝手を他(ひと)に会わせず寝室(ねむろ)に帰(き)せた。回帰して生く「眠りの杜」には白体(からだ)が漂い密室から成る幻(ゆめ)の傘下は空気(もぬけ)の諸刃に追随して活き、俺の生憶(きおく)が文句(ことば)を介して陽(よう)を保(も)つのは、未信(みしん)の旋律(しらべ)が八頭(あたま)を擡げる苦労の末(すえ)から見得る形成(かたち)で、他(ひと)の周囲(まわり)で俺に寝そべる無刻(むこく)の深化は万物(なに)へ対すも頑な差(さ)を観た。事始(こと)への生憶(きおく)に堂々巡りの進理(しんり)が誘(さそ)われ「昨日の無刻(むこく)」に散歩が備わる意味の審議は彷徨して活き、隣人(ひと)を相(あい)する加減の限度は誰もに見られず端正(きれい)に失(き)えた。隣人(ひと)を愛する行為の総てが俺の背後を巧く蹴散らせ、居残る人には俺が見得ない盲者(もうじゃ)の禄(ろく)から欺瞞を興(おこ)させ、無性(むしょう)ついでに無頼を気取れる〝風切り坊主〟は無感(むかん)を突き付け、俺の還りに寝室(ねむろ)の盲目(ゆめ)では〝加減〟を識(し)らない奇妙を撓(しな)らせ、物憂い御託に始終を果して徒労の大口(くち)には、俗世(このよ)を配(あやつ)る無心(むしん)の動作が白体(からだ)を拡げて結託して居る。俺の独創(こごと)は明日(あす)の行方を早々按じて安気(やすき)を酔わせる寝室(ねむろ)の雰囲気(ムード)を暗気(あんき)に化けさせ始終を解(ほぐ)し、小言の脅威に未知を想わす無知の心機は身辺(あたり)を見廻し、安気(やすき)に醒ませる未覚(みかく)の真理(しんり)は不断に培う余力を識(し)った…。昨日と今日とで躰へ養う無量の活気は背後(あと)にも将来(さき)にも一体(からだ)を示さず、俺の白紙(こころ)に撓(たわ)る孤独は無心に休まる未来(みらい)を儲けて、白亜(しろ)い子守に未成(みせい)を撓(しな)らず脆弱(よわ)い独歩は雲母を先越(さきご)え、遠くの行方(かなた)へ暫く鈍(にぶ)れる幻想(ゆめ)の音頭を低吟して居た…。不屈の精神(こころ)を概(おお)きな視(め)に据え、朝な夕なに信徒(むれ)を脱(ぬ)け出て俺の孤独へ寄り添う聖者(もの)には、信徒(むれ)の内から微妙に仕上がる微温(ぬる)い常識(かたち)を寄り付けさえせず、独歩に憶えた他(ひと)の気持ちを大きく逃して素人威張りの稀有の瞳(め)をした無刻(むこく)の勇者は俺の孤独をひょいと取り上げ宙(てん)へと翳し、俺の周囲(まわり)へ一切寄らない常識張(かたちば)りした現人(やから)が活き着く。無言の早朝(あさ)には動かぬ自体(からだ)が白壁(かべ)を眼(め)にして揚々表れ、事始(ことのはじめ)に他(ひと)を気取れる滑稽(おかし)な目をした無法の信徒は「黄泉」の流行(ながれ)に無関を呈した丈夫な希薄を悠々携え、人煙(けむり)に巻かれた小指の傷には無知の生憶(きおく)が言語(ことば)を気忘(きわす)れ、幻(ゆめ)の進化に醒めを目指せる無機の疾走(はしり)は勇気を強めて無快(むかい)を発(たっ)する…。怜悧(つめ)たい眼(め)をした白衣(はくい)の描写に浮かべた模写には幻(ゆめ)の温度が充々(じゅうじゅう)醒め行く無悔(むかい)の仕種が競歩を発して、感覚(いしき)を保(も)たない現行(いま)を束ねた未刻(みこく)の分子は、俺の眼(め)を保(も)ち視界を遮る〝限(ぎり)の遊離(ゆうり)〟を愉しみ出した…。―――、現代人(ひと)の好意に無頼を感じて未憶(みおく)に興じる事始(こと)の概句(おおく)を未知の行方が詩吟に減じる破傷の限度(かぎり)に治療を設けて、〝併せ鏡〟の妥協に欲する無味の両腕(かいな)の海原(うなばら)等には、早朝(あさ)の空気(しとね)に空想(おもい)を過らす無為の辛気(しんき)に実名さえ保(も)つ…。事始(こと)の有無から雌雄に活(かっ)する未限(みげん)の進理(しんり)は、事始(こと)を追うのに理元(りげん)を養う行事(こと)の進化に憂いを想わせ、明日(あす)の目的(さかな)に心機に行(ぎょう)をさせ得る無意(むい)の論理は俗世(このよ)の露悪(ろあく)に中途を外され、無味(あじ)の無いのを冒頭(あたま)に逆行(かえ)せる「黄泉」への自慰から真心を返され、現代人(ひと)の温(ぬく)みが信徒を自滅(ほろ)ぼす未遂の冒(おか)しに虚無を観たのは、俗世(このよ)の規矩から肉体(からだ)を射止める無意(むい)の屍(かばね)の肉欲でもある。

 不明の真理に論理を設けて幻(ゆめ)への淡路を揚々波(わた)れる自己(おのれ)の調子は元理(げんり)を培い、紺(あお)い盲理(もうり)が心身(からだ)を鈍(くも)らす無適(むてき)の病理は愚鈍を着せ替え、幻夢(ゆめ)の〝白亜(はくあ)〟が実利を透せる無名の「王者」を監督する内、一切合切拙い信理(しんり)は暗黙(やみ)の行方(かなた)へ葬られて居る…。一男(おとこ)の盲唖(もうあ)に肉欲が発(た)ち、一女(おんな)の信義(しんぎ)に肉体(からだ)が立つうち駆動の如くに自然(じねん)の所以(ありか)は暗黙(やみ)を透して悪態さえ吐き、暗夜(よる)の小路(みち)から自体(からだ)を彷徨(まよ)わす無双の虚弱は我(われ)に関せず、独創(こごと)の連呼は他(ひと)に対する連慕(れんぼ)に似せ生く自重を着飾り、明日(あす)の夜明けに俗世(このよ)を葬る無為の理性(はどめ)に懼れを識(し)った。偽善者達から淡白(しろ)く挙がれる孤独の相(そう)には、俗世(このよ)に蔓延る「信徒」の概(おお)くが自体(からだ)を通して欠伸して生く熱心(こころ)の丈夫を欲して居ながら、俗世(このよ)の概(おお)くに興味を呈(しめ)せる餓鬼の食盲(しょくし)は「海原(うみ)」を越え活き気力(ちから)を揮わせ、寝言の如くに調子を発狂(くる)わす身塵(みじん)の態(てい)した気丈の様子は、俺の背後(うしろ)で常に活き生く無情の徹尾を更に幻見(ゆめみ)た…。両親(おや)の目下(ふもと)で〝回帰〟を失(な)くせる無遊(むゆう)の弄(あそ)びに陥る我(われ)には常に努める五月蠅(あわ)い輪舞曲(ロンド)がこの地に落ち着く理想を訴え、明日(あす)の小路(みち)へと臨機に先立つ無用の自主(あるじ)の孤独の「巣(そう)」には、無闇に消せ得ぬ信理(しんり)の私運(はこび)が重層(じゅうそう)ながらに矛盾を貫き、明日(あす)と現行(いま)との無用の彼方へ未順(みじゅん)を採り上げ追走(ついそう)して居た…。

 オレの生憶(きおく)が現行(ここ)まで来るのに信途(しんと)を得ながら、厚い嫉みを器用に切り出す「未刻(みこく)の分子」を「文士」と名付けて、自己(おのれ)の総身に諦観から成る厚い孤独は疾走(はしり)を終え活き、「未知への孤独」と「無想の憂慮」を事始(こと)に保(も)たせて傍観して居る。幻視(ゆめ)の概句(おおく)を俯瞰して行く事始(こと)の概(おお)くは末路を従え、明日(あす)に成り生く気性の概(おお)くは幻視(ゆめ)に翻(かえ)され主観(あるじ)を眼(め)にして、幻夢(ゆめ)の身辺(あたり)をするする徘徊(まよ)える俺の実体(からだ)は信徒(むれ)を厭(きら)って、「味気無いのが吟味(あじ)である」など不要の一汗(しずく)は首(こうべ)を流離い、〝併せ鏡〟の無精の一滴(しずく)は暗黙(やみ)を先駆け人間(ひと)を愛せる無名を心理を用途に携え、未来(みく)に尽(つ)きせぬ幻(ゆめ)の概(おお)くを白壁(かべ)に活かして保(たも)って在った。…

      *

 …その衝動は発作的にやって来た。望んでも無いのに、極自然に歩いて来た様(よう)だ。僕はその「衝動(いきもの)」に捕まり、他(ほか)の人と同じ様(よう)に又、歩き始めた。歩調を合せようとして、一度、失敗して居る。

      *

 無幻(むげん)の要局(かなめ)を無残に見知れる奮起に従い俺の「従順(すなお)」は〝向き〟に尽きせぬ幻視(ゆめ)の廊下を往復して在り、無言の空間(すきま)に理知を直せる無味の昇華は限界(かぎり)を観た儘、泡(あぶく)の勇気を都度に肥(こ)わせる無法の倫理は突(とつ)さえ識(し)れずに〝行方を晦ます丸い銀河〟を無応(むおう)に対せる余力(ちから)と決めた…。自己(おのれ)の倫理を常に流行(はや)らす「無法」に培う事始(こと)の〝銀河〟は、俺の身体(からだ)へ終(つい)ぞ還れぬ〝他(ひと)の瞳(め)をした紺(あお)い常盤〟に揚々幻見(ゆめみ)る丸味(まるみ)を帯び行く女体(にょたい)を二重(だぶ)らせ、現代人(ひと)の腕力(ちから)に脚力(ちから)が及ばぬ未来(みく)の眼(め)をした無想を吐いては、〝併せ鏡〟に無言を読み取る人間(ひと)の文言(ことば)の温味(あたたかみ)を識(し)る。生(せい)を活き貫(ぬ)く言葉(ことは)の記憶を頼りにしたまま自己(おのれ)の人陰(かげ)から無頼を取り持つ幻想(ゆめ)への清閑(しじま)は魅力に溢れて、〝天馬〟が織り成す宙(てん)と地からの「歩幅」を問う内、固陋に這い得る孤独の手数(かず)には人間(ひと)の温味(ぬくみ)がこそこそ剥げた。どれだけ飲んでも生気を呑めない無行(むぎょう)に片付く清閑(しじま)の上には〝併せ鏡〟の身欲(よく)への進歩が涼風(かぜ)を切りつつ空(くう)を切りつつ、無刻(むこく)に合せて審議を疑う児(こども)の視(め)を見た〝鍛冶屋〟が現れ、孤独の水面(みなも)を宙(ちゅう)へ寄らせる孤踏(ことう)の主宴(うたげ)は寵(ちょう)を識(し)らねど、図らずも成る幻(ゆめ)の文言(ことば)に自己(おのれ)の孤独を追従(ついしょう)させ得た。白体(からだ)の終着地(アジト)が寝室(ねむろ)に足り得る未刻(みこく)の小口(くち)には悪鬼が野晒(のさば)り、自己(おのれ)の躰に厚差(あつさ)を感じる孤独の断片(かけら)は宙(ちゅう)へ跳び活き、絶望から成る無刻(むこく)の像には純白(しろ)い希薄が横行して生き、明日(あす)の身許へ棚引く幻視(ゆめ)には孤独を想わす「何か」が在った。現代人(ひと)の記憶に言葉が廃れて宙(ちゅう)が降り立ち、無言と無音の自然(あるじ)が呈せる熱気の空間(すきま)は、俗世(このよ)の万物(もの)から歓迎され得る身欲(よく)の生気が漲り溢れて、経過(とき)の流行(ながれ)に身塵(みじん)を感じる事始(こと)の緑(ろく)から哀れを乞い出し、現代人(ひと)の陽気を生気に留(と)め得ぬ未知の身憶(みおく)は遊離して活き、現世(このよ)を射止める五感の主観(あるじ)は信徒(むれ)を外れて〝我先に…〟と寝た。白亜(しろ)い躰は心中(こころ)を混ぜ生く斬新(あらた)な未亡を感じて居ながら、明日(あす)の〝廓〟に身重(みおも)を預ける二手(ふたて)の哀れを無重に観て採り、自己(おのれ)の一身(からだ)の無頼を感じて神の恵みをその眼(め)に承け得る「現代人(ひと)を乖離(はな)れた固(たし)かな信義(しんぎ)」を、孤独の内(なか)にてしっかり保(も)ちつつ現世(このよ)の一路(いちろ)を波(わた)って行った。空(もぬけ)の終着地(アジト)は俺の躰をするりと抜け去り「孤独を意図する惨い殺(あや)め」を殊に相(あい)して〝無頼〟を感じ、明日(あす)の温味(ぬくみ)に意気を相(あい)する無為の屍(かばね)に衰理(すいり)を観たまま事始(こと)の哀れを逆手(さかて)に採り得る未刻(みこく)の〝長寿〟に相対して居た…。

      *

 …僕の後頭部は、僕が他人の前へ行ったり、緊張すると、望んでも無いのに、まるで暗示に掛けられたように呆(ぼう)っとして来て、くらくら眩暈を僕に与えて、僕を皆の目前(まえ)で失神・卒倒させようと企んで居る。

      *

 白壁(かべ)の表面(おもて)が俺に輝き俺の背後(うしろ)に人間(ひと)の嘲笑(わらい)が木霊す頃には、未知の終着地(アジト)が仄(ぼ)んやり掲げる孤高の夢路が大きく仕上がり、明日(あす)の孤独を端正(きれい)に映せる幻想(ゆめ)の弾みが美化され続けた。速い景色に紋様(もよう)を浮かべる人物(もの)の集落地(アジト)は荘厳ながらに神秘が奏でる無様(むよう)の終着地(アジト)は古都に咲き得る大樹を湿らせ、明日(あす)への独創(こごと)を自分に繋げる未来(みらい)の景色は疎らに失(き)え去り、昨日(きのう)の集落地(アジト)にほっそり割き得る未用(みよう)の終着地(アジト)を暗い空間(すきま)へ這わせて行った。白亜(はくあ)の人煙(けむり)が未踏(みとう)に佇む哀謝(あいしゃ)を窺い昨日の自己(おのれ)の体裁(かたち)を尋ねる魅了の旧巣(ふるす)を闊歩したなら、忘月忘日(ぼうげつぼうにち)、君主の盛(さか)りが俗世(このよ)に名高い人根(ひとね)の呼笛(あいず)を誠に呼び合い、古い独創(こごと)に連呼して生く日用(ひよう)の自活(かて)には他(ひと)が気取らぬ不審の主観(あるじ)が幻(まぼろし)など見た。現代人(ひと)の孤独が自由に生け捕る不要の諸刃は事始(こと)を呼び寄せ拙い間延びを紫陽(しよう)に突き出す一人(ひと)の独我(どくが)を噛んだからには、俺の寝言は未遂に片付く行為を読み取り、詠み取る果(さ)きから自然(あるじ)が覗ける未活(みかつ)の一途(いっと)を希望に保(も)った。俺の心身(からだ)を自在に取り巻く「不要」に徹する一人(ひとり)の清閑(しじま)は、明日(あす)への輪舞曲(ロンド)に自信を絡める〝浪速〟の文句(もんく)の気性を呼び付け、未来(さき)を脚色取(いろど)る連呼の春日(かすが)に自己(おのれ)の野望をしっとり置き去り、昨日まで観た人間(ひと)の〝連呼〟を「自由」に滅する脚力(いろ)の中央(さなか)に連想させた。俺の周囲(まわり)で精神(こころ)が蠢く一人(ひと)の臭気が手合いを見付けて一女(おんな)の肉体(からだ)に悪魔を見付ける事始(こと)の終止を微かに識(し)り貫(ぬ)き、〝併せ鏡〟で現世(このよ)を見て取る終止の哀れは凡庸(ふつう)を呼び込み、昨日の清閑(しじま)に自己(おのれ)を翻(かえ)せる幻想(ゆめ)の概句(おおく)の冷めた文言(ことば)は、漆黒(くろ)い側(そば)から脚色(いろ)を脱する無効の集成(シグマ)に陶酔して居た。白亜(しろ)い人煙(けむり)に当面渦巻く〝試み〟から成る無謀の調子は、幻想(ゆめ)の過程(さなか)を静かに独歩(ある)ける終(つい)の競歩に促進して活き、独義(ドグマ)の身重がその場を去り生く他(ひと)の主観(あるじ)が自滅する分、矢庭に掲げた生(せい)への勇気は孤独を蹴散らせ永久(とわ)へと失(き)えた。純白(しろ)い詩(うた)には自己(おのれ)の背後(うしろ)を上手(じょうず)に消し生く無想の八頭(おろち)が段々仕上がり、暗黙(やみ)の最中(さなか)に目立って気付ける夢想(ゆめ)の還りはどんどん遠退き、現代人(ひと)の生気に運好(うんよ)く仕上がる無機の活気は保守の身に立ち延命(いのち)を蹴散らし、明日(あす)の生(せい)への小路(みち)の上では虚無に巻かれた突飛が在った。漂白(しろ)い限度(かぎり)が煩悩(なやみ)を鈍(くも)らす未完(みじゅく)の独気(オーラ)を通感(つうかん)するのは暗黙(やみ)の間(あいだ)の自己(おのれ)を束ねる私闘の独気(オーラ)への安定から観て、幾つも幾つも曲(きょく)を脱する空気(しとね)伝いの柔軟でもある。律儀の瞳(め)をした無意(むい)の目的(さかな)は嗣業に在れども、永い春には自己(おのれ)を鈍(くも)らす生気を意図した脆味(よわみ)の身が在り、誰にも何にも傾(かしづ)かないまま器用に独歩(ある)ける幻想(ゆめ)の快無(オルガ)は、両脚(あし)を肴(さなか)に両手を延ばせる幻夢(ゆめ)の逆行(もどり)に通感して居た。純白(しろ)い稀有には自我(おのれ)を取り巻く純情(こころ)が成り立ち、荘厳足るまま幻夢(ゆめ)の自滅(ほろび)を縫合して生く盛(さか)りの両腕(かいな)を俯瞰しながら、稀有の気色に転倒(まろび)を観て居る俺の精神(こころ)の自活が在った。奇妙な瞳(め)をした紅(あか)い夕陽は日々を振り見て自体(おのれ)の闊歩を自由に呈する夜半(よわ)の孤独を俺に伝えて、俺の清閑(しじま)にぽつんと呼吸(いき)する延命(いのち)の独我(どくが)は真白差(しろさ)を気遣い、明日(あす)の懐(こころ)へ自信を観て生く自己(おのれ)の強靭差(つよさ)を通感して居る…

      *

 この事は、二〇一四年の一月九日から始まった。僕が自分の書いた文章を、ある程度集まった(予め知り得た)人数の前にて発表して居る時に突如現れ、「ここで、皆の目前(まえ)で横向きにでも倒れたら如何(どう)なるやろうな?」と言う疑問と共に僕を襲って来た。僕は、発表中だから口と口調と流れを止(と)める事は出来ず、また心を休める事も出来ずに発表し続け、冷汗、熱汗(ねっかん)、激しい(一瞬ずつの極度の)緊張を味わう事と成りながらも、何とか机と椅子とに倒れそうになる都度しがみ付いて堪え、皆の前で倒れないようにと強く努めた。

      *

 発汗して行く無行(むぎょう)の心身(からだ)の理性(りせい)を携え、俺の精神(こころ)は現代人(ひと)の気にした極度の哀れを乞うて居ながら、未順(みじゅん)に結べる五月蠅(あわ)い体温(おんど)は気色を細めて、自分の未完(みじゅく)に発破を掛け得る矮小(ちいさ)な緊張(はり)への逃避を観て居た…。孤独の呼笛(あいず)が一人(ひと)の脳裏に自活を求めて追従(ついしょう)して行く物見豊かな帰順の概(おお)くが、事始(こと)の止(と)まりを未然に防げる〝併せ鏡〟の精神(こころ)の視(め)に在り、矛盾の仕種が揚々束ねる「統率され生く無刻の集成(シグマ)」は、俺の幻視(ゆめ)から調子(リズム)を損なう〝向き〟の進化を悪化させ得た。揚々静まる無色の気色の一通(とおり)の外れで女性(おんな)の仕種を巧く整(たた)める無能の老気(ろうき)が俺を手招き、白亜(はくあ)の未知から〝甘え〟を畳める無頼の騎士には臆病(やまい)が先立ち、幻(ゆめ)の限界(かぎり)に魅惑を損なう〝向き〟を呈した俺の心身(からだ)は、明日(あす)の孤独を自由に把(つか)める一女(おんな)の両腕(かいな)を安価で買った。電子の一灯(あかり)が自己(おのれ)の心身(からだ)に朗(あか)るくない頃、無機の清閑(しじま)に一向寄り添う現代人(ひと)の能力(ちから)は箍を丸めて、俺の孤独に憂いを凌げる一新(あらた)な一灯(あかり)を放擲した儘、事始(こと)に纏わる始終を介せる豊穣(ゆたか)な活力(ちから)を噴散(ふんさん)していた…。

