置き傘
愛美
置き傘
私は今日も生きた
明日を生きるために生きた
何も持っていない私は明日、
今日という日に何を置いていけるのだろうか。
記憶の中の今日を、何気ない日々の一角にある1日だと残すのだろうか。
目に見える今日を明日のために残したいのに、
何も無いから何も残せない。
全てを持っていた時なんてなかった。
周りに押し付けられた私を、ただ演じるだけの日々のどこが素晴らしいと言えるのだろうか。
それは、私だと言えるのだろうか。
明日に行くのが怖い。
次はなにを犠牲にするのだろうか。
また今日と同じ、すり減った自分に出会うのだろうか。また今日と同じ、押し付けられた自分を演じるのだろうか。
自問自答を繰り返すだけで今日が終わる。
考える度に、声は大きくなっていく。
私が作り上げてしまった、嫌味な声である。
また、明日考えよう
昨日の自分もそう言った
もう明日が怖くて、自分が嫌で、何を考えてもついてくる声にうんざりした。
変えたくなった。
自分を。明日を。
明後日を。明明後日を。これからを。
今日と違う明日を。
でも今日や昨日を置いて行くわけにはいかない。
振り返るとまた帰ってしまう気がするから。
だから私は昨日や今日の私も守る事にした。
いつまでも降り注ぐ声を防ぐために。
傘を置く。
振り返ってもまだそこは雨だけど、そこの傘を持つ私は、これからの私を応援してくれると思うから。
これから私は、雨を太陽に変えて、声を枯らす。
今まで犠牲にしてきた自分を、
取り戻すために。
F i n .
置き傘 愛美 @hubuki0610
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます