明晰夢/カルペ・ディエム

古井 朔

明晰夢/カルペ・ディエム(短歌13首連作)

あまおうととちおとめならあまおうか甘いだけが苺ではない


順番に色を数えるきみとボクきみにはピンクでボクには赤だ


虹色がきみとボクとで違うんだひと色たりない愛がたりない


知ってるかい黄色い花が多い理由わけ蜜蜂たちに愛されたくて


見つけたの夢見鳥をその指は光る風に戯れるつがいの蝶を


夢で見た話の続きを書いてみるこれはきっとハッピーエンドにはならない


会いたいといえばいうほど遠のいて夕羽振る風ネモフィラゆれる


かつてフラジールと言ったあのひとはあまりに脆く儚く消えた


さまよって辿り着いた先にあったのはひとつの寓話きっと愚者フールの物語


畳まれた記憶のベールを切り刻みやがて燃やして土に返そう


記憶すら氷河の中に閉じ込めた春など来ないここは永久凍土


朧げに見えているのは過去の自分で見えない闇は今の自分だ


だんだんとおぼろな記憶の明晰夢カルペ・ディエムと唱えたからか


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明晰夢/カルペ・ディエム 古井 朔 @izayoi_2023

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