 文言(ことば)の集成(シグマ)に凡庸(ふつう)を見て取り白亜(しろ)い大器(うつわ)に大目を飾れる旧い仕種を自分に知る頃、無垢の孤独が俺を苛む幻(ゆめ)の清閑(しじま)は暗黙(やみ)に仕上がり、無表(むひょう)を報せる五月蠅(あわ)い行為は幻夢(ゆめ)の一通(とおり)に放(ほう)って置かれた。俺の心情(こころ)に微かな清閑(しじま)を包(くる)んで置くころ幻(ゆめ)の一通(とおり)は矢庭に騒げる滑稽(おかし)な承知を俺に従え、無論に花咲く独創(こごと)の行方は白衣(はくい)の側(そば)から進展して活き、事始(こと)の生憶(きおく)に同心(どうしん)して生く延命(いのち)の調子は闊達さえ識(し)り、淡い文句(ことば)に奇妙を添え行く脆差(もろさ)の純度を俺に築けた。暗黙(やみ)の清閑(しじま)に呼吸を潜(ひそ)める無刻(むこく)の住人(ひと)には現行(いま)を扱う無想(むそう)から成る一人(ひと)の活力(ちから)が横行され活き、現代人(ひと)の景色を傍観するうち暗夜(あんや)の理性(はどめ)が事始(こと)を培い、俺の文言(ことば)を白紙(こころ)に留(と)め置く貴重な暴露は暗夜(よる)の清閑(しじま)へ呑まれ続けた。一人(ひと)の生果が現行(いま)に培い、未完(みじゅく)を灯せる無用の空間(すきま)は幻想(ゆめ)の生気に呼吸を重(あわ)せる輪舞曲(ロンド)の空気(もぬけ)を相(あい)する儘にて、未重(みじゅう)の進化を通せる夜目(よめ)には俺の一灯(あかり)が闊達さえ識(し)り、無理を損ない利己を透せる純白(しろ)い淡さを輪舞曲(ロンド)へ推した。淡白(しろ)い気味には現代人(ひと)の活力(ちから)に噂を気取らす紋様(もよう)を報せぬ奇妙が仕上がり、俺の独創(こごと)は微妙の生気を泡(あぶく)へ落せる思惟の肴(さかな)へ変容させ終え、手軽(かる)い用事に身憶(みおく)を蹴散らす漆黒(くろ)い〝東(あずま)〟に八倒(ばっとう)させ得た。漆黒(くろ)い清閑(しじま)は暗黙(やみ)の許容(うち)より白身(しろみ)を掲げて俺の活歩(かつほ)が明日(あす)を見出す幻想(ゆめ)の一通(とおり)へ伸展し始め、事始(こと)の翻(かえ)りを凡庸(ふつう)に観るうち自己(おのれ)の心身(からだ)を転倒させ活き、そのとき周囲(まわり)に乱(さわ)げる盲者等(ものら)を一掃して行く励みを保(も)たされ、幻想(ゆめ)の還りへ気性を落ち着け薄暗(くら)い身辺(あたり)を彷徨い出すのは、俺の活気を遂に保(も)たない暗黙(やみ)の文言(ことば)の乱算(らんさん)でも在る。自己(おのれ)の〝果実〟を幻想(ゆめ)に保(も)たせて浮遊するうち幻(ゆめ)の王手は幻理(げんり)を識(し)り得ぬ昔勝気(むかしかちき)の肉体さえ識(し)り、自体(おのれ)の進化の成れの果てには幻視(ゆめ)に纏わる活気を養い、幻(ゆめ)の前夜(よる)へと寿命(いのち)を配せる輪舞曲(ロンド)の一灯(あかり)を充分識(し)った。漆黒味(くろみ)の吟味(あじ)から明日(あす)へ迷える魅惑が活き着け脆(よわ)い風味を俺へ匂わす透明色した一女(おんな)が咲き生き、漆黒(くろ)い目的(さかな)に未完(みじゅく)を報せる流行りの幻(ゆめ)からその実(み)を捥ぎ取り、一味(いちみ)の臭味に女体(からだ)を任せる美味の身元をはっきり発(た)たせた。俺の孤独は一女(おんな)の孤独へすんなり透り、女性(おんな)の体裁(かたち)に内実(なかみ)を幻見(ゆめみ)る概(おお)きな茂味(しげみ)を微風(かぜ)から頂き、俗世(このよ)の人物(もの)から何も期(き)せない無謀の主観(あるじ)を沢山仕上げて、成り立つ外観(そとみ)は現代人(ひと)の醜い煩悩 (なやみ)を侍らす本能(ほんのう)だった。

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 如何仕様(どうしよう)も無かった。自分で辞めようとして辞められないのだ。これはまるで、自律神経が心臓を動かす如くに、呼吸をさせる如くに、発情させるが如くに自然に成るものとして在り、意識下の自力に依っては致し方も無い苦しさに相当するのである。結局、発表が終る迄に合計三回は確実に卒倒し掛けて居た。その事は、しっかりと憶えて居る。

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 過呼吸から来る酸素過多にて俺の心身(からだ)は身辺(あたり)が見えない空想(おもい)に陥り、箱詰めされ行く無力の自体(からだ)は「俺」に気付かせ、幻(ゆめ)の彷徨(まよい)にその実(み)を沈める一視(ひとみ)の奥まで煌びやかにした。煌びやかに成る一視(ひとみ)の身辺(あたり)は一女(おんな)を見忘れ自分の身辺(あたり)に陽気を培う事始(こと)の概(おお)くは未順(みじゅん)を持ち寄り、女性(おんな)と男性(おとこ)と性差の哀れを宙(ちゅう)に連れ添い無難に後追い、幻(ゆめ)への輪舞曲(ロンド)が結束して生く誤解の信理(しんり)は「黄泉」の寝床へ廻転(かいてん)して居た。初めから無い無刻(むこく)の自主(あるじ)へ還って生くのは、新芽を付けない未知の信理(しんり)へ追従(ついしょう)し始め、暗黙(やみ)の許容(なか)へと暗黙(やみ)を保(も)たない孤踏(ことう)の行為に類似して居り、無知を信じて孤踏(ことう)を凌げる微妙の信理(しんり)は大空(そら)へ蹴上がり、幻想(ゆめ)の原理へ身憶(みおく)を費やす己義(こぎ)を象る陽気な幻(ゆめ)には、明日(あす)の為替をズボンに付け得る「学(がく)」の仕上げに促進して居た…。俺の態度は学士を気取れる不断の空間(すきま)に追随した儘〝併せ鏡〟の無純(むじゅん)の所以(ありか)を確認したまま生気を灯され、「発表終り」の一灯(あかり)を囀る揚々豊な無純の檻には、人間(ひと)の空間(すきま)が未知へ消え生く独裁(ひとりばやし)を確認して居る。

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 発表は、自分用のトーキング・ペーパーを予め作って用意して在り、それを字の通りにそのまま発表が完成するまで読めば事は完遂するように緻密に練り上げ、「~ですから、~まぁなんですね」等の日常で良く他人が遣う言い回し等にも良く配慮して認(したた)めて在り、以前の大学入試の面接時に経験したような「言うべき事が見付からないで、頭が何も考えられない程真っ白になる」ような人前・緊張に依る恐怖は味わわない筈で在ったのに、そのとき以上の「倒れる」という事態を兼ね揃えた恐怖に俺は襲われた訳であり、故に、余計に解決の付かない恐怖と不安がその瞬間(とき)・その後に付き纏って行った。

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 孤独に乗じる不問の許容(うち)でも幻想(ゆめ)の未完(みじゅく)に母性(はは)を観るのは俺の孤独の両刃(もろは)の煩悩(なやみ)に無戒(むかい)を推(すす)めて自然(しぜん)に消えた。幻(ゆめ)の一角(かど)から不適の諸刃(やいば)が自体(おのれ)の娯楽を好く好く仕留めて、俺の白体(からだ)の活力(ちから)の自主(あるじ)を悶々豊穣(ゆたか)な私算(しさん)に鈍(くも)らせ、千歳(ちとせ)を配(あやつ)る稀有の万象(もの)には幻夢(ゆめ)を横切る空気(しとね)を携え、白光((ひかり)の暗間(やみま)に気楼(きろう)を弛(たわ)める無為の跡(あと)には安い奮起が無稽に在った。自己(おのれ)の気迫が希薄(うす)い物部に録(ろく)を詠むうち不適の集地(アジト)は自滅へ寄りつつ、自然(あるじ)の背中を滔々追い付く旧来(むかし)に満ち行く波紋を結いつつ、文句(ことば)限りの幻(ゆめ)の集地(アジト)は密に束ねた経過(とき)を呼び止め無痛に拡がる経過(とき)の余韻(なごり)を未来(みく)へ足らせる空気(しとね)に寄せては、俺の孤独を静めて行った。男性(おとこ)と一女(おんな)の化けの〝廊下〟を通過するまま幻想(ゆめ)の外輪(かたち)を猛々(もうもう)猛らす無刻の空虚は輪舞曲(ロンド)を識(し)りつつ、他(ひと)の評価が勝手に飛び交う無意味の〝挽歌〟を詠い続けて、幾つに成っても他(ひと)を識(し)らない現代人(ひと)の児(こども)は理屈だけ追い、雨の降(ふ)る日に延命(いのち)を乾かす無難の遠慮を黙々賭した。俺の白紙(こころ)は無体に骨打ち純水(みず)の滴る宙(そら)の間(あいだ)に人間(ひと)を呼び込む柔い「明日(あした)」が〝器用〟を訪ねて道理を立てたが、未然の目前(まえ)から当分動かぬ低い〝奈落〟を上々養い、一女(おんな)の気色を矢庭に留(と)めない未知の音頭に従いながらも孤独に意を打つ無刻の労苦は自体(おのれ)の深意(しんい)に彷徨い続けて、一男(おとこ)と一女(おんな)の孤踏(ことう)の辛苦を伽藍に観ながら白雲(くも)を呼び込む白紙の演技は、無謀の幻(ゆめ)にて蟻を誘(さそ)える甘い一汗(しずく)を滴り尽せた。純白(しろ)い荒野(こうや)を流離いながらに無知の極意を私闘に遣るのは〝自慰〟を忘れて〝意味〟を費やす無機の温度に這う体裁(かたち)さえ採り、明日(あす)の孤独を自慰に呼び込む空気(もぬけ)の体力(ちから)の自慢を得るのは、未刻(みこく)の暴嵐(あらし)に幻(ゆめ)を奪(と)られた未知の自然(あるじ)にそのまま足りた。苦界に降(お)り立つ金(きん)の独裁(ドグマ)に幻視(ゆめ)の翼が透り過ぎる頃、矛盾の手許に仕上がる苦力(ちから)は〝御殿〟の駆逐を果てに臨めて、遠い敷地に一女(おんな)が寝そべる浮遊の水面(みなも)に表情(かお)を突き付け浮くのは、これまで独歩(ある)いて一度も見得ず女性(おんな)の活気の生気に在った。女性(おんな)の無体(からだ)がつくづく温もり俺の暗黙(やみ)へとその芽を這わせる無遊(むゆう)の論岐(ろんき)に幸(こう)を差す頃、無垢の情緒が無為に名高い幻想(ゆめ)の蜃気に一通(とおり)を頼らせ、幻(ゆめ)の真理(しんり)を幸(こう)へ臭わす不屈の正義を「明日(あす)」に観たのは、孤高に活き得る論議の目下(ふもと)の不意(ふい)の身許を揚々安(やす)めた塒であった…。幻(ゆめ)の身許が経過(とき)を晒して前方(まえ)へ進むころ俺の背後は一女(おんな)の安差(やすさ)が一通(とおり)を跨げる景色を見て取り、〝一にも二にも〟と、幻想(ゆめ)の謳歌を鼻に唄うのは暗黙(やみ)に奏でる音頭でもあり、純白(しろ)い大器(うつわ)に幻(ゆめ)を空転(ころ)がし無屈(むくつ)に捧げる信仰(めいろ)の華には、孤高の身憶(みおく)が充分活き尽(き)る白亜(しろ)い生気が乱れて通る…。漂白(しろ)い狼煙(けむり)に〝白体(からだ)を透せる幻想(ゆめ)の眼(まなこ)〟は両掌(りょうて)を差し出し無言の内にて感覚(いしき)を介せる余計の遊離を律儀に仰ぎ見、事始(はじめ)の緒(お)に発(た)つ自由の擦(ず)れにて未刻(みこく)を持つのは、俺への神秘(ふしぎ)が語句(ことば)を顧み幻(ゆめ)の後光(ひかり)に幻惑するのに美味を識(し)り得た―――

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 ――――「以前よりも酷いじゃないか」から「以前とは違った病症なのかも知れない」と思うに至り、それから俺の恐怖は時と場合に依って、次第に膨らむように継続して行く事に成った。

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 小高い丘には頭脳の断片(かけら)が俺に向かって、とても膨(おお)きな火焼(ぼや)きを積み立て過ぎては涼風(かぜ)にも紛れて、明日(あす)の行方を神秘(ふしぎ)に捜せる脚力(ちから)の限度を自主(あるじ)に見せ得た。無形(かたち)の解(ほつ)れを閻魔に観(み)せ得る私欲(よく)の過程(さなか)に〝詩吟(うた)〟を唄えば幻想(ゆめ)と現(うつつ)の真実(リアル)の開(ひら)きは純白(しろ)い砂塵(こな)から人形(かたち)を取り添え、漂白(しろ)い大器(うつわ)に人器(じんき)を見定(さだ)める浮世の様子をその掌(て)に込め生く…。〝無視〟を続ける自然(あるじ)の気色が俺の文言(ことば)を素通りする頃、時期を失くせる無遊(むゆう)の小言が孤独に長じて限度を見限り、自分の暗黙(やみ)へと静気(せいき)を求める幻夢(ゆめ)の論議を続けて行った。無想の火の手を程好く牛耳る俺の白紙(こころ)の露店の審議は、見積もる手立てを自然(あるじ)へ与(あず)ける夢想(ゆめ)の論理を済(な)し崩しにして、惨い過程(さなか)を経過(とき)に二重(かさ)ねる明日(あす)の形成(かたち)に純心(こころ)を観る儘、オレンジ色した無活(むかつ)の空気(くうき)は未知に蔓延る空気(もぬけ)を相(あい)して、昨夜(よる)の私運(はこび)を解体するうち純白(しろ)い曇天(そら)の鈍(くも)りを器用に観るのに幻想(ゆめ)の逆行(もどり)が束の間寄り着く無業を識(し)る儘、激しく翻(かえ)れる〝浮世の旅路〟は俺の人形(すがた)を揚々見せ得た。女性(おんな)の文言(ことば)が〝信用成らず〟の空気(くうき)へ解(と)け入(い)り鷲掴みにする一男(おとこ)の精神(こころ)を所々で芽吹かせながらも、女体(からだ)が欲しがる突起を想わす無刻の愛露(エロス)は、正義を求めず目醒めを蹴散らす一女(おんな)の勝気を悦びともした。純白(しろ)い〝日(ひ)の粉(こ)〟の良く良く羽ばたく未憶(みおく)の猛気(もうき)は、鬱の木霊に交響(ひびき)を併せる幻夢(ゆめ)の逆上(もどり)を精神(こころ)に据え観て、白紙(はくし)の流行(ながれ)に欺瞞を蹴散らす無刻の調子(リズム)の馬鹿な言葉は、俺と伴(とも)との滑稽(おかし)な遊戯の不変の衝動(うごき)に揺蕩(ゆらぎ)を識(し)った。〝日々〟の囃しが労苦に紛れて俺の心身(からだ)を随分押す頃、未完(みじゅく)に嗄れ生く児(こども)の一声(こえ)には儚い人形(かたち)の老気(ろうき)すら見得、未完(みじゅく)の目下(ふもと)へ隠し続ける犯罪(つみ)の道理の余震(あまり)を識(し)るのは、未活(みかつ)の〝勇気〟に終始片付く「明日(あす)」の行方の清閑(しじま)に在った。俺の目下(もと)から過去の見得ない無頼の網羅が宙(ちゅう)へ蹴上がり、人形(かたち)の光沢(ひかり)に〝意味〟を信じる無意(むい)の寝言を陽気に切り付け、人間(ひと)の常識(かたち)に合切合わない無応(むおう)の変化を自然(あるじ)に識(し)る頃、現代人(ひと)の記憶は魂(たま)を牛耳る無憶(むおく)の進化を自主(あるじ)に見て取り、明日(あす)の孤独に魔法を気取れる旧来独白(むかしがたり)の袂の合せは、人間(ひと)の生気に活擦(かっさつ)して行く自己(おのれ)の一連(ドラマ)を幻想して居た。〝幻想する〟のは独義(ドグマ)の集地(アジト)が可笑しく吟味(あじ)わう見様見真似の独白にも在り、未重(みじゅう)の獣が化身を束ねる自然(あらし)の孤独を宙(そら)に詠み取り、専横(メジャー)に成り尽(き)る幻想(ゆめ)の八頭(おろち)に司業(しぎょう)の主(あるじ)を引き寄せ始める、利己に煌(かがや)く無己(むこ)の自主(あるじ)を、切なく止(と)まれる小宙(そら)の中央(まなか)に良く良く弛(たわ)めて疾走(はし)って行った。

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 それからと言うもの、ゼミナールでの発表時にそう成った事がおそらくきっかけとして在り、その発表時に似た光景に出くわすと、まるで自分がした緊張(味わった恐怖)迄の経過を学習した経過を踏襲するように自分の状態をその「発表時」の状態へと連れて行く事に努め始めてしまって、とにかく、人が大勢居る場所では先ずその「踏襲」を心掛けるように成った。これも発点(はってん)は恐らく無意識に在る。あの一月九日以来、俺は、大抵の大学の講義時には「気を許せば卒倒する程の緊張と恐怖感」を覚え、それはこれを記(き)して居る現在(いま)にも継続して在る。

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 無名の意識は感覚(いしき)に隠れて俺を揺さ振り、俺の白体(からだ)を沈着させ生く無想の四肢(てあし)を事毎嫌がり、一女(おんな)の衝動(うごき)に付いて行けない無憶(むおく)の論議を観察するべく、過去の一通(とおり)に斬新(あらた)を見付ける夢想(ゆめ)の来理(らいり)に通用していた。俺の労苦は俗世(このよ)に試せる無為の心境(こころ)に弱体(からだ)を識(し)り貫(ぬ)き、信用出来ない他(ひと)の追気(ついき)に意味を隠せる〝隠し味〟を識(し)り、現代人(ひと)の常識(かたち)に理解出来ない幻想(ゆめ)の〝網羅〟の出足を知る内、日々の睡魔に悦(えつ)を失(け)される悔いを残さぬ努めに凡庸(ふつう)を観て採り、俺の白紙(こころ)へ勇気を観るのは遠く離れた女神であった。明日(あす)の生気を躰に観るうち俺の帳は宙(そら)へ翻(かえ)れる空気(しとね)の脆差(もろさ)に追随する儘、俺の身辺(あたり)を微妙に活き尽(き)る無用の八頭(おろち)は暗黙(やみ)を奏でる扶桑を詠み尽(き)り、俗世(このよ)に仕上がる俺を無にした人間(ひと)の連想(ドラマ)は宙(ちゅう)へ棚引く手軽(かる)さを呑み尽(き)り、仰臥の体形(かたち)へ自体(おのれ)を牛耳る未完(みかん)の道標(しるべ)の在り処は常時(いつ)でも、一人(ひと)の夜毎を現行(いま)に感じる無頼の進化を既視(おおめ)に観て居た…。無意(むい)に過せる暗黙(やみ)の信仰(めいろ)に意味の清閑(しじま)が跳び出て来る頃、両親(おや)に纏わる子への真心(こころ)が微妙に強まり種子(ネタ)を掴んで、掴んで放れる無残の空間(すきま)に児(こども)の旧体(からだ)は震えて失(き)え去り、暗黙(やみ)の見事に姿勢(すがた)を画(かく)せる夜半(よわ)の寝言をようく包(つつ)んだ。両親(おや)の良心(こころ)は児(こども)に伝わる無為の気色に姉妹の渡れる概(おお)きな清閑(しじま)が理容に奏でる未完(みかん)を欲しがり、夢中に成り尽(き)る無為の夢想(ゆめ)では中途半端の景色は逃され、「暗黙(やみ)の見事」に構築され生く清閑(しじま)の自体(からだ)は体温(おんど)を欲しがり、夢想(ゆめ)の極度に起想(きそう)を招ける孤独の独義(ドグマ)を連想して居た。独りの偏見(せいぎ)が俺に訪れ、俺の脆味(よわみ)が露呈する頃、俺の空虚は〝暗さ〟を味わい俺の白紙(こころ)に延々降(お)り生く女性(おんな)の子守が落胆して活き、表情(かお)の見得ない旧い気色は一男(おとこ)の孤独を概(おお)きく苛め自然(あるじ)の無駄から感覚(いしき)を奪(と)り去る無言の気色を露呈に彷徨(まよ)わせ、俺の肢体(からだ)が清閑(しじま)に往(い)くのは無為の幻夢(ゆめ)から〝好意〟を仕上げる孤独の労途(ろうと)を孤独に認(したた)め厚い空間(すきま)に想いを遣るころ俺の躰は如何(どう)でも安(やす)まる無機の調子に商いさえして、一女(おんな)の子守を幻(ゆめ)に観るうち孤高の呼笛(あいず)が如何(どう)にも窄まり、純白(しろ)い孤独に希薄を誘(いざな)う無謀の憂慮を〝御殿〟へ遣るのは、連日連夜に身許を欲しがる虚空の態(てい)とも良く良く似ている。漂白(しろ)い気色に矛盾を仕上げる〝虚空遊戯〟の中央(まなか)の辺りに、真白味(しろみ)に零れる男女(だんじょ)の揺蕩(ゆらぎ)は無想に蹴上がる助走を携え、俺の明日(あす)にはつくづく付かない俗を気取れる幸(こう)の所以(ありか)は血色(いろ)を化(か)え活き、取り留めないまま夢想(ゆめ)を保(たも)てる白体(からだ)の丈夫を少々気にする。

 〝御殿〟が仕上がる輪舞曲(ロンド)の経過(けいか)は〝斬新無比〟成る二進(にしん)の経過で、対人(ひと)の理性(はどめ)が構築して生く無意の幻想(ゆめ)さえ無言に観て生く事始(こと)の新裏(しんり)の系動(けいどう)でもある。幻想(ゆめ)の揺蕩(ゆらぎ)に不動を見詰める旨の言葉はふらふらすれども過酷に萎え生く精神(こころ)の一滴(したり)は左人(さじん)の私欲(しよく)が交差に従順(したが)い、孤独の開きを充分気にする俗世(このよ)の脆味(よわみ)は〝延命(いのち)の連動(リレー)〟にその実(み)を任せて、暗夜(やみよ)の追憶(おく)までその身を捧げる世迷(よまい)の独創(こごと)は身近に置きつつ、二手(ふたて)に分れる文言(ことば)の成り来(ぎ)は幻(ゆめ)の逆行(もどり)に新参して居た。…

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 …ゼミナールの授業は勿論の事、他の授業時にも似たような(と言うより全く同じ緊張感)に見舞われ始めて、ゼミナールが殊に一番緊張し、その次の時限に在る「聖書学」の授業では、自分の状態を少し客観視する事をして行った。この事は症状が出始めてから、幾分か経った後である。

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 俗世(このよ)の雑事が生気を絶えさせ幻(ゆめ)の孤独に地道に生くのは俺の残骸(むくろ)の背後に狭まり、明日(あす)の魅力を発散して生く事始(こと)の可能(かぎり)を未重(みじゅう)に問うのは旧来独語(むかしがたり)の未完(みかん)の儘にて、明日(あす)の辛気を見様(みよう)に真似生く事始(こと)の審議の未活(みかつ)の成果(はて)には、神秘(ふしぎ)と現(うつつ)が器用を統(たば)ねる幻想(ゆめ)の人頭(どくろ)の夢想(むそう)にも在る。現代人(ひと)の無益を孤高に頬張る一人(ひと)の本音を暴露するうち事始(こと)の自然(あるじ)は自主(あるじ)を培う男・女(ひと)の脆差(もろさ)を脱し始めて、暗夜(よる)を恒(わた)れる人苦(じんく)の末路(すえ)には未知の幻(ゆめ)から苦労が表れ、変わり身の無い無言の自主(あるじ)に自己(おのれ)の血色(いろ)さえ澄ませて観(み)せた…。端正(きれい)な寝言が束の間外(ず)れて、俺の児(こども)が矢庭に死に散る無機の晴嵐(あらし)を幻見(ゆめみ)る時期(ころ)には、俺の目前(おもて)を幻視(ゆめ)へ紛れる四十(しじゅう)の女性(おんな)が一通(とおり)を任され、身塵(みじん)に招ける一幻(ゆめ)の一腕(かいな)を遠くに投げ遣り、用途を這わさぬ自由の豪気は活気を知る程にも成り、黄泉の寝床に死臭を這わせる悪の文句(ことば)へ理由(はどめ)を掛けた。男性(おとこ)と女性(おんな)が真白(しろ)い一体(からだ)を揚々見守り白体(からだ)の肌理から概(おお)くの文言(ことば)が空(くう)を遮り、囀る文句(ことば)の利点の概(おお)くは純白(しろ)と常緑(みどり)の気体を統(す)べ活き、常緑(みどり)の紺(あお)さは加齢に伴う未信に溢れる一幻(ゆめ)の談露(だんろ)に呼吸を引かれて、一幻(ゆめ)の姿勢(すがた)を囃せる速さは一男(おとこ)と一女(おんな)の二性(ふたつ)に折れた。未来(みく)の目下(ふもと)に大手が横たえ真冬(ふゆ)の清閑(しずか)に希少が成るのは一視(ゆめ)の概(おお)くに無頼を仕上げて、両親(おや)の生気が衰退して生く滑稽(おかし)な一通(つうろ)に自己(おのれ)を挟見(はざみ)る夢遊の論議は画策さえ失(な)く、俺の白紙(こころ)を淡麗(きれい)に窄める旧来(むかし)の孤独は、現行(いま)の暴嵐(あらし)を上手(じょうず)に気取れる八(はち)の人頭(あたま)に程々好く観た。気体の軟みが俺の寝床にすいすい入(い)るうち幼い一女(おんな)は間遠(まどお)を締め出し、慌て無沙汰の自体(おのれ)の人陰(かげ)には魔法(すべ)に頼らぬ気配が出遅れ、自己(おのれ)の知識に安定(さだめ)を与(く)みする無数の役目は、何度か破れた俗の恋(こころ)に世迷(よまい)を忘れて巣立って入(い)った…。無知の気楽を横目に置いとき俺の孤独は鼓動を速める未来(みらい)の衝動(うごき)を閲覧する儘、事始(こと)の生憶(きおく)に回元(かいげん)して生く万象(もの)の見方を左右へ足ら締め、忠実(まこと)の〝見送(おく)り〟に未順(みじゅん)を観たのは出来事(こと)の初端(はじめ)の新参だった。黄色い一灯(あかり)が俺の住処を黙々知るうち未亡(みぼう)の信理(しんり)は居ても居(い)られぬ純白(しろ)い気色に自己(おのれ)を煩い、未知の文句(もんく)を切先(きせん)に圧する文言(ことば)の初歩(いろは)に還元して生く…。漆黒(くろ)い帳が暗夜(よる)の空気(もぬけ)を文句(ことば)に認(したた)め、明日(あす)へ傾く今日との憂(う)いから未完(みじゅく)を余せる思春を見定(さだ)めて、昨日の絶理(ぜつり)に無為を評する一人(ひと)の覚悟は意気地(いくじ)を失くして失踪して居た…。慌て眼(まなこ)の無境(むきょう)の敷地に〝視野〟を射止める順序を繰り出し、未来(みく)の集地(アジト)に盆用(ふつう)を認(みと)める粗い音頭は白体(からだ)を蹴散らせ、黄泉の集地(アジト)に幻(ゆめ)を堅(かた)めて無音(おと)を期すのは苦労知らずの男児に名高い幻想(ゆめ)の一理と見紛いさえする。

 漆黒差(くろさ)を幻見(ゆめみ)て宙(そら)を這い生く蟲(むし)の一蠢(うごき)は夜空(やくう)を這い活き、幻春(はる)の身憶(みおく)で首(こうべ)を齧れる華麗な蟲には体温さえ発(た)ち、明日(あす)の盛(さか)りを一身(からだ)に与(あず)けて一幻(ゆめ)を囀る一男(おとこ)の巨躯には、無答(むとう)を続けて幻滅して行く旧い吐息が矢庭に馴らされ、事始(こと)の生憶(きおく)に頂(てっぺん)さえ識(し)る無業(むぎょう)の一集地(アジト)を概(おお)きく保(も)った。真白(しろ)い「巨躯」には身笠(みかさ)の呼笛(あいず)が断層から成り、古い生憶(きおく)に一幻(ゆめ)が居座る寝間(ねま)に於いては〝未完(みじゅく)の気色〟へ自体(からだ)を辷らす俺の進理(しんり)を遂行して居り、俗世(このよ)の未知から「明日(あす)」へ束ねる無想の一角(かど)に立っては、一男(おとこ)と一女(おんな)が自然(あるじ)に活き得る初歩(しょほ)の未覚(みかく)を端正(きれい)に撮った…。

      *

 …と言うのは、この「聖書学」の授業を受けて居る学生の内に、一人の女の子が皆と同様に教室に入らず、教室への出入り口用のドア付近に机と椅子を用意して貰って授業を受けて居る光景と情景とを見た故であり、「もしかしたらあの娘も今の自分と同じ様(よう)に、人前、人の群れの中に居たら卒倒する程の症状に駆られるんじゃないか?だから先生に頼んで、ああいう形で皆から離れて、まるで独りの空間を以て講義を受けて居るんじゃないのか?」等の疑惑が湧いたからでもあった。彼女は何時(いつ)もそうして授業を受けて居り、一度も皆の輪(うち)に入った事が無い。試しもしない。始めから最後までそうだった。この事は、似た者同士とした俺にとって、とても心強い味方と成り嬉しかった。

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 純白(しろ)い〝襖〟が未来(みらい)を抉じ開け、俺と一娘(むすめ)の〝巨躯〟の自主(あるじ)を自然(しぜん)に頼める企図の許容(うち)から人群(むれ)の肢体(からだ)を未用(みよう)に織り成す深紅の文句(ことば)を未然に採り出し、女性(おんな)と男性(おとこ)の虚空を把(つか)める当(とう)の誤解には、現行(いま)の姿勢(すがた)に明日(あす)を射止める無頼の文言(ことば)が妄(みだ)りに在った。束の間から観る授業の生憶(きおく)は堂々自流(なが)れて〝併せ鏡〟に未重(みじゅう)を識(し)り貫(ぬ)く詠(うた)の文句(もんく)を鼻声から得て、一男(おとこ)と一女(おんな)の孤独を遮る現行(ここ)での自流(ながれ)は、黄泉を信じて「黄泉」へ跨げる「明日(あす)」の孤独に自体(おのれ)を先見(さきみ)た。

 暗黙(やみ)の清閑(しずか)に「俺」が仕上がり一女(おんな)の姿勢(すがた)を体裁(かたち)に化(か)え生く未知の孤独を冒険しながら、明日(あす)の〝気色〟に〝温度〟を保(たも)てる弓の三日月(つき)へと大袈裟を見て、自己(おのれ)の独義(ドグマ)を主張へ変え行く無意(むい)の景色は還元され生く。真白(しろ)い帆足を左舷に身構え空路(みち)を独歩(ある)ける幻想(ゆめ)の小躍(おどり)は一路(いちろ)を貫(つらぬ)き、〝何が何でも身塵(みじん)を失(け)せ得る至高の独義(ドグマ)〟を享楽(らく)に識(し)っては、自己(おのれ)の身重を過去に覗ける無心の論破は衰消(すいしょう)して生く…。俺の白紙(こころ)に〝軒(のき)〟が訪れ暗黙(やみ)の一通(とおり)が事始(こと)を改め、旧巣(ふるす)の許容(うち)にて問いを正せる亜空の人形(かたち)を〝華〟に観た後(のち)、一幻(ゆめ)の背後は思惟を漏らさぬ真白(しろ)い辛苦を頬張り続けて、「自己(おのれ)の黄泉」から血相(かお)を化(か)え生く昨日の自主(あるじ)の空気(もぬけ)の許容(うち)には、見様見真似で泡言(あぶく)を独白(かた)れる私様(しよう)の文化が構成され得た。一女(おんな)の白露が四肢(てあし)を拡げて俺へ向かっては一幻(ゆめ)の逆送(もどり)を死相に報せる唯一(ひとつ)の仇(あだ)から脱出させられ、脚(あし)の群力(ちから)を間遠(まどお)に尽きせぬ幻(ゆめ)の文句(もんく)は一男(おとこ)を仕上げて、一女(おんな)の自主(あるじ)を「黄泉」へと還せる身近の実力(ちから)を脚力(ちから)へ採った。「音頭の目下(ふもと)」が未行(みこう)を識(し)り付け一幻(ゆめ)を語っても、明日(あす)の一路(みち)から自体(おのれ)を通せる無知の女性(おんな)は毛並を寝かせて、猫の体裁(かたち)に温度を仕立てる無想の巨躯から受難を睨(ね)めては、明日(あす)の空間(すきま)へ自己(おのれ)を堕とせる悪意の敏(びん)など揚々識(し)った。

 無機の〝四肢(てあし)〟が一女(おんな)を照らせる陽(よう)に昇っては幻視(ゆめ)の両腕(かいな)に大手を託せる思考の巧みを凡庸(ふつう)に留(と)め置き、幻(ゆめ)の間近に気楼を透せる旧い気色の文言(ことば)を化(か)えては、俺の〝一男(おとこ)〟と娘の女性(おんな)は桎梏(かせ)に成る〝気〟を揚々識(し)った。女性(おんな)の躰は夢遊を隔てる煩悩(なやみ)に息衝き、確立して生く女性(すごみ)の最期を一男(おとこ)に与(く)ませて呑気にして居り、俺の背後につとつと忍べる夢遊を蹴散らす真白身(しろみ)を解(と)いては、一幻(ゆめ)の戸口(とぐち)へ一路(いちろ)に繋がる男・女(だんじょ)の哀れを臨想(りんそう)させ得た。純心(こころ)の衝動(うごき)が一滴(つゆ)に手向ける人力(ちから)の手許を憐れに失(け)すうち一幻(ゆめ)の孤独を揚々追い生く孤独の進路は二性(ふたつ)に朗(あか)るく、男・女(ふたり)の過去から手頃に片付く一幻(ゆめ)の暴挙は追退(ついたい)した儘、無言の許容(うち)にて一対(からだ)を保(たも)てる〝夜目(よめ)〟の吟(ぎん)へと詩(うた)を創った。純情(こころ)の暗黙(やみ)には〝華〟を咲かせる無想の教句(きょうく)がすんなり仕上がり、自体(おのれ)の無邪気を器用に配(あやつ)る一娘(おんな)の気色は一幻(ゆめ)へと片付き、俺の容姿が我多我多(がたがた)喚ける無我の震度は信途(みち)を外され、一幻(ゆめ)を統(たば)ねて無教(むきょう)に揺蕩(ゆら)げる無垢の気性を揚々盛(も)った。俺の孤独は精神(こころ)を病みつつ末路を毛嫌い、明日(あす)の〝孤独〟を一女(おんな)に黙らす純白(しろ)い集地(アジト)で凡庸(ふつう)を識(し)り貫(ぬ)き、自己(おのれ)の現行(いま)から寝室(ねむろ)を相(あい)せる一幻(ゆめ)の信仰(めいろ)を孤島に観て居た…。

 斬新(あらた)な樞(しかけ)が一女(おんな)の肢体(からだ)に敢え無く遺され、幻夢(ゆめ)の我流(ながれ)は一男(おとこ)に相(あい)せぬ暗黙(やみ)の進化へ堂々這い活き、年端の行かない一新(あらた)な幼女(おんな)を仄(ほ)んのり生き得た壮年男(おとこ)は知った。

      *

 …「あの娘もそうで在れば好いのに」とさえ思った。何時(いつ)の日か、先生にその娘がそうして居る理由を尋ねて見ようか、とも思って居たが、結局、訊けないまま秋学期が終了し、今に至っている。あの娘も、今の俺と同様の症状を持ち合せて居るのだろうか?

 緊張、恐怖は、特に、寝不足の翌日に、街中にて俺を襲った。襲われた日には決って後頭部辺りが鈍く痛くなり、気分が悪くなるので、俺は「もしかしたらこれは頭内に何か疾患が在るのではないか」と再び新たな恐怖と不安に駆られ始めて、或る日を境に、都合が付けば病院の脳神経外科へ受診に行く事を決意して居た。親にも友人にも知らせる事の出来ない、密かな決意である。まだその際には、そこまで切羽詰まって居なかったのだ。

      *

 無色の恐怖に余韻(あとあじ)さえ無く、無駄な覚悟を微量に掲げる宣言(ことば)の一通(とおり)を暗黙(やみ)へと棄(な)げては無言の許容(うち)にて自覚(かくご)を決め生く一生(ひと)の儚い身軽(かる)さに従順(した)がい、昨日の晴嵐(あらし)に孤軍を託せる一新(あらた)の芽を見て浮遊を取り付け、自然(あるじ)の懐(おく)へとその実(み)を寄らせる無垢の境地に驚きさえする。自分の自覚(かくご)を変容して生く無心の孤独は穏やかならずも無為に失(け)せ得る自主(あるじ)の孤独は生(せい)へ拘る執拗差(しつようさ)を識(し)り、明日(あす)と現行(いま)との無言の空間(すきま)に感覚(いしき)を忘れる媒体さえ識(し)り、幻(ゆめ)の孤独と自体(おのれ)の孤独を器用に仕分けて無言を発する男性(ひと)の清閑(しじま)に一息吐(つ)けた。

 自体(おのれ)独りで独創(こごと)に対せる微温(ぬる)い主張(はり)には漂白味(しろみ)が誘われ、身寒(さむ)い夜間(よま)から宙(そら)へ発する現代人(ひと)の我執(こどく)は気儘に漂い、「活きる為に…!」と億度も見て来た自分の覚悟は生気を保(たも)てず、矮小(ちいさ)い残骸(むくろ)が洗練(あら)われ続ける現行(いま)に息衝く無告(むこく)の主観(あるじ)は、一幻(ゆめ)を産むまま偏見(せいぎ)を翻(かえ)せる無頼の男・女(ふたり)を概(おお)きく挙げた。清廉から成る潔白(しろ)さの生果(さき)には一男(おとこ)の身重を称える事無く一幻(ゆめ)を講じて美醜を相(あい)せる物(もの)の応路(おうじ)を後退させ活き、自己(おのれ)の孤独を精神(こころ)に生やせる〝物の一央(うつり)〟の細かの点では、初めから無い滑稽(おかし)な調子が上目遣いに並んで在った。複数人(ひと)の質(しつ)から無人(ひと)の質(しつ)まで総ての可能(かぎり)を網羅して生く不尊(ふそん)の心構(かま)えに乱暴など識(し)り、〝併せ鏡〟で自己(おのれ)を磨ける不治の習癖(くせ)には男・女(だんじょ)が微笑み、男女(ひと)の孤独に孤独を射抜けて暗黙(やみ)を貫く空気(もぬけ)の翌朝(あさ)には、独創(こごと)が〝生気〟を創造して生く不意の気色が既視(おおめ)に洩れた。無意味な肢体(からだ)を宙(ちゅう)に振(ぶ)ら提げ白衣(はくい)を識(し)らない余程の好奇が俺に纏わり、幻想(ゆめ)の偶奇にほっと凄める孤高の自主(あるじ)を分解して居る…。無垢の表情(かお)から熱意が跳び出し幻(ゆめ)の高貴に轡を揃える向きの心理に行為を産み出し、狂々(くるくる)廻れる四季(しき)の凄みは相手の無いのを好く観た体(まま)にて無言に尽き得る思春(はる)の陽気に春望(のぞみ)を託せる憂いを識(し)った。呼吸をするほど滑稽(おかし)な独義(ドグマ)は俺の背後に捨て置かれて活き、隠したがらない幻想(ゆめ)の陽気は本気に阿る思春(はる)の許容(うち)にて無謀の調子(リズム)に自体(からだ)を併せる孤踏(ことう)の集積(シグマ)に動揺して活き、一男(おとこ)と女性(おんな)の独義(ドグマ)の成果(はて)には成らずに暮れ行く律儀が表れ、初めから無い夢想(むそう)の進理(しんり)に鷹揚成るまま身笠(みかさ)を煩う幻(ゆめ)の自主(あるじ)の凡庸さえ在る。俺の白紙(こころ)は一女(おんな)の巧みを性器に携え、訪ねた煩悩(なやみ)は本能(ちから)の所以(ありか)を緻密に求める男・女(だんじょ)の児(こども)を優れて見て居り、初春(はる)の陽気に蔑む心理は真白差(しろさ)を幻見(ゆめみ)て苦慮を仕留める人間(ひと)の両腕(かいな)の無力を識(し)った。俺の文句(ことば)は女性(おんな)に届かず母性(はは)を煩い母体(はは)を訪ねる無機の孤独を揚々観た儘、自分の孤独が終(つい)に敗れる宙(そら)の果てから我が実(み)を蹴散らせ、幻想(ゆめ)の空気(しとね)へ彷徨(まよ)い続ける未完(みかん)の集成(シグマ)に結託して生く。路頭に迷える不治の「孤独」は純白(しろ)い悪魔に表情(かお)を映され、活きる意味から感覚(いしき)を気取らす孤踏(ことう)の集積(シグマ)に機敏を感じ、明日(あす)の残骸(むくろ)を生憶(きおく)に遺せる無意(むい)の自主(あるじ)へ自粛を識(し)った。苦労を重ねる生気の渦中(うず)には脆差(もろさ)を呈(しめ)せる改心(こころ)が成り立ち、無謀の前途へ自立を束ねる向きの主観(あるじ)は自然(しぜん)より成り、明日(あす)の労苦と結託して生く幻(ゆめ)の自主(あるじ)は孤高に還れど信仰(まよい)を知り貫(ぬ)き、俺の気色を過去へ掲げる無理の理屈は洗練後(せんれんご)に発(た)つ想起を弛(やわ)める。人間(ひと)の孤独が虚空へ逆行(もど)れる幻視(ゆめ)の脆差(もろさ)を終(つい)に報され幻(ゆめ)の還りに臆病(やまい)を重ねる微弱(よわ)い孤独を想起に操(と)っても、他(ひと)の限力(ちから)は宙(そら)を恒(わた)れる無機に成り着き、明日(あす)の労苦を私算(しさん)に幻見(ゆめみ)る化相(けそう)の追憶(おく)から信仰(まよい)を魅せた。他(ひと)の独気(オーラ)は歴史に紐解く軟差(やわさ)に溶け込み独自も多自(たじ)にも区別の付かない夢遊の淡さがとんとん膨らみ、屈(こご)まる肢体(からだ)は自然(あるじ)の掌(て)に依り無想に駆られて、説明調から夢想の調(ちょう)まで繰り返しに観る惨さを識(し)った。文言(ことば)の流行(ながれ)に独創して生く旧い気色を鵜呑みにするまま夢の無口の尖った果(さ)きから〝俺〟に還れる気合が漲り、厚い白壁(かべ)から清閑(しずか)に零れる無走(むそう)の速さは個々に違って、明日(あす)を幻見(ゆめみ)る人間(ひと)の軟裸(やわら)は俺の肢体(からだ)に彷徨(まよ)って行った。一人(ひと)の進化に〝無垢〟を着せ終え旧い〝社(やしろ)〟を自在に仰げる幻想(ゆめ)の一滴(しずく)を興味に観たのは、漆黒(くろ)い夕日に置き遣られて生く無垢の飛び火の凡庸(ふつう)に見て取れ、明日(あす)の還りの孤高に生くのは距離を保てる体裁でもある。身塵(みじん)に這わせる俺の暗黙(やみ)から無想が拡がり昨日に幻見(ゆめみ)た無垢の景色は奇想に拡がる秩序を幻見(ゆめみ)て、男性(おとこ)と女性(おんな)の孤独の火種(たね)から滑稽(おかし)く揺(たゆ)める未知の辛苦は孤踏(ことう)を儲けて、吟味(あじ)を識(し)らない漂白(しろ)い白体(かたち)は生気を違(たが)えて生茂(せいも)を識(し)った…。

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 …一度、大学の休みの日に、不意に午後に目覚めた俺は車を走らせ、最寄りの総合病院三軒を訪ねて脳神経外科の受信を各受付にて迫っている。が、どの病院でも、脳神経外科は月曜・金曜の午前中のみ、と銘打たれて担当者の出勤表(シフトスケジュール表)をまた各受付にて貰って帰って居た。それから暫く、大学・街中から自宅へ帰れば楽に成れる事を知っていた為、何とか自力で日々を過して、大学の冬期休暇まで状態を持ち越す事が出来た。その頃にはもう、一月九日迄は如何(どう)とも無かった教会内でも良く通(かよ)ったビデオ店でも、特に寝不足の翌日には「失神・卒倒する程の緊張・恐怖」を味わうように成って居り、「これは病院に行かなあかん」と独りで自答する事も日々の内疎らに在った。

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 悔いを残さぬ律儀の上では一女(おんな)の気迫が男性(おとこ)に付け込み私欲(よく)を吟じる無踏(むとう)の旋律(しらべ)が胸苦(きょうく)に延ばされ厄介だったが、弄(あそ)びを知らない無垢の害から死闘に伸ばせる無意の気色は一幻(ゆめ)の郷里へ梵天(そら)を見上げる虚空の所以(ありか)に延命(いのち)を与(あず)けて、昨日の文句(ことば)に盛期を幻見(ゆめみ)る無想の疾走(はしり)を追走する儘、明日(あす)に成るのは現行(いま)を報さぬ無機の孤独の哀れである等、追走(はし)りながらに女体(にょたい)を求める〝体温(ぬくみ)〟の行方を清閑(しずか)に追った…。鼓動(うごき)に寄り添う竜胆(はな)の青白(あお)さは宙(そら)に突き出る脆弱(よわ)さを幻見(ゆめみ)て、未知の文言(ことば)に卑屈を見出す事始(こと)の空壁(かべ)へと小躍(おど)って入(い)った。未言(ことば)の装飾(かざり)に身憶(みおく)を観るうち夢幻(ゆめ)の進化は俚諺を採り活き、事始(こと)の概(おお)きに幻(まぼろし)から観る気配の一点集地(アジト)を見限り始めて、橙色から夕間(ゆうま)を染め行く無想(むそう)の曲(きょく)へとその実(み)を仕上げて、腰掛け程度の生(せい)を牛耳る自然(あるじ)の目下(ふもと)へ落着して生く…。落着したまま浮沈を講じて、生きる肢体(からだ)に屍(かばね)を観て生く無想の転死(てんし)は一人(ひと)を苛め、不毛の事始(はじめ)に落沈して生く人間(ひと)に宿れる終(つい)の感情(すみか)は「自体(おのれ)」を這い出て無想を毛嫌う予想だにせぬ感覚(いしき)であった…。―――

 一人(ひと)に寄り着く「孤独が土台(ベース)」の概(おお)きな清閑(しじま)は一幻(ゆめ)の進理(しんり)の空気(もぬけ)を毛嫌い、事始(ことのはじめ)に膨(おお)くを観て採る肢体(からだ)の盛期の次第に従順(した)がい、無毛の未完(みじゅく)に一幻(ゆめ)に配(はい)して文句(ことば)を扱う矮小(ちいさ)な空間(すきま)を鷲掴みにして、一人(ひと)の牧師と独白(かたり)を始める幻想(ゆめ)の猛気(もうき)は上気とも成り、「明日(あす)の静寂(しじま)」に自体(おのれ)を運べる無意の辛苦は醍醐味さえ得た…。

      *

 一月を終えた二月三日の月曜日に、丁度前日(日曜日)に、以前言って居た「病院へ行く事」を思い出した事と、礼拝時に又緊張と恐怖とを味わった事、等が重なって、俺は朝早く起きて「唯一MRIが完備されている」と以前に各受付を廻った際聞いて知って居た中央病院へ車を走らせ、脳神経外科への受診をしようと試みた。無論、家を出る際、母親には、「一寸コンビニ行って来る」と嘘を吐(つ)いて出て来た。今は、余計に心配されて、その「他人からの心配」が自分にとっての余計なプレッシャーに成る事が怖かったからである。

      *

 不安に埋れる一人(ひと)の孤独は足枷(かせ)を牛耳る空気(しとね)を連想(おも)わせ、「明日(あす)」の文言(ことば)を自己(おのれ)に突き出す「他(ひと)に成り立つ余計の安堵」を一幻(ゆめ)の自虐に揚々観る儘、深い水疱(あぶく)に行李を浮かべて〝自体(おのれ)の体重(おもみ)〟を上手(じょうず)に気遣う一幻(ゆめ)の大手と相談して活き、自分の残骸(むくろ)を長過去(かこ)に棄て行く事始(こと)の進理(しんり)を既視(おおめ)に観て居た。一女(おんな)に対する無想の空間(すきま)が〝生(せい)〟に纏わる深利(しんり)を観る内、幻想(ゆめ)の静間(しずま)に一体(からだ)を重ねる〝併せ鏡〟の用途に機(き)を追い、明日(あす)の〝年貢〟を生気に見て取る自然(あるじ)の教区に姿勢(すがた)を追うのは、俺の自身(からだ)が端正(きれい)に片付く一幻(ゆめ)の所以(ありか)と識(し)り付けても居た。無断で始まる恋の樞(しかけ)に鼓動(うごき)が咲いて、一男(おとこ)と一女(おんな)の軟い転地(アジト)は集中して生く無想に建てられ、夢幻(ゆめ)の戸口(とぐち)で淡さを見兼ねる無意の孤独は〝連鎖〟を追い出し、初めから無い奇特の文句(ことば)の紋様(もよう)の総ては、事始(こと)に見付ける分野の頭数(かず)など怒涛の孤独に減滅して居た。自体(おのれ)の気色を静かに啄む未憶(みおく)の景色は五月蠅差(あわさ)に従え一幻(ゆめ)の孤独と卑屈な哀れを終(つい)に引っ込め、翌日(あす)を見知れぬ神秘(ふしぎ)の孤独の末路を識(し)る時〝自体(からだ)の進理(しんり)〟の開拓等して、俺の過去から仄かに上がれる一幻(ゆめ)の辛気に生え得る虚像(ぞう)には、暗黙(やみ)の活力(ちから)が〝辷りに耐え得る未活(みかつ)の無力〟に対して生く内、文言(ことば)の概(おお)くに呼吸が鳴らない昨日の概(おお)くを外算(がいさん)して居た…―――。身欲(よく)の自主(あるじ)は未活に徹する拙い折りから始業に耐え生く未刻(みこく)の〝檻〟まで時制(とき)の素顔に局面して居り、無口に対する煩悩(なやみ)を識(し)るうち幻想(ゆめ)の一流(ながれ)に生気を抜くのは凍えた躰に宙(そら)を介せる一刻(とき)の静寂(しじま)にその実(み)を遣れども、事始(こと)の在り処に一人(ひと)を二重(かさ)ねる無口の哀れが充分発(た)った。解読して生く「乞食」の無想(ゆめ)には真白(しろ)い気色が不断に弄(あそ)べる無語(むご)の音波が死中(しちゅう)に活し、明日(あす)の身憶(みおく)が児(こども)を二重(かさ)ねる一幻(ゆめ)の主観(あるじ)は孤独を感じず、明日(あす)の寝床を夢中に捜せる一乙女(おとめ)の信仰(まよい)に奇問を聴く儘、白紙(こころ)の名残へ従順(すなお)に従う身欲(よく)の自主(あるじ)は本能(ちから)を睨(ね)め付け、頼り無いのが破紋(はもん)を馴らせる「明日(あす)の小躍(おどり)」へ浸かって入(い)った。

 事始(こと)の概(おお)くが他(ひと)の容姿に基準を向かわす純白(しろ)い用途に矛盾を識(し)る内、他(ひと)の沃土が私欲(よく)を実らす事始(こと)の概(おお)くを改竄して活き自己(おのれ)の肉体(からだ)を純白(しろ)く掴める無味の晴嵐(あらし)を既視(おおめ)に見て取り、人間(ひと)の体裁(かたち)を長過去(かこ)に仕上げる不遜の自主(あるじ)の一体(からだ)の側(そば)では、未順(みじゅん)の私運(さだめ)に企図が仕上がる無想(むそう)の論理を悠々知り奪(と)る。理性(はどめ)を濁らす独人(ひと)の孤独は一幻(ゆめ)を苛め、両脚(あし)の枷へとその実(み)を馴らせる脆弱(よわ)い言語の追憶から観て、〝自分〟を成らせる訪人(ほうにん)総てが無刻(むこく)の許容(うち)へと親身を削ぎ遣る無垢の兆しを上手(じょうず)に掌(て)に取り、無臭に漂う〝不覚〟を伝(おし)える未完(みじゅく)な暴利は本人(ひと)を無くさせ、身欲(よく)の進理(しんり)に利潤を重ねる神秘(ふしぎ)な八頭(おろち)の企図を幻見(ゆめみ)た…。純白差(しろさ)を講じて人差(じんさ)を奏でる現代人(ひと)の幼稚は愚行(おろか)を謳わせ、同じ文句(もんく)を延々奏でる呆(ぼ)けた呼笛(あいず)を懐(うち)へ仕舞わせ無謀に敷き生く京都人(ひと)の実力(ちから)を皆無にしたまま蹂躙して活き、未刻(とき)の狭間に故意を窄める未開の〝社(やしろ)〟は人煙(けむり)に巻かれて消失している…。遠くの社(やしろ)でふらふら震える自分の生命(いのち)を追憶した後、幻(ゆめ)の仄かを無言に帰(き)せ得る醒めた感情(こころ)に身塵(みじん)を観た儘、厚い白壁(かべ)から鈍味(にぶみ)を感じる俗世(このよ)の煩悶(なやみ)が屑男(おとこ)に勝った。紺(あお)い初夏(なつ)から一通(とおり)を過ぎ生く幻想(ゆめ)の脆差(もろさ)が活気を観る頃、俺の感覚(いしき)は初夏(なつ)に流行(なが)れる幻想(ゆめ)の上手(じょうず)を浮気に覗かせ不安を溜め込み、〝併せ鏡〟に無空(むくう)を覗かす徒労の成果(はて)には俺の身欲(みよく)が首(こうべ)を観て居た。純白(しろ)い孤独が幻視(ゆめ)を観るころ矛盾の〝日(ひ)の手〟は私運(さだめ)を欲しがり、〝併せ鏡〟の煩悶(なやみ)を消し得る虚空の程度(ほど)には若さが漂い、浅い〝明日(あす)〟から幻理(ゆめ)を凌げる無機の〝併せ〟が矛盾を解(と)いた。俺の姑息は俗世(ぞくせ)を省み、俗世(ぞくせ)に纏わる塵(ごみ)の男を皆殺しにして奇妙を欲しがり、人間(ひと)に見得ない霊(たま)の延命(いのち)を自主(あるじ)に見詰めて女性(おんな)を信じ、活きる事から規矩を観るのは旧来(むかし)に煩う誇張で在る等、一人(ひと)を拝して他(ひと)を見下(みくだ)す現代人(ひと)に対する憎悪が飛んだ。明日(あす)の白体(からだ)を夜宙(よぞら)に見下ろす〝向き〟の調子は身憶(みおく)に野晒(のさば)り、明日(あす)の孤独を思中(しちゅう)に蹴散らす〝合せ文句(もんく)〟の並びの生果(はて)には幾度も努める夜半(よわ)が祟って、明日(あす)の生憶(きおく)を予測へ収める無駄の覚悟は〝自分〟を失い、「俗世が地獄」の詰らぬ縁(ふち)から自身(からだ)を乖離(はな)して妄言(ことば)を吐(は)いた。漂白(しろ)い孤独は〝天馬(てんま)〟へ食わせる幻(ゆめ)の幻理(げんり)をとんとん整え、前庭(にわ)を這い擦(ず)る浮世の永久(とわ)には一人(ひと)の寿命(いのち)が気色を見送る「永久(とわ)」の自然(あるじ)が孤高を見て取り、純白(しろ)い葦には未覚(みかく)を窄める無知の自主(あるじ)が機嫌を見て取り、〝併せ鏡〟に俗世(このよ)を濁らす幻想(ゆめ)の逆行(もどり)を定着させた。気分の間(ま)に間(ま)に〝未知〟の羽音(はおと)を天馬に識(し)れば五月蠅(あわ)い一角(かど)には個憶(こおく)に避(さ)け得る未純(みじゅん)の寿命(いのち)が感覚(いしき)を据え保(も)ち、明日(あす)の自影(かげ)から未憶(みおく)を二重(かさ)ねる無意(むい)の晴嵐(あるじ)を自告(じこく)に識(し)り得て居たのは、明日(あす)の肴(さかな)を孤独に培う幻(ゆめ)の論理に痛快だった。無音の〝羽音(はおと)〟が天から零れて夢界(むかい)の論理が通底する頃、一女(おんな)の孤独は屑男(おとこ)を呼び込み魔都(まと)の灰汁(あくた)を額(ひたい)に掲げて、明日(あす)の一歩(はじめ)を通感(つうかん)したのち一幻(ゆめ)を安(やす)める一つの論理は、無知の生くまま奇怪が梳かれる夜路(よみち)の涼風(かぜ)から一念(おもい)を観て居た。紺(あお)い静寂(しじま)は晩夏(なつ)の一片(かけら)を紆余へ見送る無断の一敗地(アジト)を稀有に見出し、夜毎に成される微かの身許は無機に長じる矛盾を蹴散らせ淡い生憶(きおく)を幻視(ゆめ)に窄める未知の一地(アジト)にその実(み)を馴らされ、透明色した無色の表情(かお)には一男(おとこ)の晩夏(ばんか)が性味(しょうみ)に直され、事始(はじめ)に観て居た旧い仕業は「自然(あるじ)の落した過程(ながれ)」に在る等、一幻(ゆめ)の孤独を頼りとして居た。

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 不安と少しの緊張ながらに車を走らせ、「無事で済みますように、無事で済みますように」と神様に何度も祈りながら、いざ受信する段に立っては覚悟せねば、とも自分を慰めて居た。病院に着いた。始め、訳も分らず会計用の受付へ行き、財布をごしょごしょ探って診察券を探す振り等して居たが、今までに俺が憶えた病院特有の「安心する雰囲気」に絆されて行き、正気を射止めて、声を発して暇そうにして居た受付看護婦に問うた。対人した際に、また緊張・恐怖がやって来るか、と言う思惑が無かった訳ではない。しかし弱い者が集まる病院の空気に励まされる形を以て、俺の気持ちは聊か丈夫に在った。

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 明日(あす)の景色へ向かって流行(なが)れる一幻(ゆめ)の孤独は奔走して居り狂奔して生く無傷の純情(こころ)が俺の背後へ巧く隠れて、向きの気色に迷走して生く無本(むほん)の感覚(いしき)は宙(そら)へ舞い込み、未知の脚力(ちから)は無知を寄らせる身憶(みおく)の気色を生録(きろく)に留(とど)めた。明日(あす)の始末を人間(ひと)が付け得る理性(はどめ)の審議は切に概(おお)きく、無知を扱う現代人(ひと)の知識は悪魔の酔いから既知に項垂れ、明日(あす)の微妙も儘成らないのに危機を回(かい)する飯(まま)の仕事は、未憶(みおく)に並べる無知の独創(こごと)が理知との狭間を一幻(ゆめ)に観て居た。端正(きれい)な院(いん)から未憶(みおく)に繋がる一局(ひとつ)の既色(きしき)は四季(しき)に優れる無浪(むろう)の脆差(よわさ)に意味を解(かい)せぬ一男(おとこ)を拵え、巷の秩序が現代人(ひと)を衝動(うご)かす夜半(よわ)の解(かい)からその実(み)を棄(な)げ出し、明日(あす)を信じぬ淋しい事始(こと)には不快の初歩(いろは)が進んで在った。自己(おのれ)の脆差(もろさ)を草分けして生く淡麗(きれい)な両刃(もろは)の〝駆逐〟の果(さ)きには寿命(いのち)の経過(ながれ)を奇妙に染め生く無盲(むもう)の寵児が純心(こころ)に留(と)められ、厚い未完(みじゅく)の白壁(かべ)の前方(まえ)には芯を揺さ振る決勝さえ立ち、事始(はじめ)の身憶(みおく)に延命(いのち)を落せる無為の暴嵐(あらし)を棒にも振った。純白(しろ)い一敗地(アジト)に収監され生く古い孤独は美幻(ゆめ)を語らい、明日(あす)の孤独にその実(み)を興(おこ)せる夜半(よわ)の要局(かなめ)に未重(みじゅう)の目を保(も)ち、揚々落ち着く現代人(ひと)の乖離は一幻(ゆめ)を煩う無適(むてき)の自覚(かくご)を〝一語〟に埋め活き、活き逝き果て行く無己(むこ)の自主(あるじ)の恐怖に於いては、無知を差せ得る身塵(みじん)を啄む未刻(みこく)の白壁(かべ)から主観(あるじ)を観て居た…。

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 …「あの受診で来たんですけども…、脳神経外科を受診しようと思って」

と俺がその受付看護婦に言うと、看護婦は表情を変えない儘「ではこちらへ(廻って下さい)」と言葉の最後は聞えない程の静かな口調で俺へと応え、俺を受診用受付へと誘導した。

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 無言の許容(うち)にて明日(あす)に浮かべる表情(かお)の表面(なか)では、機密に触れ行く自走(じそう)が操り、傀儡達から無言を仕留める文句(ことば)の〝羽音(はおと)〟が上手(じょうず)に保(も)たされ意味を識(し)らずに無戒(むかい)を知り生く一幻(ゆめ)の諸刃を下界に観て居た…。経過(とき)の調子(リズム)を上手く乗せ得る一人(ひと)の感覚(いしき)は歯車(くるま)を観て居り、現行(いま)の全てを自分に帰(き)せ得る無為を小躍(おど)らす無念(おもい)の出足(でだ)しを〝自由〟に羽ばたく無垢の音頭へ投擲した儘、現代人(ひと)の下界(はんい)を全く好かない俺の正音(しょうね)が真意を知った。幻(ゆめ)の生憶(きおく)を辿り始めた俺の精神(こころ)は感動(うごき)に乏しく、疎(うざ)い故意から景色を望遠(なが)める無垢の独創(こごと)を邪魔する儘にて、感覚(いしき)が通じぬ世迷(よまい)の寝言を斯々然々(かくかくしかじか)…、〝併せ鏡〟で孤踏(ことう)を葬る俗世(ぞくせ)の灰汁(あく)から自分を紐解く…。孤憶(こおく)を気取らす文言(ことば)の概(おお)くは無残を識(し)り抜き暗夜(やみよ)に紛れた滑稽(おかし)な生憶(きおく)を同情しながら不問に任せて、孤高の進化を自分に知れない幻想(ゆめ)の概(おお)くは無機に逆らう夢路(ゆめじ)を識(し)った。白亜(しろ)い孤独が涼風(かぜ)を配(あやつ)る孤独の歩陰(ほかげ)は無音(おと)を見忘れ、夢路の一通(とおり)に惨さを吟味(あじ)わう華の透りは文句(ことば)を着忘れ、〝併せ鏡〟に清閑(しじま)を貫く孤高の陰(かげ)から情緒を破ける感覚(いしき)の空気(もぬけ)を揚々観て居る…。他(ひと)の自覚(かくご)が俺を窘め俺の背後(はいご)が五月蠅(うるさ)く鳴る頃、暗黙(やみ)の許容(うち)から一途(いっと)に達する一女(おんな)の白衣(はくい)は疎らに純白(しろ)く、尽きぬ頼りを自分に見て取り〝夜目(よめ)〟に這わせて概(おお)きを窄める、孤高の自主(あるじ)に自信を尽(き)った。幻想(ゆめ)の孤独が思記(しき)を観るうち俺の記憶は女性(おんな)を識(し)らずに、純白(しろ)い四肢(てあし)が自由を仄(ほの)めく〝併せ無沙汰〟の嗣業を幻見(ゆめみ)る…―――。〝哀れな音頭〟を自分に詠むうち文句(ことば)の弾みは宙(そら)を蹴破り、感覚(いしき)を通して黄泉を透せる一幻(ゆめ)の一滴(しずく)は脆差(もろさ)を気安(きやす)め、活きる内にて相対(あいたい)して行く涼風(かぜ)の温度は気安いながらに、〝相(あい)〟を通して自体(からだ)を清める無垢の文句(ことば)を成就して居た…。

 俺の身欲(みよく)が暗夜(やみよ)を脱(ぬ)け尽(き)り明日(あす)の進化を「純化(じゅんか)」に観る頃、気分の狭間に自体(からだ)を着流す一幻(ゆめ)の孤独は希薄と戯れ、白亜(しろ)い気色を微妙に酔わせる孤独の火種は密を棄て活き、〝併せ無沙汰〟に孤独を幻見(ゆめみ)る私闘の暴嵐(あらし)を演じてさえ居る…。孤独の悪夢が次々死に行く無駄を射止めた無言の臭気に、自己(おのれ)の夜半(よわ)から〝無数(かず)〟を束ねる一女(おんな)の色香(いろか)は幻(ゆめ)を見たまま窒息して活き、酸欠ながらに器用を幻見(ゆめみ)る漆黒(くろ)い悪魔にしとしと鳴いた。明日(あす)の清閑(しじま)が孤高に囀る〝世迷(よまい)〟の僕(しもべ)は白衣を着たまま文句(ことば)の軽味(かるみ)を遠く味わう明日(あす)の〝手毬〟を音頭に従え、「明日(あす)」と現行(いま)との無様(むよう)の呼笛(あいず)が気儘に相(あい)する孤独を詠む内、昨日に識(し)り得た〝奈落の宮(みや)〟には始終の正気が闊歩を止(や)めた…―――

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 …「この紙にご記入をお願いします」

と言って何時(いつ)もの氏名・住所・電話番号・症状やらを書き込む紙切れを俺へと渡し、自分はさっと又自分の仕事へ戻って行った。「ちゃんと症状を書く欄も在るな…」と少々、妙に感心しながらさらさら書き込んで行き、始め看護婦に話し掛けた時には失礼の無いようにと(何時いつもの恐らく)必要以上の気配りに徹して居た俺だったのが、不意と、職場「洗礼の園」で働いて居た頃の独自に培った気丈を尚構えて、「少しくらい無礼に振舞ったって好いや」と大胆に成る決意を暗(あん)に覚えて居た。俺は家を出る前、如何(どう)しようも無い不安から、洗礼の園で働いて居た時の自分が催しでギターを演奏して居る写真を見付け出して財布に忍ばせて入れて居た。

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 無言の仕打ちが概(おお)きく成り立ち向きに凌げる幻(ゆめ)の残様(のこり)が一集地(アジト)に寄り着く無様(ぶざま)を識(し)り貫(ぬ)き、白亜(しろ)い人煙(けむり)に強靭味(つよみ)が成り立つ事始(こと)の〝仕種〟は孤高に燃え立ち、暗夜(やみよ)の文言(ことば)を折りに吹き行く独創(こごと)の冷風(かぜ)には〝木馬〟が固まり、黄泉の範囲(うち)にて「自由」を覗ける無適(むてき)の進化を担って在った。唯我独創(ゆいがどくそう)、孤高の割れ目に端正(きれい)を観て居た…、空気(もぬけ)の一幻(ゆめ)には〝老婆〟が立った、月水(みず)の一周(まわり)に淀味(よどみ)が在った…、漂白(しろ)い清水(しみず)の孤黄(ここう)が降(お)り立つ…、日直(ひじき)の四肢(あし)には桎梏(かせ)が赴く…、〝Yukiko〟の美脚(あし)には迷盲(まよい)が寄り着き神秘(ふしぎ)の残光(ひかり)が一縷を相(あい)す…、未完(みじゅく)の匣から美味を織り成す…端正(きれい)な女性(おんな)を上手(じょうず)に観てから無言の苦力(くりき)に誘導され生く…、白亜(しろ)い落葉茸(しめじ)が無業の行方(かなた)に無彩(むさい)を脚色取(いろど)り破砕を傅(かしず)く…。無想の気力(ちから)を生力(きりょく)に化(か)え生き凍える躰は自体(おのれ)を取り巻く流行(なが)れた空気(くうき)に呼笛(あいず)を気取らせ悶絶して在り、悶々して生く滑稽(おかし)な独義(ドグマ)を気丈に準え机上に啄み、一幻(ゆめ)の細身(ほそみ)を明日(あす)に得るのは夢想(ゆめ)に企む主観(あるじ)で在った…。孤高の空気(しとね)に生気が発(た)つのは無垢に脚色取(いろど)る白亜(はくあ)の一集地(アジト)で、蟲の鳴る音(ね)が寝間を鈍(くも)らす茶色の孤独は不審を気取らせ、俺の白紙(こころ)に微妙を呼び込む旧い体裁(タイプ)の妄想癖には、一幻(ゆめ)の孤独が須臾に降(ふ)り生く妄言癖(もうげんへき)まで鈍らせ始めた…―――。明日(あす)の寝床を〝幻(ゆめ)の寝所(しんじょ)〟に片付け始める俺の独創(こごと)は堂々巡りで、白衣の一女(おんな)が無限に頷く文句(ことば)の概(おお)くは紋黄(もんき)に陥り、掛け替え無いまま自体(からだ)を馴らせる一幻(ゆめ)の遊女は助けを求めて、気楼に断る独創(こごと)の一集地(アジト)は黄泉の寝言を自身に足ら締め、厚い〝故意〟からその実(み)を呟く文言(ことば)の概(おお)くは日々に向き出し、一女(おんな)の頼みを無機に頬張る理想の〝香女(かじょ)〟へとその実(み)を遣った。俺の白紙(こころ)が帰順を試み白亜(しろ)い一通(とおり)を〝御殿〟に観る折り夢想(むそう)の暴露(ぼうろ)が身塵(みじん)を突き刺す幻(ゆめ)の膨(おお)くを一呑みする儘、純白(しろ)い一声(こえ)から白壁(かべ)を見出す一幻(ゆめ)の逆行(もどり)は生憶(きおく)を塗り出し、自分の黄泉から他(ひと)の黄泉へと〝帰順〟を蹴散らす無想(おもい)の初春(はる)には、無残に遺らぬ臨機の一集地(アジト)が一幻(ゆめ)を自覚(たし)かめその実(み)を馴らせる、世迷の始事(しごと)を一瞬知った…。一女(おんな)の小声(こえ)から妄想(ゆめ)が膨らむ未完(みじゅく)の一敗地(アジト)は〝宮(みやこ)〟を配(はい)して、明日(あす)への清閑(しじま)が黄泉へと片付く自体(からだ)の規矩へと一踪(いっそう)して活き、自己(おのれ)の躰を端正(きれい)に紡げる時流(ときのながれ)は夜半(よわ)の寝床に朗(あか)るい儘にて、事始(ことのはじめ)に淡麗(きれい)に流行(なが)れる一幻(ゆめ)の望遠(ながめ)に一興買った…。小説から成る美味の興(きょう)には一読出来ずに女性(おんな)の一首(こうべ)が上手(じょうず)に輝く無知の像から司教が成り立ち、夜半(よわ)の人陰(かげ)には未教(みきょう)が成り立つ不貞の一集地(アジト)が流行(ながれ)を保(も)った。孤高の現行(いま)から未順(みじゅん)が成り立つ精気の不意には漢(おとこ)が遠吠え、人間(ひと)の葦へと白紙(こころ)が流行(なが)れる矛盾の無音(おと)さえ病理に傾き、知らずに孤踏(ことう)に耐え抜く一幻(ゆめ)の一敗地(アジト)は行李に仕舞える純白差(しろさ)を観て居る。漆黒(くろ)い清閑(しじま)に幻(ゆめ)の逆走(もどり)を伝えて生く頃、俺の背中で暫く途切れる空気(しとね)の自主(あるじ)は独創(こごと)を見付けてぶらぶらしながら、〝併せ鏡〟で空気(しとね)を迷わす無垢の憂慮に自己(おのれ)を発(た)てつつ身重の呼笛(あいず)に陶酔して生く…。厚い清閑(しじま)が文言(ことば)を織り成し、幻想(ゆめ)の孤独をこの身に識(し)る頃、無限の回路に夢中を観て居た厚い清閑(しじま)を感覚(いしき)に詠み取り、呼笛(あいず)の鳴らない幻視(ゆめ)の鬩ぎに躰を寄せ得る枯渇を知った。純白(しろ)い一線(せん)から幻(ゆめ)を跨げる〝身重〟の心身(からだ)で京都の暗夜(やみよ)を退屈(ひま)に割り裂く冷たい田舎を現代人(ひと)に見て取り、厚い孤独を這わせる白壁(かべ)まで褪せる流行(ながれ)を想う故では、俺の自覚(かくご)の夜目(よめ)を気取れる未重(みじゅう)の八頭(おろち)は生気を識(し)らずに、一女(おんな)の四肢(てあし)が何処(どこ)へも向けない苦力(くりき)の呼笛(あいず)を大事に聴きつつ、無言と清閑(しじま)の滑稽(おかし)な交互を順繰り観て生く愚行(おろか)を知った。俗世(このよ)の女性(おんな)に一女(おんな)を識(し)り得ぬ不況が顕れ、一縷の望遠(のぞみ)を夜目(よめ)に見詰める生気の哀れが心身(からだ)を相(あい)して、通り縋りの一男(おとこ)の姿勢(すがた)が俗世(このよ)の流行(ながれ)に沿わずに在るのは、現行人(ひと)の文言(ことば)と現代人(ひと)の孤独が自然(あるじ)の目下(ふもと)へ解(と)け込む哀れを儚く見立てて、幻想(ゆめ)の逆行(もどり)に落胆して生く身塵(みじん)の一敗地(アジト)に偶然成った。明日(あす)の目的(さかな)を幻夢(ゆめ)に見立てて逆巻く憂き世は文言(ことば)の最中(さなか)でその実(み)を成す儘、自然(しぜん)の過程(ながれ)に自体(おのれ)を燃やせる身憶(みおく)の黄(こ)の葉(は)を既視(おおめ)に遣った。現行(いま)の自主(あるじ)を独創(こごと)に観て生く俺の乖離は俗世(このよ)から発(た)ち、一女(おんな)の気色も心身(からだ)も萎え生く身重の颯爽(かぜ)には心身(からだ)を象(と)らせず、白亜(しろ)い無力に他(ひと)を装う現世(このよ)の空虚は確信知らずで、学進(すす)む魅力を既視(おおめ)に見定(さだ)める夜半(よわ)の生絆(きずな)が俺を愉しみ、明日(あす)の目的地(さかな)へ延長して生く漆黒(くろ)い一敗地(アジト)を揚々識(し)った。俗世(このよ)の女性(おんな)に疲れを識(し)りつつ無機を知りつつ、無頼の一男(おとこ)が黄泉を落せる〝紅(くれない)仕掛け〟の太陽さえ見て、明日(あす)の経過(ながれ)と現行(いま)の自流(ながれ)を両手に見定(みさだ)め相(あい)した一女(おんな)は、俗世(このよ)の何処(どこ)にも存在し得ない聖霊(れい)の姿形(かたち)の聖女(おんな)で在った。俗世(このよ)の女性(おんな)に一切気取らぬ霊(れい)の女を併鏡(かがみ)で観る時、無地の清閑(しじま)に自由を見て取る孤独の自主(あるじ)は児(こども)に生き着き、都会の汚(よご)れにその身を浸せる丸まる女性(おんな)の一塊(むれ)の生命(いのち)は、人群(むれ)の温(ぬく)みを拭い尽(き)れない脆(よわ)い延命(いのち)を永久(えいきゅう)にも得た…。「永久(とわ)の経過(ながれ)」にその芽(め)を観るうち自体(おのれ)の挽歌を胸中(むね)に遣るのは自己(おのれ)から観た男性(おとこ)と女性(おんな)の生絆(きずな)の所以(ありか)を俄かに淀ませ、陽(よう)の静みに朗(あか)るくないのは純白(しろ)い自体(からだ)を牛耳る〝併鏡(あわせかがみ)〟の脚色(いろ)に訓(おそ)わり明日(あす)の清閑(しじま)を充分安(やす)める苦労噺(くろうばなし)の背後に得たのは、純白(しろ)い清閑(しじま)に幻夢(ゆめ)を託せる無戒(むかい)の自然(あるじ)の小声(こえ)に屈(こご)まる…。修復され生く未惑の自主(あるじ)の無限の一閃(ひかり)は奇妙の空間(すきま)に自在を薙ぎ奪(と)る孤独の鼓動(うごき)に用(よう)を満たされ、何度も何度も自己(おのれ)の理性(はどめ)を俗世(このよ)に得たのは幻想(ゆめ)の逆走(もどり)が斬新(あらた)を知り得ぬ無想(むそう)の循環(まわり)に識(し)り得た鈍感でもある。漂白(しろ)い気色に未在(みざい)を伴う人間(ひと)の自主(あるじ)は小躍(おどり)を蹴忘(けわす)れ、永々(えいえい)経過(なが)れる無様(むよう)の宮(みやこ)に自体(おのれ)の残像(かたち)を留(とど)めて置いて、俗世(このよ)と宙(てん)との清閑(しじま)の狭間に幻夢(ゆめ)を託せる大手を仰ぎ見、明日(あす)の懐(おく)へと自己(おのれ)を彷徨(まよ)わす不徳の進理(しんり)は自重を識(り)りつつ、何時(いつ)も観て来た独創(こごと)の温度の波間の一幻(ゆめ)には、形付けない不要の輪舞曲(ロンド)の未憶(みおく)の静寂(しじま)が生途(せいと)を編んだ…。

      *

 …そこには上司だった氷川(ひかわ)や肥(ふと)っちょのちょび髭男や、臨時看護師だった汚(きた)な面のひょろ男(お)や少し先輩ではあるが歳は下の(三階で働いて居た)女子なんかが写って在って、又その頃に覚えた「キャリアマンとしての気丈の持ち方」等まで甦って来て、俺を丈夫にし得た。譬え気安(きやす)めでも、その時の俺にはその「気安め」が必要だったのだ。

      *

 未完(みじゅく)に生育(そだ)てる無聊を呈した弓馬(ゆんば)の一象(かた)には自己(おのれ)の落堕(らくだ)を実に好く観る不用の自律(おきて)が魔の手を弔い、自己(おのれ)の白紙(はくし)に精神(こころ)を弔う一女(おんな)の手管(てくだ)に破滅を先見(さきみ)る一幻(ゆめ)の孤独は逆行(もどり)を良く観て幻想(ゆめ)の孤独に対して罰せる厚い白壁(かべ)には活気が静まり、一女(おんな)の片手に寿命(いのち)が安(やす)まる俗世(このよ)の俗人(ひと)から無頓が成った…。無法の戒律(おきて)に延命(いのち)を掴まれ一幻(ゆめ)の自主(あるじ)を払拭して生く孤高の一幻(ゆめ)には未来(みらい)が気流(きなが)れ、蒙昧足るまま明然(はっき)りし得ない女性(おんな)の形象(かたち)は気宙(きちゅう)に解(ほぐ)れて、両脚(あし)の向くまま四季(きせつ)を乖離(はな)れて四肢(からだ)の向きから生(せい)を得るのは、男性(おとこ)と女性(おんな)の不快な生命(いのち)を木の葉に化(か)え生く大喝(さけび)と識(し)った…―――。女性(おんな)の虚言癖(くせ)から焔(ほむら)が翻(かえ)るも夜半(よわ)の寝言は身支度して活き、人間(ひと)の許容(うち)では世俗(このよ)を奪(と)れ得ぬ未知の夕べを自主(あるじ)に識(し)れども〝未完(みじゅく)の足元(ふもと)〟に帰順を幻見(ゆめみ)た律儀の苦悩(なやみ)は散々活き果て、俺の行李に仕舞われ続ける無垢の体裁(かたち)は身塵(みじん)を蹴忘(わす)れる幻想(ゆめ)の自主(あるじ)を揚々訪れ、明日(あす)の心地を自由に統(たば)ねる自然(じねん)の旗手には生活(かて)が無い儘、未失(みしつ)に阿る〝理性(はどめ)〟の主宴(うたげ)は事始(こと)に感ける口述(すべ)さえ識(し)った。純白(しろ)い夜切(よぎ)りが宙夜(ちゅうや)を問えずに細々(ほそぼそ)生くのは俺の残像(かたち)がそのまま置かれる無断の順路の空地(あきち)の四隅で、漂白(ひょうはく)され行く未順(みじゅん)の日(ひ)の手(て)が事始(こと)に導く一つの幻(ゆめ)には、自己(おのれ)の住処を〝帰順〟に割かせる明日(あす)の遊離が散らばり続ける…。未憶(みおく)の成果(はて)から無縁の〝長者〟を現行(いま)に呼び込む初端(はじめ)の行為は、俺の一幻(ゆめ)から手懐け始める「無限」を馴らした身欲(よく)の温度で、孤高の主観(あるじ)を遠方(とおく)へ延ばせる無欲(よく)への順路は奇怪に集まり、俺の目下(もっか)で男・女(だんじょ)を束ねる〝盛期を過ぎ行く未想(みそう)の自活(かて)〟には、〝あの日もこの日〟も向きに進める一理の幻想(ゆめ)から、自己(おのれ)の偏見(せいぎ)を充分識(し)り生く俗世(このよ)の自然(あるじ)の逆走(もどり)が在った。一幻(ゆめ)の逆転(まろび)に紫陽(しよう)が差し込む長児(ちょうじ)の生憶(きおく)は透明ながらに、槐色(えんじいろ)した奥手の現代人(やつら)は悪魔に屈する俗手(ぞくて)に見舞われ、白亜(しろ)い生活(かて)から自尊(じそん)を潜める延命(いのち)の翻(かえ)りを揚々観る内、信じられない一女(おんな)の弄(あそ)びは一男(おとこ)の未完(みじゅく)を堕落に足せた。俺の孤独が一女(おんな)の一角(かど)から幻(ゆめ)に逆行(もど)され現(うつつ)を識(し)れなく、事始(はじめ)の一歩に真白差(しろさ)を彩(と)らせた加減の自主(あるじ)は向きに気構え有頂を知った。無言の感覚(いしき)に感覚(かたち)を延ばせる漆黒(くろ)い地引(じびき)は砂利を伴い、オレンジ色した〝目玉〟の一点集中地(アジト)が長児(こども)を引き連れ未憶(みおく)に宣い、がらがらがらがらがらがらがらがら…、理想(ゆめ)の崩れる孤高の主宴(うたげ)は一女(おんな)を引き立て一幻(ゆめ)の個憶(こおく)をねっとり湿らす宙(そら)の辷りを真逆に観得た。俺の白紙(こころ)は矛盾を着せ行く審理を詠み取り魔法の一体(すべて)を暗(あん)に敷き生く無想の独義(ドグマ)を抜きに掛けては、〝地引(じびき)〟の振度(しんど)が猛威を振るえる滑稽(おかし)な孤憶(こおく)を夜宙(よぞら)に訴え、事始(はじめ)の一天地(アジト)に人間(ひと)を象る余裕の日(ひ)の掌(て)を身塵(みじん)に片付け、明日(あす)の概(おお)くを帰順に向かせる「黄泉」の標(しるべ)の盲迷(まよい)の初端(すそ)には、短い長寿(いのち)に自体(おのれ)を図れる憂き世の〝坊主〟を間遠(まどお)に観て居た。金襴緞子の金(きん)の箱から少女の人陰(かげ)さえ一灯(あかり)を装い、生(せい)の虜を勢い付け得る生果(はて)を気取れる滑稽(おかし)な活気は、夜毎の空気(くうき)に紋黄(もんき)を含める未覚(みかく)の〝杜〟から宙夜(ちゅうや)を巡らし自己(おのれ)の自体(からだ)を〝猫〟に迷わす未信(みしん)の進理(しんり)は、一幻(ゆめ)の向きから相撲を繕う明日(あす)の清閑(しじま)に母体(からだ)を巡らせ、一幻(ゆめ)の文句(ことば)が両手を掴める無碍の照る間(ま)に涙腺など観た…。ムダを頬張る無益な行為に私欲(よく)を乱さぬ哀れが空転(ころ)がり身欲(みよく)の生果(はて)から文言(ことば)を迷わす無機の仕種を朗々手懐け、相手が無いのに相手をして居る白衣の標(しるべ)が興(きょう)を削ぐのは未順(みじゅん)の一点地(アジト)に無様(むよう)に群がる幻感(ゆめ)の生憶(きおく)の微動(うごき)であった…。白亜(しろ)い厚壁(かべ)から無重に拡がる四肢(からだ)を見せ合い事始(こと)の神秘に嗣業を添え得る真誠(まこと)の正義を織り成す頃には無垢の所以(ありか)を身塵(からだ)に誘(さそ)える重い芯(こころ)が幻(ゆめ)を取り添え、明日(あす)の小言を自然(あるじ)に観るのが一人(ひと)の進理(しんり)に疾走(はし)って行くのは、明日(あす)の目的(さかな)に私欲(よく)を添え得る未活(みかつ)の遊離へ思惑(こころ)を成らせる。純白(しろ)い手綱を俺の個録(ころく)に映す間際に他(ひと)の呼笛(あいず)を仄(ほ)んのり延ばせるむりの自覚(かくご)は明日(あす)に冴え発(た)つ無刻(とき)を蹴散らせ、俺と現代人(ひと)との煩悩(なやみ)を長(ちょう)ずる自然(あるじ)を読感(どっかん)して居た…。浅い魅惑を器用に配(あやつ)る孤高の寝室(ねむろ)に翌朝(あさ)を観る内、無機の音頭を間近に照らせる幻想(ゆめ)の孤独は一敗地(アジト)を萎え落ち、黄金色(きいろ)い白金差(しろさ)を幻視(ゆめ)に見詰めて脚色(いろ)の凄みを恐怖に観るのは、自己(おのれ)の総体(からだ)が宙(ちゅう)に浮かべる気力(ちから)の水面(みなも)を白亜(はくあ)に観る内、自棄(じき)と動機が同時に蠢く夜叉の脚力(ちから)を呼笛(あいず)に採った。純白(しろ)い孤独が気力(ちから)を越え活き堂々巡りの無量を囃せる事始(こと)の仕種を暗夜(よる)に観ながら、架空(そら)の寝言を土中(どちゅう)に埋め生く自体(おのれ)の感覚(いしき)は微妙に成り立ち、還元するのに「自在」を窄める陽(よう)の目下(ふもと)は機会(チャンス)に根深く、明日(あす)の豊穣(ゆたか)を詩吟(うた)に配(はい)せる供(とも)の余裕(ゆとり)を上手(じょうず)に保(も)った。

      *

 自分の行く末に対して大胆に成れた俺は、包み隠さず症状について少々大袈裟に書き込み、「これでどうだ」と言った程の挑戦的な内容を以て病院へと放(はな)って、後(あと)は成るが儘に任せる事にした。書き終え、紙を看護婦に渡す。看護婦は落ち着いて座り直し、「症状」の欄をじっと黙読した後(のち)、「うーん、一寸(ちょっと)待って下さいね。担当のドクター(か看護師と言っていた)に一寸聞いて来ますから」と、微笑が隠れたような表情を浮かべてカーテンに隠れた受付奥へと姿を晦ました。「緊張する事…」の書き出しできっと、精神科への受診を勧めるんだろうな、等と沸々考えながら俺は暫く待つ。結局、俺は門前払いとなり、中央病院から真向かいに建っていた精神病院へと案内された。俺はその精神病院へと向かった。

      *

 精神(こころ)の一敗地(アジト)が俺の長児(こども)を誘発するのち無味の審議を孤高に装う明日(あす)の孤独に加齢を観ながら、帰納の宮(みやこ)に自体(おのれ)を寄らせる回顧の相(そう)には虐待さえ無く、昨日の孤独に明日(あす)を問えない無能の未完(みじゅく)が覚悟を決め出し、俺の背中に感覚(いしき)を割けない苦慮の水面(みなも)は揺ら揺らしながら、自体(おのれのからだ)が渡航を訪ねる無欲の気色に一女(おんな)の哀れは充分咲いた。俺の幻想(ゆめ)には肌理の細かい論理が冴え出し事始(こと)の〝哀れ〟に一幻(ゆめ)を劈く明日(あす)の流行(ながれ)を絶えて束の間、昨日の孤独に恋を識(し)れない自己(おのれ)の脆弱差(よわさ)が他(ひと)を差し付け、軟い孤独を気儘に吟味(あじ)わう空気(しとね)の思春(はる)から理想を識(し)った。遠い死地から無刻(とき)を殺(そ)ぎ行く哀れに従い俺の心身(からだ)は行李を費やす無類の理屈を充分並べて、自体(おのれ)の一手(いって)が漆黒差(くろさ)に仕掛ける「任地の歪み」に他(ひと)を識(し)りつつ、一幻(ゆめ)の向くまま事始(こと)の所以(ありか)を端正(きれい)に吐(は)け得る鼓動の清閑(しずか)は、幻想(ゆめ)の網羅に孤高を知れない暴力(ちから)の自滅(ほろび)に自暴を認(みと)めた…。揺蕩い仕種に朝陽が沈まぬ孤高の仕種を紫陽(しよう)の低味(ひくみ)に算段して生く無業(むぎょう)の自主(あるじ)が羽織を着て向き、自己(おのれ)の活(い)き血(ち)を過去に絶やせる無機の仕種は怒涛に連れられ、味わい無いのを殊に吟味(あじ)わう無垢の小躍(おどり)は自体(おのれ)へ清閑(しずか)に、静寂(しずか)に待ち往(ゆ)く未明の盲理(もうり)が利損を牛耳る結果(しまつ)を識(し)った。一朝(あさ)の旧さに幻盲(ゆめ)を逆巻く進理(しんり)を携え街行く最中(さなか)の〝謳い文句(もんく)〟が微量の朝陽を事始(こと)の概(おお)くに野晒(のさば)り続けて、紺(あお)く光れる無要(むよう)の経過(けいか)は俺を運べる私運(しうん)を丸呑み、幻(ゆめ)の概(おお)くを詩吟して逝く一幻(ゆめ)の一重(ひとえ)に白紙(はくし)を見て居た。無想(むそう)の一灯(あかり)に揺ら揺ら誘(さそ)われ俺の暴途(ぼうと)は自体(からだ)の周囲(まわり)に発散され得るあらゆる一連(ドグマ)が構造せられて、幻想(ゆめ)の原野(げんや)に人煙(のろし)を上げ得る緑(ろく)の照輝(ひかり)に素発(すだ)って在った。一幻(ゆめ)の精神(こころ)が虚構の構造(かたち)へ文言(ことば)を発(はっ)する孤高の螺旋(ろくろ)を夕日に観るうち幻(ゆめ)の逆行(もどり)が逆光(ひかり)に表れ孤高の真価を紐解きながらも、一々掌(て)にする魅力の大器(うつわ)は道標(しるべ)を外せる光沢(あかり)を識(し)った。肥(ふと)い一女(おんな)と理想の女性(おんな)は俺の身元(もと)から必ず消え失せ自分の〝恒(わた)り〟に理想を棄て尽(き)る孤独の化身(かわり)を俺へと与え、幻視(ゆめ)の間(ま)に間(ま)に私欲(よく)へ消え去る独身(ひとり)の善がりを前途に脱する…。一重(ひとえ)の自主(あるじ)を孤高に見せ掛け人間(ひと)の内実(なかみ)を体裁(かたち)へ葬る憂き世伝いの矮小(ちいさ)な女群(むれ)には、男性(おとこ)の人群(むれ)から端正(きれい)に化け得る女体(からだ)の進歩を唐突でも突く―――。

 最寄りの幻(ゆめ)から未知の信(たもと)へ白衣(ころも)を投げ尽(き)る夢想(むそう)の憶からどんどんどんどん無理に阿る利己の感覚(いしき)が矢庭に膨らみ、明日(あす)の孤独に透れる二性(ふたつ)の女体(やしろ)は女頭(あたま)を蹴散らし自体(からだ)を着た儘、未知の文句(ことば)を遠くへ投げ置く無心の進化に低徊して居る…。

      *

 …精神病院の受付にて、若い女の子が笑顔を以て相対して居る。流石にカウンセリングを心得て在るような姿勢(すがた)に俺は少々感心しながら、結構待たなければ成らない予約を取り付けて、院を出た。二週間待ちだった。院から車を停めた駐車場まで歩いて居た時、俺はふと、気が楽になった気がした。少々、苦しみながら解放された気がした。

      *

 無言の気圧に厚味(あつみ)を見て取り幻想(ゆめ)の逸りに未知を植え込む未信の上手(じょうず)を紐解く内にて、明日(あす)の盛期に幻夢(ゆめ)を詠み取る神秘(ふしぎ)の一連(ドラマ)は昨日を取り込み、未来(みらい)に這い生く自己(おのれ)の生気が中途で仕舞える幻想(げんそう)さえ観た…。孤独の所以(ありか)をその実(み)に詠むうち未知の旧来(むかし)は明日(あす)を畳める漆黒(くろ)い快無(オルガ)を通感(つうかん)して活き、自己(おのれ)の白体(からだ)が所以(どこ)に在るのか昨日に識(し)り得ぬ紛いを扱い、諦め顔した二色(にしょく)の性(せい)には男・女(ひと)の狼煙が未覚(みかく)を観る儘、遂には解(と)けない過去の揺蕩(ゆらぎ)を未信に知れ得る冥利を採った…。

 明日(あす)に逆向(さかむ)く自己(おのれ)の自体(からだ)の孤独は現行(いま)でも、身欲(よく)に食み出す煩悩(なやみ)の〝日(ひ)の手(て)〟が釘を刺すまま凡庸(ふつう)を観て活き、凡庸(ふつう)の気障から一女(おんな)を象る一心(こころ)の概句(おおく)は紋様(らせん)を配(あやつ)る人間(ひと)の感覚(いしき)を宙(そら)へと吐(は)いた。

      *

 「誰が何を書いたって構わないんだ…苦節、苦節、苦節、苦節、苦節、苦節、苦節、苦節、苦節、苦節、苦節、苦節、苦節、苦節、苦節、苦節、苦節、苦節、苦節、苦節、苦節、苦節、苦節、苦節、苦節、苦節、苦節、苦節、苦節、苦節、苦節」

      *

 「鋸(のこぎり)・魂(だましい)・記録の成果(はて)迄…。一家心中を娘に勧めた母親が居た。巷一(ちまたいち)の阿婆擦れである。女々しい奴(やっこ)の紐付き、一女(おんな)は八九三(やくざ)の一男(おとこ)を愛して成り果て、宮(みやこ)落ちする堕落の園(その)へと一途(いちず)…に…溶け…入(い)り…耄碌して生く。無想(むそう)の集成(シグマ)が煩悩(なやみ)を引き連れ〝無駄〟を遅らす不慮を操り自身を引き出し、俺の精神(こころ)を充分乱せる小悪魔(あくま)の一娘(むすめ)を創って行って、旧来独白(むかしがたり)の女体(にょたい)の進化は俺を乖離(はな)れて黄泉へと入(い)った…奇想の一幻(ゆめ)から裸体が仕上がり、小雨の降る夜、未知の夕べを男女(だんじょ)に問い生く不可思(ふしぎ)の音波(なみ)から孤独を観て居た…」

      *

 信頼され得ぬ俺の周囲(まわり)は俺の内実(なかみ)を器用に掘り下げ、明日(あす)と現行(いま)との無垢の白体(からだ)を〝行李〟へ入れ行く残骸(むくろ)を講じて、独創(こごと)の通りに自体(からだ)を窄める未知の孤独を宙(そら)へ放(ほう)った。昨日まで観た拙い独語(どくご)に生気を観て採り、安い盛期に空気(しとね)を詠ませる羽化の試(たの)みが執拗に惚(ぼ)け、昆虫(むし)の如くに小雨(あめ)を遮る葉裏(はうら)の庵(いおり)にその身を捧げて、幻(ゆめ)の主観(あるじ)が何処(どこ)でも通れる温故の斑(むら)では奇妙を見詰める、旧来独白(むかしがたり)の洪水さえ観た。五時の流行(ながれ)に理性(はどめ)を見出し幻夢(ゆめ)の白露(はくろ)に奇妙を通せる昔ながらの〝撤退〟等には、俺の白体(からだ)が常に欲しがる一幻(ゆめ)の孤独が楽園(パラダイス)に成り、事始(こと)の経過(ながれ)に身欲(よく)をつい観る不可の完遂(ながれ)に流儀を見て居た…。紺(あお)い宙(そら)から孤高を寄せ得る独裁(ドグマ)が放られ、俺の徹尾に一集地(アジト)に無欲を吟じる夢目(むめ)の努力(ちから)を凡庸(ふつう)に片付け、厚い清閑(しじま)に〝夕日〟を掴める無造(むぞう)の音波(おんぱ)は〝土手〟に拾われ、罪を睨(ね)め生く無教(むきょう)に蔓延る無戒(むかい)の無知には、幻想(ゆめ)の独創(こごと)が愚痴に失(き)え生く不死の折りから純心(こころ)が成った…。

 これまで観て来た〝生気〟を脚色取(いろど)る無戒(むかい)の論破は自己(おのれ)の仰臥(ぎょうが)に自信を射止める〝宙(そら)の概句(ことば)〟に幻(まぼろし)を観て、紺(あお)い清閑(しじま)に無業(むぎょう)を発せる事始(こと)の進化に自識(じしき)を観る内、オレンジ色した柔裸(やわら)の生(せい)には事始(こと)の盛期が矢面(おもて)に佇み、尽くす〝我が身〟を利潤に寄らせる〝空気(しとね)〟に準じた実体(からだ)を観て居た。生気の柄(え)に成る独創(こごと)の連呼は御伽の上手(じょうず)が実体(からだ)を編む内、苦労を意図して実相(かお)を観て採る神秘(ふしぎ)の気の根を自家(じか)に詠み取り、自己(おのれ)の幾面(かお)から成気(せいき)を詠み採る無機の文句(ことば)は思想(おもい)に基づき、俗世(このよ)を統(まと)める何処(どこ)へ行っても自己(おのれ)の救いを決して得られぬ現代人(ひと)の胡坐を身欲(よく)から識(し)った…。俺の純心(こころ)は〝俗世(このよ)の実体(からだ)〟が誕生してから身欲(よく)の目的(さかな)を妖美(ようび)へ任せる〝一女(おんな)の試(ため)し〟に衰弱して活き、波浪を射止めて精神(こころ)を諫める無極(むきょく)の自主(あるじ)を膝に置くのは、厚い白壁(かべ)から文言(ことば)を拾わす無理を透した悪態へと活き、出来事(こと)の始めに億尾を脚色(かざ)れる不知(ふち)の一色(いろ)には無地(むぢ)が透され、一幻(ゆめ)の波恒(わたり)に滑稽(ふしぎ)を観るのは俺に懐ける〝輪舞曲(ロンド)の微睡(ねむり)〟にふと顕れても在る…。生気の活き尽(き)る途(みち)を忘れて自己(おのれ)の一幻(ゆめ)から篭りを観るうち一幻(ゆめ)の無垢から自体(からだ)を損ねる背低(せびく)の伴侶をお供にした儘、俺の活気は一笑(わらい)を掲げて宙(そら)を相(あい)する夜半(よわ)の見事を気取って行った。俗世(このよ)の女性(おんな)が全て消え生く誠に目出度い現(うつつ)を講じて俺の周囲(まわり)を陽(よう)に歯向かう純(うぶ)の気色を真逆(さかさ)に見て取り、明日(あす)と現世(このよ)の名高い延命(いのち)は〝矛盾〟に準じて感覚(いしき)を翻(かえ)して、自己(おのれ)の一夢(ゆめ)から顧みるのは孤高の〝自主(あるじ)〟へ他(ひと)を立てない未完(みじゅく)の想起の哀れでもある。俗世(このよ)の女性(おんな)が切(せつ)に欲しがる危険の男性(おとこ)は野獣(けもの)の視(め)に堕ち、幻(ゆめ)の未覚(みかく)に不純の疾走(はし)れる漆黒(くろ)い空間(すきま)が自然(あるじ)と成り立ち、脆弱(よわ)い気色を純白差(しろさ)に透せる〝刃物(はもの)〟の所以(ありか)は螺旋(ろくろ)から観て、端正(きれい)な現物(もの)から空気(しとね)を巻き取る不順の生果を空気(しとね)に保(も)つ内、明日(あす)に活き生く不格好(かたち)の成果は清閑(しずか)な不埒を夜毎に愛した…。俺の白体(からだ)がふらふら昇れる一宙(そら)への窪みは百足の八頭(あたま)にその実(み)を観て取り、明日(あす)の奈落を淡麗(きれい)に仕切れる現行人(ひと)の暗黙(やみ)には自重が先立ち、相(あい)した要局(かなめ)が生(せい)を射止めぬ明日(あす)を詠むのは思中(しちゅう)の私欲(よく)へと独創(こごと)を見積もる私吟(しぎん)の現(うつつ)と瓜二つにある。寿命(いのち)の未完(みじゅく)が嗣業(こと)の未完(みじゅく)に、その視(め)を安(やす)めて初めて詠み取る矛盾の信仰(めいろ)は聡明差(かしこさ)から成り、厚い白壁(かべ)から思春(ししゅん)へ這入れる一幻(ゆめ)の気取りは耄碌した儘、事始(こと)に纏わる奇怪に頼れる〝憂き世〟の調べに感覚(いしき)を識(し)った…。

      *

 …壁はまだ立って居る。まるで全てを終えて、僕はこの自室へ帰って来た。家に帰り、母親にはこれまで自分に起きた事をもう一度、また今日病院で起きた事を全て話し終えて、また話し途中に眩(くら)っと成った。少し、心臓も苦しい気がした。自律神経失調症とあれだけはっきり告げられると僕は、そのクリアに耐え切れず、あの診察内科、またその後に寄った蔦屋と店でも倒れないようにと踏ん張る事を余儀無くされた。何とか無事だった。何でも無い事が、本当に幸せに思えるのである。経験して、矢張り分かる事であった。帰って母親に全てを話し、横になって『相棒』を一緒に観て居た。

      *

 無言の経過(とき)には一幻(ゆめ)の速差(はやさ)が横に波(わた)って独創(こごと)の信仰(めいろ)を追随され行く〝怒涛の自主(あるじ)〟の気忙(きぜわ)に従い、初めから無い憶測尽くめの相(あい)の四季(きせつ)に幻夢(ゆめ)を観ながら行進し得たが、幻(ゆめ)の身許は俺憶(きおく)をどんどん溜め得る魔力(ちから)の水面(みなも)に一波(なみ)を撓(しな)らせ、明日(あす)の記憶へ途(みち)を訪ねる一色(いろ)の違いを見せ付け始めた。無論に生き得る未知の清閑(しじま)は未知へ活き生く独身(ひとり)の両腕(かいな)と、現行(いま)の帳へ充分蔓延る白体(からだ)の脚力(ちから)を噴散(ふんさん)して行く無地の飼い葉を両(いず)れも揃わせ、相(あい)の気色へ通感(つうかん)せしめる魅力(ちから)の自覚(おぼえ)は柔裸(やわら)ながらに、漂白(しろ)い幻(ゆめ)から落沈して行く暗い波間に人間(ひと)を気取った…。純白(しろ)い温度が暗夜(よる)の清閑(しじま)へ生還して生く無地の空気を見事に訓(おそ)わり一女(おんな)の生体(からだ)に紅点(べに)を着飾る見物(みもの)の〝呼笛(あいず)〟を思春(はる)に観て採り、一幻(ゆめ)の波間(あいだ)を転々(ころころ)空転(ころ)げる女性(おんな)の成体(からだ)を通感するうち俺の進化は〝途(みち)〟で止(と)まって、〝気違い沙汰〟から苦労を教わる晴れの景色を既視(おおめ)に観て居た。俺の形は無機と通して幻(ゆめ)を頬張り脆弱(よわ)い自覚(かくご)を生気に切り売る易い〝問い〟など密かに設けて、気分が安(やす)まる未知の労苦へそのまま往く内、四季(きせつ)外れの自迷(まよい)の文化が白紙を透して生(せい)を得られる、黄泉の身元を確かに識(し)った。一女(おんな)の初歩(いろは)が手数(てかず)を揃えて闊歩(ある)いて生くうち真白(しろ)い肢体(からだ)は益々膨(ふく)らむ概(おお)きな体躯へ順繰り翻(かえ)り、他(ひと)の「一通列車(でんしゃ)」が車輪を外せる空気(しとね)の信仰(めいろ)を揚々聴きつつ、幻想(ゆめ)の薄扉(とびら)が目前(まえ)に伸(の)ばさる一幻(ゆめ)の規矩からその実(み)を退(ひ)いた…。味気無いのが〝物足りない…〟など感情(こころ)の礫は飛び火に生き着け、白亜(しろ)い純情(こころ)に人煙(のろし)を挙げ行く〝拙い生憶(きおく)〟は八頭(おろち)を従え、事始(ことのはじめ)に常に視(め)にする緩い惨事は未踏(みとう)を吟味(あじ)わい、子供と成人(おとな)の温(ぬる)い経過(けいか)を事毎(ことごと)器用に独裁して生く「端正(きれい)な女性(おんな)の手下(てくだ)」を覗けながらも、未知に対して文言(ことば)を達せる無知の一泡(あぶく)は人界(かぎり)を識(し)り得た…。

      *

 俗世間とは関係を断(絶)っている。

      *

 純白(しろ)い気色が有耶無耶ながらに現代人(ひと)の常識(かたち)を壊しながらも自己(おのれ)の活力(ちから)を自活(かて)に化(か)え得る未重(みじゅう)の郷里を望む間も無く、一女(おんな)の色情(こころ)は争いながらに男性(ひと)の堕落を常に計れる憤怒の精神(こころ)を真逆(さかさ)に観つつも、甲斐無き自主(あるじ)の実り大きな生果の成果(はて)には、自己(おのれ)の野望(のぞみ)の初端(さき)を火照らす「黄泉の腕力(ちから)」が矢庭に発(た)った。清閑(しずか)な暗夜(やみ)には〝正(せい)〟を論ずる〝踵〟が揺れ浮き、人間(ひと)の一幻(ゆめ)から真面に成り立つ俗の日華(ひばな)が一向先生(さきゆ)き、幻(ゆめ)の主観(あるじ)の人煙(けむり)に問うのは純白(しろ)い行李の柄(から)の目下(もと)にて、他(ひと)の限界(かげり)が支障を見付けて俗世(ぞくせ)を生くのは、自然(あるじ)の一敗地(アジト)で幻夢(ゆめ)を切り裂く夕日の温(ぬる)さに還る途(と)に成る―――。

 幻視(ゆめ)の未活(みかつ)に自体(おのれ)の野望(のぞみ)が活気を識(し)るうち精神(こころ)を詠み取り、日々の律儀に従順(した)がう我には〝自我の生憶(きおく)〟が一向削ぎ発(た)ち、現行人(ひと)の哀れを容易い感覚(いしき)に仄(ほ)んのり幻見(ゆめみ)て孤踏(ことう)の春嵐(あらし)に企図を描(か)くのは、「明日(あす)の延命(いのち)」を淡麗(きれい)に識(し)り抜く、脆弱(よわ)い常識(かたち)の正義でった…。母性(はは)の記憶に脆(よわ)い気を添え身辺(あたり)を問うのは生衰(せいすい)して行く一人(ひと)の言霊(こだま)の哀れに活き得る一声(こだま)でも在り、意味の吟味(あじ)さえ素直に画せる人間(ひと)の自然(あるじ)の生気の裏面(うら)には、孤高の根城を淡く畳める一個の自主(あるじ)の文言(ことば)でしか無い…。迷う果(さ)きから信仰(まよい)が産れる現代人(ひと)の労観(ろうみ)て我が振り直すは〝生(せい)〟の許容(うち)から威厳を保(たも)てる個有(こゆう)の自主(あるじ)に冒涜さえ突け、一幻(ゆめ)の逆行(もどり)に俊敏足り得る無垢の盛起(せいき)の没頭等には、虫唾ばかりが〝哀れ〟を呈せる預言の御力(ちから)の微分で在った―――。

      *

 ―――その内容で、オカルト系二本と、精神病二伴とを扱ったものが在り、「オカルト系」の方には拒絶反応が起きたが、「精神病を扱った内容」には共感できる処が在り、観て居て怖かったが嬉しかった。「俺は大丈夫」、又繰り返した。

      *

 無音(おと)の無いのを発音(おと)と識(し)りつつ虚言に纏わる概(おお)きな諸刃を一幻(ゆめ)の文句(ことば)に据え置きながらも、明日(あす)の孤独へ差し駆け始める既視(すで)に観て居た「自分」を着飾り、名の無い経過(けいか)に身塵(みじん)を鈍(くも)らす滑稽(おかし)な微動(うごき)に自調(じちょう)を観て居た。鈍(くも)る〝揺れ〟から瞬間(とき)を繋げる経過(ながれ)が併(あわ)さり、他(ひと)の眼(め)を見て空気(もぬけ)を気取れる夜半(よわ)の透気(とうき)を目近(まぢか)に垣間見、概(おお)きな残光(ひかり)を残像(かたち)に当て射る一幻(ゆめ)の歩速(ほそく)を調子に見て居る…。真綿の軟裸(やわら)に加減を知るうち幻夢(ゆめ)の紋黄(もんき)が文句(ことば)を象り、五月蠅(あわ)い気色を自答へ立たせる一幻(ゆめ)の目的(かず)へと仕上げて行った。成果の成らない幻(ゆめ)の生果(はて)から一局(ひとつ)が仕上がり、俺の焦がれは現代人(ひと)を透して〝宙(そら)〟を統(たば)ねる無機の故国を明日(あす)へと手懐け、白体(からだ)の概(おお)きな真心(こころ)の夜目(よめ)には二度と咲かない嗣業(しぎょう)が発(た)った。悔いが残らぬ一幻(ゆめ)の一通(とおり)に俺の残像(かたち)が思惑(こころ)と仕留めて、一女(おんな)の両手に終ぞ遺れる夜半(よわ)の寝言(ことば)は端正(きれい)な儘でも、奇妙を相(あい)せる夜露の寝床は光明(あかり)の延びから古豪を観て居た。古豪の進化は俺の背中に表れながらに明日(あす)を好く知る幻想(ゆめ)の鬱から次第に膨らみ、女性(おんな)の孤独が表情(かお)を掲げて宙(そら)の中央(あたり)へ自己(おのれ)を失う一幻(ゆめ)の理性(はどめ)に悶絶さえ見た。「明日(あす)」の形成(なり)から自体(おのれ)の独創(こごと)が光明(あかり)を遮る「明日(あす)の柔味(やわみ)」を至難に儲けて、朗(あか)るい一敗地(アジト)が透明色した「黄泉」の塒を襲って生くのは経過(とき)の流行(ながれ)に気忙(きぜわ)を識(し)りつつ、旧来(むかし)から成る未完(みじゅく)の努力(ちから)に苦労を擡げる奇怪であった。白亜(しろ)い一点地(アジト)が病(やまい)を見限る宙(そら)の光明(あかり)は不純を睨(ね)め付け、一人二人(ひとりふたり)と路銀を蹴散らす純白(しろ)い禿(かぶと)は未完(みじゅく)を装い、女性(おんな)の匹夫(ひきふ)を下駄に寝かせる幻想(ゆめ)の愚行(おろか)に未順(みじゅん)を観た儘、「明日(あす)」の大器(うつわ)に尻を上げ生く身重の〝彼女〟を追悼して居た…。俗世(このよ)の純白差(しろさ)に人間(ひと)の躰を皆殺しにして〝土手(おか)〟の上から人間(ひと)を蹴散らす個生(こせい)の目下(ふもと)に朗(あか)るく観たのは、明日(あす)の体裁(かたち)に活力(ちから)を養う無難の好意に追随して居る…。

      *

 …その内、十八時過ぎに父親が帰って来た。母親は既に俺から事細かく俺の事情を聞いて知って居る為、帰って来て未(ま)だ何も知らない父親に俺がどう対処するかを気にして居るんじゃないか、と俺は又勘繰って居た。母親は確かにそう感じて居たかも知れないが、自然に、普段通りに振舞っていたようだ。

      *

 幻想(ゆめ)の一通(とおり)がこのまま着飾り明日(あす)の一定(さだめ)を打診するうち一幻(ゆめ)の独創(こごと)を朗(あか)るくして活き、俺の背後は〝君(きみ)〟を洩らさぬ五月蠅(あわ)い凌ぎを滑稽(おかし)く観て居た。純白(しろ)い気色が凡庸(ふつう)に見送る事始(こと)の翻(かえ)りは通底(そこ)に在りつつ身塵(みじん)の白体(からだ)を努々、紐解く未知の独創(こごと)は孤独を知らずで、幻(ゆめ)の初端(はし)から現(うつつ)の末端(はし)まで物の見事に運怒(うんぬ)を消すのは、未覚(みかく)に留(とど)まる端正(きれい)な吃(ども)りが未知の首(こうべ)を川面(かわも)に観て居た。幼い一女(おんな)が暗夜(よる)を往くうち自分に豊かな景色を拡げて、明日(あす)の孤独を明日(あす)に識(し)るのは自体(おのれ)の狂気を弾みに洩らさぬ黄泉の小敗地(アジト)に目論む内にて、矮小(ちいさ)な生憶(きおく)が文言(ことば)を呑み込む夜半(よわ)の目下(ふもと)を概(おお)きく観て居た。芸の無いのが「芸である…」など現(うつつ)へ蔓延る現代人(ひと)の渦中(さなか)は孤独を画(かく)せる蹂躙(ちから)を徹して、自己(おのれ)の延命(いのち)に執着して行く自覚(おぼえ)の白体(からだ)は転々(点々)朗(あか)るく、夜半(よわ)の小人(こびと)が俺に来るのを黒夜(よる)の足元(ふもと)に気付く頃には、俺の小敗地(アジト)が清閑(しずか)に欲しがる暗夜(よる)の小人の〝徐(おもむ)ろ…〟でもある。白亜(しろ)い景色が〝白夜〟を呈して「黄泉」に近付く可愛い瞳(め)をした小さな一女(おんな)は、俺の周囲(まわり)を徘徊して生く奇妙の気色を噴散(ふんさん)しながら遠くに映れる「黄泉」の景色を凡庸(ふつう)に観る上私算(しざん)を講じ、女性(おんな)の体裁(かたち)が内実(なかみ)を識(し)れずに片付き生くのを不可思(ふしぎ)の眼(め)を持ち望遠(なが)めて居るのは、俺の〝隔離〟に男性(おとこ)が活きない凡庸(ふつう)の瞳(め)をした老人だった…。騎士(ナイト)の眼(め)をした脆弱(よわ)い悪魔の首(こうべ)の裏面(うら)には漆黒(くろ)い共鳴(さけび)が憤怒を紐解く一灯(あかり)の点(てん)から感覚(いしき)を据え保(も)ち、自己(おのれ)の威嚇が暗夜(よる)を講じる脆(よわ)い億尾の体熱(ねつ)の往路は、日々の温(ぬく)みに孤高が脆(よわ)まる漂白(しろ)い気色の悶絶だった―――。

 明日(あす)の感覚(いしき)を常に先取(さきど)る明日(あす)の文句(ことば)を自分に観た後(のち)、明日(あす)の語録を淡麗(きれい)に気取れる自体(おのれ)の旧巣(ふるす)は天国(くに)を見て採り、現世(このよ)の一灯(あかり)に現代人(ひと)を葬る矮小(ちいさ)な悪事は成果(さき)を見取れず、脆弱(よわ)い八頭(おろち)が均衡(あいだ)を採れない脚力(ちから)の歪みを充分殺(そ)いだ…。

      *

 …ベッドの上で寝ながら足を組んで居る。調子の良い時のポーズだ。やはり父親に俺は中々話し出すきっけけを見付けられず、母親が何かきっかけのようなものを作ってはくれないものか、と期待なんかもして居た。僕が心療内科を出た辺りから母親に対して考えて居た事は、唯でさえ出来ていない結婚がこれで又現実的に(具体的に)遠退き、出来なくなったという事を哀しむのでは、と言う事で、自分でも自分が哀しかった。「こんな所にお嫁なんか現実的に来る筈が無い」、この言葉が重く伸し掛かる。しかし精神科ドクター兼カウンセラーが言った「自律神経失調症とは正しくは病名ではない。病気として認められてないから、病名には成れない。」という言葉が嬉しく、頭に異常が無かった、と出来た現実が嬉しかった。

      *

 無言(ことば)の魅惑に俺が染められ夜半(よわ)の空気(しとね)に巻かれて生く頃、未知への孤独が生気を欲しがる未修(みしゅう)の勇気に凡庸(ふつう)を観た儘、事始(こと)の一列(ならび)に精神(こころ)を欲しがる一幻(ゆめ)の倫理は遠退きながらも、明日(あす)の孤独へ現行人(ひと)を退(の)け得る修惚(おもいのいろは)が未知へと跳んだ…。明日(あす)の行方に彷徨う八頭(おろち)が麝香(じゃこう)の体(てい)して彷徨う辺りは〝空気(もぬけ)〟の温味(ぬくみ)が苦労を擁する可愛い瞳(め)をした未踏(みとう)の死地にて、明日(あす)の旧差(ふるさ)を努々講じる身欲(よく)の四肢(てあし)は一人(ひと)を配(はい)せる微睡みさえ識(し)る…―――。俺の小言が寝言を透して脆差(よわさ)に耽(ふ)け込む独人(ひとり)の一敗地(アジト)は噎び泣きつつ、緩い身軽に一敗地(アジト)を締め出す労苦の成果(はて)へと間延びを顧み、明日(あす)の哀れを我が身に併せる幻夢(ゆめ)の翻(かえ)りの文句(ことば)の概(おお)くは、孤高に跨る生憶(きおく)の側(そば)へと一幻(ゆめ)を配(はい)せる司途(しと)の空転(まろび)に去来の身許を景色に巻け得る「無人」の孤独を狂惜(くるお)しくも見た。夜半(よわ)の静味(しずみ)に自己(おのれ)の一敗地(アジト)を充分繋げる未開に紐解く一人(ひと)への煩悶(なやみ)は、昨日と現行(いま)とに脆(よわ)く活き得る白衣(ころも)の初端(すそ)から奇妙を見積もり、明日(あす)の幽(ゆる)みを端正(きれい)に見限る自体(おのれ)を取り巻く空気(しとね)の一灯(あかり)は、嗣業の一集地(アジト)が音頭を識(し)れない脆(よわ)い仕種の女性(おんな)の肉体(からだ)に〝夜目(よめ)〟を着せ得る余韻(おと)を投げつつ、幻(ゆめ)の背後(うしろ)を追随追い生く〝追走者〟の視(め)をじわじわ識(し)った。振動(ふるえ)を鈍(くも)らす暗夜(あんや)の傍(よこ)には漆黒(くろ)い肢体(からだ)が矮小(ちいさ)く訪れ、明日(あす)の静寂(しじま)へ充分遠退く夜半(よる)に活き生く一通(とおり)の白体(からだ)が漂白味(しろみ)を吟味(あじ)わう一局(ひとつ)の凝(こご)りを自分の一敗地(アジト)へ引き込む絵図さえ、黙る暗夜(あんや)の〝去来の画(え)〟を観て余裕(ゆとり)を頬張る無貞(むてい)を識(し)った…。孤高に耐え得る密かな迷盲(まよい)は宙(そら)の垣根を越えて活きつつ、現(うつつ)に佇む退屈(ひま)な等高線(せん)から白体(からだ)を惜しまず苦界を退(しりぞ)け、予後の諦念(おもい)を背後(はいご)へ敷きつつ幻(ゆめ)の如くに延命(いのち)を観て居た。白体(からだ)の意志から〝企図〟を頬張る瞑想(まよい)を蔑み、夜半(よわ)の理郷(くに)から経過(とき)を侍らす苦境を蔑み、苦界の末期(まつご)を夜目(よめ)に名高い自己(おのれ)の感覚(いしき)へ一女(おんな)を観る内、無己(むこ)の生気が開拓して行く杞憂の一敗地(アジト)は連命(いのち)は危うさから発(た)ち、幻想(ゆめ)の一路(いちろ)を訣別さえ得る目下(もっか)の文言(ことば)を孤独へ撒いた。白紙(こころ)の四隅(すみ)には俺の奈落が大口(くち)を開(あ)けつつ暗黙(やみ)の身許を遠くへ退(さ)げ生く孤高の調子に幻(ゆめ)を観て採り、明日(あす)の身許を虐待して生く稀有の独義(ドグマ)は沈黙すれども、夜半(よわ)の理郷(くに)から沈走(ちんそう)して往く滑稽(おかし)な機会(とき)から自体(おのれ)を突いた…。私相(しそう)の典型(タイプ)は我を見捨てて掃除して生く気球の発狂(かたち)を大目に見て居り奇妙な進化を一幻(ゆめ)に巻け得る弓の三日月(つき)から加減を気取らせ、真冬(ふゆ)の機会(とき)から寝室(ねむろ)を遠退く自体(おのれ)の規矩(きく)には身寒(さむ)さを募らす、未覚(みかく)に死太(しぶと)い自主(あるじ)が発(た)った。

      *

 「彼には彼の、俺には俺の…これが唯一の、俺だけの牙城(とりで)に在る…」

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 呆れ顔した欲目(よくめ)の一男(おとこ)が涼風(かぜ)の割く間(ま)に取り残されて、一女(おんな)の気色が小競(こぜ)る間(あいだ)に一局(ひとつ)の文言(ことば)を矮小(ちいさ)く吐(は)いて、小男(おとこ)が一通(おもて)で下露(げろ)を吐(は)くのがいとも容易く不快に観える…。幼児(こども)の小競(けんか)が真面に出で立ち空慮(くうりょ)を引き添い幻想(ゆめ)の廓に〝囲い〟が在るのを目敏く見付けて憤怒を発し、事始(こと)の意味から化粧を待つのが女性(おんな)ではなく一男(おとこ)に在るのを、無新に翻(かえ)れる昼夜の許容(うち)にて誠(まこと)に真面に釣れなく観えた…。真白(しろ)い手紙に白紙(こころ)を貫き妙な一念(おもい)を懐(おく)へ溜め込み、未完(みじゅく)のきらいが矢面に立ち孤高の一体(からだ)を一宙(そら)へ掲げる発狂して生く真摯に放(ほう)って魅せても孤高の生憶(きおく)は以前(まえ)に増し活き増長して生き、感覚(いしき)の化身(かわり)が宙(そら)に満ちない苦労の〝凡そ〟の路銀の懐(おく)には、活きる生気に恰好(かたち)が付かない不向きの生徒が伽藍を観て居た…。過去の感覚(いしき)が精神(こころ)を堕(お)として堕落の路(みち)から思春(ししゅん)を見たのは一向変れぬ未順(みじゅん)の一命(いのち)と何等変らぬ露命(ろめい)で在って、一触即発、俗の味方の〝見事〟の範囲(うち)から器用に従い俺に生(く)るのは、明日(あす)の一敗地(アジト)が矛盾を満たさぬ翌朝(あさ)の神秘(ふしぎ)の手桶に在った。俗の身重が身元を報さぬ生死へ就く内、奇妙の奈落へ満足したまま紙とペンとで貫く白紙(こころ)は破れ被(かぶ)れの防御と偽り、不良から成る矮小(ちいさ)な小悪魔(あくま)の手筈の懐きの側(そば)には、俺の白体(からだ)を宙(てん)まで笑える淋しい女性(おんな)の気性が在った。

 一男(おとこ)の翻(かえ)りが昨日と今日とで一等(ため)に成るのを未完(みかん)を欲しがる現代人(ひと)の本能(よく)から翼を生やせる文句(ことば)と識(し)り付け、呪いから観る宙(そら)の感覚(いしき)の浚いの人陰(かげ)には事始(こと)の哀れが表裏(ひょうり)を顕し、「明日(あす)」の行方を精神(こころ)に観るのを酷く嫌がり不安に気取らす俺の気配が一体(からだ)を裂いた…。無重の白体(からだ)が一女(おんな)の掌(て)に堕ち宙(そら)を慰め、遠慮の仕種を孤高に見送る低い立場の温故の人群(むれ)には、これまで見て来た一幻(ゆめ)を奏でる大男が居て、俺の狂気を無住(むじゅう)の陋屋(やしろ)へついと慰め抛り込め得る未信(みしん)の挙句を成果に採った。何時(いつ)まで経っても経過(とき)を成さない夢遊の揺蕩(ゆらぎ)は白体(からだ)の夢見を片目に得ながら自由の孤独が俺にも識(し)られぬ学者の労苦を紐解きながらに、事始(こと)の意味から「自由」を紐解く一本哀れな自重の進化を、神々しく咲く一幻(ゆめ)の歩先(ほさき)へ詩吟を呈して、明日(あす)の夜目(よめ)から「未順(みじゅん)」を鈍(くも)らす不可思(ふかし)の生憶(きおく)に苛まれて生く「矛盾の日(ひ)の掌(て)」を真面に観て居た―――。

      *

 精神病とは、二十~二十四歳、二十五歳迄には、大抵の人が罹るものである。皆、気付いていないだけで、社会に出て他人と接し続けて行けば、必ず何等かの精神疾患に罹るものなのだ。そして『気付く時』というのは、生活に支障を来すように成ってからという訳である。受信に行くから。受信して、初めて自分が診断された精神病だと気付くのである。」この言葉が又不意から何度でも何度でも、心中から補足を付けて甦って来た。調べた訳でも無い、唯の自分用の気安めでしか無かったかも知れないが、妙な根拠と説得力とが在った。そうなのではないか、と信じて居た。その精神科から今日、初めて、三種類の精神安定剤を貰って帰って来た。今まで一度も呑んだ事が無い為、少し服用する事に対して躊躇する。

 不毛に覗ける遊慮(ゆうりょ)の傀儡(どうぐ)が負け犬貌(がお)した体裁(かたち)で現れ、卑屈に幾つも断行して生く密室(へや)の審査を掃除しながら未活(みかつ)に包(くる)める笑顔を見せ付け、白体(しろいからだ)を天使に捧げる天女(おんな)の息吹を手頃に観ながら、明日(あす)と現行(いま)との私欲(よく)の目的(さかな)を「俺」に見る内、物憂い姿勢(すがた)に乱犠(らんぎ)を観て生く決死の旧差(ふるさ)を嗜好に添え得た。奇妙な八頭(どくろ)の事始(こと)の懐(おく)から懐疑が蹴上(けあ)がり自体(おのれ)の夜目(よめ)から未活(みかつ)に尋ねる概(おお)くの〝哀れ〟が現行(ここ)へ跳んでも、誰も無いのを「誰か居る…」など虚しい気迫に圧(お)されるばかりで、女性(おんな)の一集(つどい)は糞(くそ)に紛れる一幻(ゆめ)の美味から感覚(いしき)を挙げた…。一女(おんな)の樞(ひみつ)を楼気(ろうき)に静める未有(みゆう)の足元(ふもと)は不活(ふかつ)の元理(げんり)に自然(あるじ)を見て生く精子の独(どく)から闊歩を見出し、詠み取る明日(あす)から八頭(おろち)を突(つ)い裂く孤高の体熱(ねつ)には懐疑を識(し)られず、恰好(かたち)ばかりを感覚(いしき)を巻き生く女性(おんな)の愚行(おろか)を艶(あで)に観て居た。幾つも幾つも過去の〝傘下〟が騒(ざわ)めき始めて幻(ゆめ)の麹(こうじ)が鎌首(くび)を擡げて四季(しき)の行く手を這(ほ)う這(ほ)う独歩(ある)けば、未知の両腕(かいな)が突拍子も無く無己(むこ)の自己(おのれ)を漆黒(くろ)に染め活き、人生(みち)の成果(はて)には人間(ひと)の冴えない無理の理屈が野分を差し出す。未亡の一女(おんな)が自主(あるじ)を失くせる二重(ふたえ)の空間(すきま)を一幻(ゆめ)の如くに平々(ひらひら)寄せ付け、自己(おのれ)を愛せる未知の残香(かおり)は白紙(こころ)を呼び捨て無垢へと魅せた。無断の果実が仰天して生く孤独の主観(あるじ)は昨日を腐らせ、幻想(ゆめ)の所以(ありか)をきちんと象る懐(おく)の仕手から欠伸を真似して、最高(たか)い眼(め)をした孤独の主観(あるじ)に残光(ひかり)を齎す身重を差し付け、苦労と孤独を一緒に象(と)らない昼間に象る未完(みじゅく)の成果は、父と母とに児(こども)を感じる暗黙(やみ)の独義(ドグマ)に先行きを観た。白亜(しろ)い正義を一幻(ゆめ)の寝床に擡げる儘にて自己(おのれ)の一点地(アジト)に男女(だんじょ)を繋げる身寒い進化を足蹴にしながら、陽(よう)の照る日を親子に魅せない堅い姿勢(すがた)に自己(おのれ)を観て居た…。眠気眼で一女(おんな)を抱(いだ)ける孤高の独義(ドグマ)は闊歩を折り出し明日(あす)の交響(ひびき)に感覚(いしき)を棄(な)げ得る私欲(よく)の文言(ことば)は無垢の嫉妬(ほのお)に狂い咲きする孤踏(ことう)の白亜差(しろさ)は二性(ふたつ)に意図する弓を保(も)ち得て、独り部屋にて無言を切り裂く男性(おとこ)の残骸(むくろ)は生気を断った…。明日(あす)への速さを四季(しき)に識(し)りつつ無言の様子は俺を企み、昨日と今日とで感覚(いしき)を焦がした無音(おと)の空転(まろび)は宙夜(ちゅうや)を問わずに、〝慌て眼(まなこ)〟の独尾(どくび)を窺う現代人(ひと)の眼(まなこ)を日々へ保(も)たせ、選り取り見取りの〝愛〟の体裁(かたち)は明日(あす)を識(し)り往く往果(おうか)を識(し)った…。苦労の一派(こずえ)に未定(さだめ)を保てる延命(いのち)の空転(まろび)は現代人(ひと)の感覚(まろび)は現行人(ひと)の感覚(いしき)を咄嗟に引き生く葦の姿勢(すがた)に一舵(かじ)を観て取り、昨日と今日とで微かを揮わす黄泉の身許は一色(いろ)を呈さず、選り取り見取りの俺の白紙(こころ)は未来(さき)へ先駆け一女(おんな)に殺(や)られた。幻(ゆめ)の生果(はて)へと一女(おんな)を葬る暗黙(やみ)の清閑(しじま)は延命(いのち)を観て取り、昨日と現代人(ひと)へと自主(あるじ)の〝生気〟を活性させ得る〝割腹自殺〟の懐(おく)を遠退け、明日(あす)の身許へ随分独走(はし)れる無垢の病理の煩悶(なやみ)の成果(はて)には、自己(おのれ)と未知との拙い安眠(ねむり)が事始(こと)を成し行く〝哀れ〟を観て居た。純白(しろ)い暗夜(よる)には俺の右手が女性(おんな)を煩い獣貌(けものがお)した無口の残骸(むくろ)を現行(いま)の事始(こと)から遠ざけ始めて、自己(おのれ)の夜半(よわ)へと煩悶(なやみ)を差し出す事始(こと)の戒律(おきて)は成らずに留(とど)まり、明日(あす)の行方(どこか)で端正(きれい)を煩う一幻(ゆめ)の蹴鞠に動転して居た。女性(おんな)の生気が一夜(いちや)の許容(うち)から支離を着飾り、流行り文句の〝文句(ことば)〟の初端(はし)から発狂(くる)い水面(みなも)に落下する時期(ころ)、無断の初歩(いろは)が残光(ひかり)を差し出す無意(むい)の火花は日華(ひばな)と成りつつ、哀れの現代人(ひと)から隣人(ひと)を洩らせる愉快な道理を完築(かんちく)して居た。白亜(しろ)い帳が遠くを観る頃道理を説いては〝俺の躰〟が自由を見付ける荒い陽気を都会へ蹴忘(けわす)れ、明日(あす)に羽ばたく愚かな女性(おんな)の〝向こう〟の憂慮は、雫石から〝夫婦(めおと)〟を破れる無知の辛苦を舐め干し続けた。「大好き」ばかりを火吐(ほざ)きながらも一定(さだめ)の音頭が思中(なか)を競歩(ある)けば〝身重の軍歌〟は虚空へ抛られ、気味に在りつつ未覚(みかく)を扱う独人(ひと)の論理は晴嵐(あらし)を講じて、俺の背中と一女(おんな)の自主(あるじ)を孤島へ見送り懺悔を識(し)った。自体(おのれ)の生憶(きおく)を現行(いま)に啄み明日(あす)の延長(ながさ)を活き尽(き)る軟裸(やわら)は無垢の末端(はし)から白紙(こころ)を見て居り、自己(おのれ)の白体(からだ)に感覚(いしき)を感じる無意(むい)の奥義(おく)から四肢(てあし)を繕い、事始(こと)を見て取る〝併せ鏡〟に未知の歪曲(ゆがみ)を感じ見た後(のち)、潤々々々(うるうるうるうる)幻想(ゆめ)の身辺(あたり)に同調して行く規矩の人陰(かげ)から〝万葉〟さえ得た…。

      *

 陋屋(おく)の方から無残(のこ)る生憶(きおく)が充満して活き、意味を連れ添う自主(あるじ)の姿勢(すがた)が無駄を省ける音頭を低めて、孤高の気色が俺に弱まる未有(みう)の感覚(いしき)を呆(ぼ)んやり識(し)った。白紙(はくし)の表上(うえ)には白亜(しろ)い吐息が仄かに空転(ころ)がり幻(ゆめ)の文言(ことば)を懐(おく)に覗ける明日(あす)への独歩(あゆみ)が清閑(しずか)に息衝き、漆黒(くろ)い一滴(しずく)が肌(からだ)を連れ添う未完(みじゅく)の気色が綻ぶ間(あいだ)に、意味を吟味(あじ)わう滑稽(おかし)な無形(かたち)は純白(しろ)い可能(かぎり)に噴散(ふんさん)して居た。女性(おんな)の足跡(あと)から背後(うしろ)を気取れる陽(よう)が仕上がり気楼の孤独に「俺」が疾走(はし)れる旧い一社(やしろ)は未踏(みとう)を訝り、透明色した淡い宙(そら)では一男(おとこ)の寝床が無頼を被(こうむ)り、宿無しから得る無垢の純心(こころ)を一幻(ゆめ)の辛苦へ落として行った。白亜(しろ)い気色の文句(ことば)の余韻(のこり)に白体(からだ)が野晒(のさば)り一女(おんな)の表情(かお)から退屈(ひま)が疾走(はし)れる日々の往路へ白体(からだ)を摺(す)り寄せ、俺の宙(そら)から白雲(くも)を呼び出す〝安定(さだめ)の関所〟を通過した儘、現行(いま)を養う現代人(ひと)の姿勢(すがた)に体裁(かたち)を観た直後(のち)内実(なかみ)を忘れる無言の拍車を良心(こころ)へ置いた。老い々々(おいおい)重なる自力の分身(かわり)と自分の人陰(かげ)とが暗夜(よる)の冥利を一幻(ゆめ)に観る内、微か仄かに生(せい)を活き得る無想の共鳴(さけび)に人身(からだ)を駒像(こまど)り、明日(あす)の孤独に発声(こえ)を忘れる煩悩(なやみ)の仕種は宙(そら)へと発(た)てられ、一人(ひと)の未完(みじゅく)に走馬(うま)を馴らせる無為の幻想(ゆめ)から一旦退(の)いた…。紺(あお)い文言(ことば)は孤独の人陰(かげ)から常識(かたち)を取り去り一幻(ゆめ)の感覚(いしき)に自分を見紛う奇妙の一総(すべて)を白衣に観た後(あと)、直ぐさま翻(かえ)れる黄泉の行方に温味(ぬくみ)を殺して、経過(とき)を見送る無音の自然(あるじ)を自己(おのれ)の事始(こと)から抽出して生く。

 幻夢(ゆめ)に見られた感覚(いしき)の装飾(かざり)に現(うつつ)の小躍(おどり)は神出鬼没で、無意味の事始(こと)から虚空を切り裂く夢想の自主(あるじ)は俺から野晒(のさば)り、暗夜(よる)の目下(ふもと)に他(ひと)を押し込む白水(みず)の流行(ながれ)は無音(おと)を厭(きら)って、過去の気色が純白差(しろさ)を装う明日(あす)の脚力(ちから)を充分観て居た…―――。

      *

 ―――…副作用をも含めて心身への影響が恐ろしく、薬漬けに成るのが恐ろしかった。不安と少々の恐怖は、この直ぐ先に在る。人込(ひとご)み、電車、大学、講義、発表だ。又、進行である。悪化して欲しくない。治りたいのである。

      *

 独創(こごと)の身上(うえ)では軟い孤独が上気を蹴散らせ、一幻(ゆめ)の逆行(もどり)に自信を灯(とも)らす無言の自主(あるじ)を横目を得ながら、丸い貌(かお)した脚力(ちから)の刃先(はさき)が純白差(しろさ)を賄う小人(こびと)を掌(て)にして、明日(あす)への一途(みち)から孤高を気取れる一人(ひとり)の小敗地(アジト)を構想して居た。淡麗(きれい)な眼(め)をした現世(このよ)を偽る幼女(おんな)の姿勢(すがた)が既知に息衝く無音(おと)の最中(さなか)を一通(とおり)に敷き詰め、孤独の常識(かたち)を白紙(こころ)へ落とせる気弱(きよわ)の晴嵐(あらし)を暗(あん)に連れ添い、一男(おとこ)の表情(かお)から一女(おんな)を養う無垢の〝小人(こびと)〟が冒険して生く…。騒音(おと)の無いのか一女(おんな)の精神(こころ)を器用に発狂(くる)わせ、一女(おんな)の好意へ無断に拡がる〝裏切り行為〟は苦労に羽ばたき、男性(おとこ)の純情(こころ)を自滅へ導く〝自分を庇護する廓の果(さ)き〟では、生気の嫉妬に滑稽(おかし)く乱れる幼児(こども)の一敗地(アジト)を倒壊し得た。宙(そら)に流行(なが)れる孤高の独義(ドグマ)は俺の独創(こごと)を鵜呑みにする儘、明日(あす)の夜目(よめ)へと端正(きれい)に羽ばたく未刻(みこく)の大器(うつわ)を都合に酔わせて、明日(あす)の一体(からだ)が他(ひと)に凍て付く無信(むしん)の連想(ドラマ)を紙面に浮かせる。紺(あお)い独義(ドグマ)に奇想の輪(わ)を観て自己(おのれ)の小敗地(アジト)へ絶縁したまま純白(しろ)い孤独は危篤を洩らされ浮き足立たされ、事始(こと)の生果(はて)にて一女(おんな)を見出す感覚(いしき)の名残を課題にして居る。女性(おんな)の小敗地(アジト)が宙(そら)に在るのは周知に在りつつ、俺の未憶(みおく)が一女(おんな)の静作(せいさ)に漆黒味(くろみ)を見付ける無言を認(したた)め、無理を通せる夜半(よわ)の気色を常識(かたち)から観て凡庸(ふつう)に気取らせ、脆(よわ)い小体(からだ)は恩を感じぬ仇(あだ)の奈落を装填して居た。

 気苦労から成る無駄の辛苦は未曾有を欲しがり夜半(よわ)の共鳴(なげき)が純白差(しろさ)を欲しがる私欲(よく)の細(ほそ)さを私難(しなん)に感じて、無垢を装う女性(おんな)の正体(からだ)は一男(おとこ)を見たまま火照りを濁らせ、純粋無垢から〝少女〟を偽る薄弱・天使に自我(おのれ)を化(か)えた。知恵の足りないそぼろの斑(あばた)を表情(かお)に照輝(てか)らせ、少女(おんな)の感覚(いしき)が泥を想わす無言の奈落を〝天女(てんにょ)〟に押し向け、自分の美城(アジト)を思惑(こころ)に弄(あそ)べる緩い愚者から悪魔を呼び出し、正味(あじ)の乗らない生気の許容(うち)には一女(おんな)の狂気が馬鹿を見て居る…。一男(おとこ)の孤独が女性(おんな)を連れ出し幼女(おんな)を傷付け、魔女(おんな)の論理を死地へ宿せる無想の進化を一声(こえ)に見たのは、女性(おんな)の弱気が女体(からだ)を腐らす〝真逆の正義〟と〝偏見〟だった…。

 紺(あお)い瞳(め)をした〝夢想分野(むそうばたけ)〟の樞(しかけ)の裏には、暗夜(よる)の帳が模造を繋げる連面(れんめん)して行く生味(しょうみ)が野晒(のさば)り、気色を腐らす〝常識〟を翻(かえ)した一夢(ゆめ)の火照りの美声(こえ)の成果(さき)には、労苦を識(し)らずに幼稚を仕掛ける無駄な女性(おんな)の正気が発(た)った…。無駄を配(はい)せぬ精神(こころ)の危惧には旧来独白(むかしがたり)の連根(つらね)が交響(ひび)から、明日(あす)への文殊を私闘(しとう)に癒せる旧い生憶(きおく)に故相(こそう)をばら撒き生軸(きじく)の夢想(ゆめ)から覚醒するのを明日(あす)の三度(みたび)へ私用を拡げて、今日の孤独を明日(あす)に癒せる無論の律儀を走馬と独走(はし)らせ、暗黙(やみ)の清閑(しじま)に一念(おもい)を馳せ得る苦労の空間(すきま)を独自に埋(う)めた。狭い〝一途(みち)〟から奇妙を挫ける所以(ありか)を拵え、一夢(ゆめ)の塒(くら)から私宝(たから)を取り出す〝事始(こと)の哀れ〟は生気を誘(いざな)い、現世(このよ)の空間(すきま)へ愛を差し込む現行人(ひと)の孤独に我執が照り付け、自己(おのれ)の無意(むい)から理屈を蹴散らす宙(そら)の道化は一女(おんな)を観て居る…。俺の体裁(かたち)は女性(おんな)の無垢から未知を見出し、一女(おんな)の未知には無知が活き得る活気伝(かっきづた)いの空気(もぬけ)が先立ち、脆(よわ)い正体(からだ)は自然(あるじ)に与(くみ)せず一男(おとこ)を儲け、明日(あす)の目的(あて)から草木(くさき)を搔き出す乱心(こころ)の揺蕩(ゆらぎ)を大事に立てた。白亜(しろ)い二兎(うさぎ)は現行人(ひと)の前方(まえ)から段々乖離(はな)れて、一幻(ゆめ)の法律(おきて)を易く破れる孤高の偏見(せいぎ)を白心(こころ)に観たまま一人(ひと)の脆差(もろさ)を堕落に見付ける夢想(ゆめ)の強靭差(つよさ)に吐息を吹き掛け、純白(しろ)い流行(ながれ)が一人(ひと)を培(やしな)う宙(てん)に蔓延る一人(ひと)の悪魔は、「喋る壁」から未踏(みとう)を踏み込む一新(あらた)な人陰(かげ)へと打算を敷いた…。

      *

 …父親が帰る前、十五時三十分に、母用のヘルパーさんが我が家のインターホンを鳴らして、来た。普段通りの事である。俺は、自分がこんな状態で居るのに…、とまた我儘の虫が騒いで「ええ?…」と疑問を持った。が、直(す)ぐに冷まし、ヘルパーさんに気持ち良く相対(あいたい)した。母親のヘルパーさんの中では唯一花が在るIさんだった。

      *

 未知の理郷(くに)から「俺」を引き出し純白(しろ)い夜宙(よぞら)は未覚(みかく)の自然(あるじ)を共鳴(こだま)に見る頃、明日(あす)に活き得る一人(ひと)の理性(はどめ)は一幻(ゆめ)を観ながら我体(からだ)を着忘(きわす)れ、〝苦悩(なやみ)の黄泉〟から既知を剥き出す齢(よわい)の手数(かず)さえ〝阿修羅〟に観て居た。事始(こと)の不足に自己(おのれ)を省み、他(ひと)の小手(こて)から冒険(まよい)が先出(さきで)る黄泉の形(なり)には快夢(あくめ)が零れて、男性(ひと)の四肢(てあし)が現行(いま)へ懐かぬ孤踏(ことう)の自主(あるじ)に喧嘩を売った…。奇妙の事始(こと)から傍(よこ)へ落ち込む「身売り」の速度は暗黙(やみ)へ先駆け、透明色した逸り文句を月下(つきのした)にて無実に帰(き)し活き、現代人(ひと)の信仰(まよい)が大手を振り貫(ぬ)く明日(あす)の〝行為〟に落穂を拾う。幻夢(ゆめ)の共鳴(なげき)に形成(かたち)を蹴忘(けわす)れ私欲(よく)の謳歌を充満させ得る〝律儀〟な主観(あるじ)を凡庸(ふつう)に見て取り、一女(おんな)の形見が何処(どこ)に在るのか「無数の生憶(きおく)」を捉え始めて、俺の背後(うしろ)の奇怪な道標(しるし)は白亜に紛れる未活(みかつ)を想う。

 事始(こと)への記憶が生録(きろく)を興して〝問い〟を観るうち頑なながらの作業を固める天使の好意が俺へと微笑み、俺の背中をずっと見詰める両親(おや)の自覚(すべて)が宙(そら)を見るのは、〝無数の企図〟から首(こうべ)を擡げる「黄泉の進歩」の絶対だった。他(ひと)の人陰(かげ)から自己(おのれ)の未完(みじゅく)を想って生くのは、人体(からだ)の側(そば)から小宇宙(そら)を眺める身軽の気力を産んで居ながら、幻(ゆめ)の行方(かなた)へ億尾を挙げ得る未知の進化が唐突にも成る。俺の人体(からだ)と他(ひと)の生体(からだ)が宙(そら)を夢見て闊歩に向くのは、独創(こごと)の概句(おおく)が白亜差(しろさ)を気取れる未開の杜から始終を見て取る〝憤怒の自主(あるじ)〟に悶々発(た)った。俗世(このよ)の成果(あげく)に現俗人(ひと)の常識(かたち)が生堕(せいだ)を識(し)るのは自然(あるじ)の背中に〝自分〟を負わせる現代人(ひと)の小敗地(アジト)が俗世(このよ)に紛れて俗悪(あく)の音頭を叩いて行くのは一幻(ゆめ)の一通(とおり)へその実(み)を捧げる事始(こと)の狢に通感(つうかん)して生く。幻(ゆめ)の空転(まろび)が宙(てん)へ咲くのは孤高の成果(はて)にて、現行人(ひと)の〝哀れ〟を事始(こと)に費やす没頭(あたま)の向きなど確かに見ながら、幻想(ゆめ)の一連(つらね)に我が実(み)を汚(よご)せる現人(ひと)の強靭味(つよみ)は漆黒味(くろみ)を欲しがり、自体(おのれ)の温度を俗世(このよ)へ見送る見定(さだ)めの一途(いっと)に脚力(きりょく)に任せて独房(へや)に居るのは幻(ゆめ)の孤独が俺を苛み、純白(しろ)い人体(からだ)を宙(そら)へ根付かす私欲(よく)の謳歌の賜物でもある。漆黒(くろ)い気色に自体(おのれ)が生くのは律儀に応じた旧い景色が独房(へや)に覆われ活歩(かつほ)を顕し、悪(あく)の日種(ひだね)を目下(ふもと)へ引き得る一幻(ゆめ)の概(おお)くの惑わしでもある。俺の独身(ひとり)は旧い紅実(かじつ)をふと観た後(のち)にて、幻惑(ゆめ)の自主(あるじ)を葬り気取れる孤高の気色に通感(つうかん)する後(のち)、明日(あす)の孤独を恩寵(めぐみ)と替え行く事始(こと)の成就の生産でもある。寝室(ねむろ)に発(た)ち往く不可思(ふしぎ)な八頭(おろち)の醜態等から幻惑(ゆめ)の一路が器用に招ける白亜(しろ)い進化が殊に働き、堅い主観(あるじ)を今日に観て生く〝片目の自主(あるじ)の聴かれた坊〟には、愚弄(おろか)な行為が躰を貫く疲労の行方を〝斬新(あらた)〟に魅せた…。

      *

 …僕は相対(あいたい)しながら、母親の為に今日院の帰りに借りて来た『相棒』を寝転がりながら観て居た。ふと、女の可愛らしさと、女への性的欲求が高まって、女に甘えたくなった。それから、Iさんに甘えたくなった。Iさんが、母の目を盗んで今僕が寝転がって居る畳の上へやって来て正座して、僕に話し掛け、僕に甘えても良いムードを作り、その上で僕がIさんの太い太腿の上に顔を埋めて、Iさんの腰辺りに手を廻して抱き付き、甘えて居る光景を想像していた。「もぉ~~しょうがないわね――」等と言って、僕をあやすIさんの素振りまで想像された。

      *

 常識(かたち)を突き出ぬ空気(もぬけ)の主観(あるじ)が幻惑(ゆめ)の一通(とおり)を真綿で仕留める古豪を徹した身欲(よく)の概(おお)さに、初めから無い無知の交響(ひびき)を実体(からだ)に通せる腕力(ちから)が臨み、自己(おのれ)の孤独が肉体(からだ)を透して漆黒味(くろみ)を覚(さと)らす事始(こと)への奮起は、相当ながらの理知の弾みで「明日(あす)の暴企(ぼうき)」も暗夜(やみよ)を識(し)った…。事始(こと)の概(おお)くは試投(しとう)に詰め入(い)る奮起の狭間で〝未知〟の根(ね)を識(し)る無頼の猛起(もうき)を事毎識(し)りつつ、吟味(あじ)を忘れる二又(ふたつ)の道標(しるべ)を小宇宙(そら)に観ながら、事始(こと)の旧差(ふるさ)を一幻(ゆめ)に見紛う器量の孤独を偏に保(も)った。一女(おんな)の四肢(てあし)が白亜(しろ)い臭味を数えて居ながら孤独の教致(きょうち)は〝俺〟を交響(ひび)かす翌朝(あさ)の心機に凌駕を囁き、幻惑(ゆめ)の理性(はどめ)に肉体(にく)を透して宿せる〝我が身〟は、肉にも骨にも〝未知〟を添え得ぬ私欲(よく)の暴徒の明朗(あかるみ)だった。明瞭(あか)るい生憶(きおく)が一幻(ゆめ)の往路を通歩(つうほ)するうち次第の間(ま)の掌(て)は酷(こく)を牛耳る予感を拵え、旧来独白(むかしがたり)の〝告白〟から得た〝見識〟ばかりの実利の延命(いのち)は無駄に逆らい無駄を排せる寝室(ねむろ)の〝社(やしろ)〟を冒涜して居た…。奇妙な照輝(てか)りが一人(ひと)の身辺(あたり)を散策するうち孤独の従者は桎梏(かせ)を見定め、自分の実体(からだ)に生憶(きおく)が澄むのは一幻(ゆめ)の末路と小宇宙(そら)にて識(し)った。大胆から観た暗夜(よる)の空間(すきま)は一人(ひと)を苛み、信仰(まよい)の許容(うち)から生気を挙げ往く無理の集積(シグマ)を母体とした儘、旧い自明(あかり)の一総(すべて)の目下(もと)には現代人(ひと)の人影(かげ)など皆無であって、俺の前方(まえ)では現代人(ひと)の実体(からだ)がぼろぼろぼろぼろ皆殺(ころ)され始める好奇(こうき)の縮致(しゅくち)に希望が在った。独房(へや)の温度が徐々に退(さ)がって一幻(ゆめ)の行方が疎らに成る内、事始(こと)への未覚(みかく)は無業に徹する身欲に鳴り出し、孤独の概(おお)さが寝室(ねむろ)に交響(ひび)ける無垢の深化へほとほと醒めた。不穏の無音(おと)から律儀の当(とう)まで悪しき形成(かたち)は段々昇れる無穏(むおん)の家屋へ幻(ゆめ)を観ながら、精神(こころ)の一形(かたち)が美味を識(し)り生く自体(おのれ)の元気を活気に観て採り、一女(おんな)の肉体(からだ)を自然(あるじ)に挙げ行く未知の生果を啄み終えては、一人(ひと)の概気(がいき)を発散させ得る格別(べつ)の網羅を信(しん)に見て居た。怪しく成り出す旧来(むかし)を牛耳る本音の主観(あるじ)は事始(ことのはじめ)に白紙(こころ)を乱せる幻(ゆめ)一途(みち)にて哀れを乞い出し、未憶(みおく)の白壁(かべ)から夜目(よめ)に費やす精神(こころ)の孤独を一女(おんな)へ遣る内、清閑(しずか)に翻(かえ)れる無用の孤踏(ダンス)を小宇宙(そら)へ観たまま解体され得る…。一閃(ひかり)の初端(はし)から虚空を啄む一人(ひと)の主観(あるじ)は肉体(からだ)を避けつつ、寝室(ねむろ)の未知から吟味(あじ)わい深さを不断に囀り下等を観て採り、他(ひと)の寝室(ねむろ)の所以(ありか)を識(し)らない旧い姿勢(すがた)は耄碌しながら、事始(こと)の記憶が解体され行く理屈の無様を素手に採る内、身憶(みおく)の空間(すきま)に熱意が噴き出る漆黒(くろ)い実体(からだ)を微妙に保(も)った。座談の末(すれ)から俺の肉体(からだ)は幻視(ゆめ)から乖離(はな)れて他(ひと)の両腕(かいな)へ信仰(まよい)を運べる卑屈の闘志(とうし)を真傍(まよこ)に添え活き、俗世(このよ)の一総(すべて)に嫌気が差し行く個活(こかつ)の行方を揃えて行った。俺の体裁(かたち)は内実(なかみ)を呈さぬ不義に満ち足り、煩い事から災い事まで経過(ながれ)の神秘(ふしぎ)に〝相手〟を見て取る奇妙の偶奇に精神(こころ)を奪われ、出来事(こと)の初めて初当(いろは)を認(みと)める一幻(ゆめ)の逆行(もどり)の生気は企み、現行(いま)と明日(あす)との「人間(ひと)の俗世(このよ)」を現(うつつ)に採るのは、小宇宙(そら)の高嶺に無人を射止めた事始(こと)の末路(みち)にて結実して居る―――…。

      *

 …―――今、自分がこんなはっきりとした状態に居るからそう出来る、と心の隅で確信していた僕が居る。出来なかったが。しかし、日頃唱えていた〝俗世の女〟という響きが僕の胸中に入り、やがて僕は、神様に救いを求めるように成った。神様に、甘えようとしたのである。

      *

 苦界を活き貫(ぬ)く無頼の表面(おもて)を逆手(さかて)に観るうち無謀の暴挙は緑(そく)に見て取る旧来(むかし)の個活(こかつ)を上手(じょうず)に汲み取り、悪しき業(わざ)から盲目(やみ)を切り裂く無用の貨物を既視(おおめ)に取り添え、個人(ひと)の一切(ゆめ)から一念(おもい)を侍らす無機の結局(つぼね)を身笠(かさ)に観て居た。二重(かさ)ねた脆気(よわき)は無知に似ていて無想を欲しがり、相(あい)する暗夜(よる)には一女(おんな)を究(もと)める不断の脆刃(もろは)を空想して居る。白衣の内から表面(おもて)が逃れる不問の一男(おとこ)と芸術など成り、轟々唸れる一窓(まど)の外では暗夜(あんや)の如くが両掌(りょうて)を拡げて、起死を覗ける産みの両親(おや)など俗世(このよ)で捜せる心様(もよう)を観て居た。俺の周りに誰も居ないで一男(おとこ)も一女(おんな)も風の如くの内実(なかみ)を取り添え、素知らぬ貌(かお)して与太々々(よたよた)すたすた、素早く消え行く延命(いのち)を図れる…。孤独の諸刃(やいば)は苦渋を呑み込む余韻(おと)に聴えて暗夜(よる)の身内に涼風(かぜ)を起こせる不定の自然(あるじ)に阿り始める。俺の心身(からだ)がぐつぐつ煮え生く不当の自主(あるじ)の血流(ながれ)を観る時、一女(おんな)の貌(かお)には何も遺らぬ強靭差(つよ)い気取りが痕跡(あと)さえ残さず、暗黙(やみ)の内へとしとしと還れる脆(よわ)い気色を俺へと魅せた。俺の自覚(かくご)は幻夢(ゆめ)の許容(うち)より身笠(みかさ)を見出し俗の躾を現(うつつ)に知るうち一幻(ゆめ)の告知を虚空へ放り、漆黒(くろ)い夜宙(よぞら)に屍(かばね)を観るのは無想の範囲(うち)での産物成れども、奇妙に覗ける一女(おんな)を見たとき物の哀れを通感(つうかん)している…。白亜(しろ)い白壁(かべ)から矛盾に懐ける女性(おんな)現れ俺の〝一男(おとこ)〟の鈍(くも)った眼(まなこ)に道標(しるべ)を翳して嫉妬を突き付け、脆(よわ)い果実を擁護しながら発狂(くる)う自主(あるじ)を孤独に捧げる我執の病画(びょうが)を画成(かくせい)させた。明日(あす)の孤独へ夢想(ゆめ)を観るうち白亜(しろ)い白壁(かべ)には文句(ことば)が素通り、素早く失(き)え去る活気の晴嵐(あらし)は不当に根付ける暴嵐(あらし)を窘め、気不味い思春(はる)には自立して往く人間(ひと)の網羅を既視(おおめ)に観て居る。端正(きれい)に掲げる程好い魅惑は一人(ひと)の相(そう)にて太鈍(たどん)を試み、通快(つうかい)ながらに重荷を牽(ひ)き行く高尚(たか)い主観(あるじ)を換算して居た…。冷(さむ)い夜から〝白夜〟が仕上がり、俺の孤独は一人(ひと)を蹴外(けはず)れ、明日(あす)と現行(いま)との不定の調子を一途(みち)の頭上(うえ)から客観出来ない俗世(このよ)の独義(ドグマ)を既視(おおめ)に観て居る…。幻想(ゆめ)の一通(とおり)を夢中に観るうち明日(あす)の自滅(ほろび)は金(かね)を求めて、奇妙の宮(みやこ)を女性(おんな)に見果てる退屈(ひま)な呼笛(あいず)を現行(いま)に気取った…。俺の周囲(まわり)で通行して生く退屈(ひま)の自主(あるじ)は白衣(はくい)を着たまま紺(あお)い秩序を計算して行く真理(しんり)の快無(オルガ)を幻見(ゆめみ)て独歩(ある)ける―――。太古の虚空(そら)へと自覚(すべて)を放れる脆(よわ)い兆しの自己(おのれ)の一幻(ゆめ)から女性(おんな)の気色が矢庭に吊るされ、一幻(ゆめ)の概(おお)くが寒気を感じる孤独の独気(オーラ)を見定(さだ)めて往く内、昼下がりに観る公園から出た五月蠅(あわ)い気性(きだち)は人群(むれ)を厭(きら)った…淡い生憶(きおく)は賛美を包(くる)める自覚(すべて)を黙らせ、騙し騙せる人間(ひと)の思惑(こころ)を気丈に咲かせる有頂に携え、鈍(くも)った両眼(まなこ)は現代人(ひと)を皆殺(ころ)せる強靭(つよ)い自主(あるじ)を自然(そら)に観て居た。

      *

 「受診して、今まで通りに頭に疾患が無い事がもし分かったなら、必ず又楽に成れる。明日(あす)の今頃には、今悩んで居る自分が小さく、何れは茶痴(ちゃち)く見得る位に、きっと楽に成って居る。必要なのは脳外科よりも寧ろ精神科医である。」等と昨夜予期して居たが、精神疾患というのも想像以上に複雑でややこしいものが在り、今日聞いた気の遠くなるような治療過程と、貰って来た「〇・二五錠だけを一つの袋から取り出してお呑み下さい」と言った抗神薬(こうしんやく)の微妙な匙加減と三種と言う初めての多さに、その「複雑さとややこしさ」が俺に対して出ている。今日は、母親の入浴日なので、父親が落ち着いた後、僕は母親の何時(いつ)もの要望で二階の自室に上がらなければならない日であり、二階の自室から、階下交わされる父親と母親の会話を、微かに聞き取れる範囲で、盗み聞きして居た。「俺の事を言っている」と訊き耳を立てて居た。大体、二人の声の調子で会内容を図れるのだ。浴室のドアが開(ひら)いた時、「同志社に行って今まで…」と言うような父親の声がはっきりと聴き取れた。矢張り、「俺」の事を少し話して居た様(よう)だ。俺は矢張り、壁を見て居る。この「壁」に何か、目的を見付けたいのだ。

      *

 夢告(むこく)の空間(すきま)を上手く潜(くぐ)って俺の心身(からだ)は透りながらも、他(ひと)の気色が疎らに散らばる俗世(このよ)の臭気は跡(あと)を絶たずに、明日(あす)への孤独を打ち立て始める白壁(かべ)の目前(まえ)では「無頼」を灯せるアンドを識(し)った。白壁(かべ)の前方(まえ)では二重(ふたえ)に跨る孤独を越えても俗に紛れる孤高の螺旋(とぐろ)は小宇宙(そら)の寝床で他(ひと)を待ち受け、透明色した不当の人種は「宙(そら)」を観たまま消沈して活き、霊に対する誰の目前(まえ)でも一重(ひとえ)に描(か)き尽(き)る煩悶(なやみ)を観て居…。白亜(しろ)い人煙(きり)には夢幻(むげん)の両腕(かいな)が振舞い続けて晴嵐(あらし)も暴嵐(あらし)も俗人(ひと)の心中(うち)にて思われ尽せず、不問の信者が〝奈落跳び〟する衝動(うごき)の亘(わた)りを延々観て居る…。揺れ続けて行く日々の「白壁(かべ)」にて俺と他(ひと)との心様(もよう)が表れ、不問の跡(あと)にて宙(そら)が蔓延る夢限(むげん)の軌跡が脆身(もろみ)に失(き)えた…。俺の背中は白壁(かべ)を得ながら宙(そら)に鈍(くも)れる俄かを識(し)りつつ、他(ひと)の動作に重点(おもき)を置けない我執の道化師(ピエロ)に傾倒して居る。苦悩の成果に〝小雨〟が張(ば)ら突き未来(さき)の景色に鈍(くもり)が先立ち、明かし尽(き)れない人間(ひと)の衝動(うごき)が自己(おのれ)の自滅(はめつ)を仄かに疑う。俺と両親(おや)とを軽薄(かる)く隔てた一つの樋には日々の脆味(よわみ)が空気(もぬけ)を装い、隠し尽(き)れない自体(おのれ)の〝白壁(かべ)〟まで夢限(むげん)に透して延命して往(ゆ)く…。白衣(はくい)の装飾(かざり)が〝日々〟を飾って「俺」の文句(もんく)を文言(ことば)にする時、奇妙の小敗地(アジト)が幻(ゆめ)に蹴上がり、未信(みしん)に満ち往く閏の日蓋(ひぶた)が白壁(かべ)を装う…。俺の目前(まえ)では微動に佇む夜半(よわ)の独創(こごと)が美味を観る時、文句(ことば)の破(は)れ間(ま)が一切(きり)を付け得る美白の白壁(かべ)が、余程清閑(しずか)に佇み続ける…。無用の空気(しとね)に憤怒が紛れて自己(おのれ)の独義(ドグマ)を白壁(かべ)に観る内、清閑(しずか)に成り止む無垢の仕種は浮浪に従順(したが)い未定を見定(さだ)める…。苦労の末路(すえ)から未完(みじゅく)が駆け出し幻想(ゆめ)の一滴(しずく)を過去に見る内、両親(おや)と息子の孤踏(ことう)の順序は白壁(かべ)に挟まれ感覚(いしき)を失(け)せた。白壁(かべ)の目前(まえ)では俺は戯れ両親(おや)の気配を宙(そら)に見れども、一体(からだ)を取り巻く周知の感覚(いしき)は路頭に迷える未完(みじゅく)を訴え、白壁(かべ)を講じた一総(すべて)の孤独は俺に対して、常緑(みどり)と同じに体裁(かたち)を象(と)らずの朗笑(わらい)を見上げて「俺」を見下(みおろ)す…。

 幻(ゆめ)の間際に一声(こえ)が聴こえた。両親(おや)の信仰(まよい)が俺を突き刺す〝美容〟を保(たも)てる生気を魅せた…白壁(かべ)を隔てる柔裸(やわら)の呼笛(あいず)が俺の前方(まえ)にて思春(はる)を想わせ、思春(はる)の許容(うち)から一生(せい)を気取らす物見の諸刃(やいば)が接吻して来た。漆黒(くろ)い理性(はどめ)は俺の過去にて踏ん切りさえ付け白壁(かべ)の目前(まえ)にてすうっと透れる脆(よわ)い自体(おのれ)を構築して居る…。一重(ひとえ)の夜目(よめ)には夜半(よわ)の雰囲気(くうき)が呆(ぼ)んやり活きつつ孤独を発狂(くる)わせ独房(へや)を醒ませる俗の現代人(ひと)等皆殺(みなごろ)しにする…白壁(かべ)が立っては白壁(かべ)を見下ろし、白壁(かべ)の固さを俺に問い掛け、俺の身許で概(おお)きく寝耽(ねふけ)る硬い温度を発散して行く…他(ひと)の懺悔に魅了されつつ生気を荒して鈍(くも)る白壁(かべ)には、人間(ひと)の四肢(てあし)が如人(にょにん)を描(えが)ける脆弱(よわ)い行為が音頭を取った。…意味有り気に観る白壁(かべ)の一声(こえ)から逃れて来たのは、無知の眼(め)をした白衣の天使で俺の延命(いのち)を拾い続ける…「喋る白壁(かべ)」には感覚(いしき)が発(た)たない個牢(ころう)に浮べたmonk(モンク)が住んだ…(遂完)



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~喋る壁~(『夢時代』より) 天川裕司 @tenkawayuji

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