第4話 神様流のお仕置と旅立ち
「あのぉ......オーベル様に聞きたい事があるんですけど」
『え?なになに~?((ガツンッ))今ちょっと牢屋から逃げ出した悪い子を24等分にしてお仕置しながら聞いてるから聞き取れてなかったらごめんね~☆』
......こえーよ。
てか、24等分て何!?
「ま......まず、あのよく分からない【七つの大罪】とかいうスキルについてなんですけど」
『あ~あれね!((ズガガガガッ))前に僕が稲荷君のとこに行った時に観た、とあるアニメからインスピレーションを受けてね~。((チュドンッ!ゴシャァッ))いつかどっかで採用しようと思ってたから今回ついにやっちゃった☆......あ、ちょっと待って、目玉だけで逃走しないでよぉ~』
「目玉だけで逃走......?」
いや、なんかスキルの解説よりも強烈な音や会話を挟まれて、内容が全然頭に入ってこないのだが!?
『一応ね、成長するスキルだから戦う場面になったら((ゴリゴリゴリゴリ))バンバン使っちゃっていいよ~!簡易的に説明もステータス画面に書いてるでしょ?』
「あ......あーまぁ、一応ありましたね」
『僕的には
「なるほど......それは便利ですね」
『ただし誰でもかんでもじゃないよ?相手は基本的には魔物か罪を重ねて悪神またはその眷族の手に堕ちた者......ってとこかな。たまに悪神以外の落ちぶれた神もいるかもだけどね』
「神」
『過去に悪さをした悪神に影響を受けた奴も少なくないからねぇ。特に力の弱い神なんかは染められやすい。......君の場合は僕やユグドラシル......あとは精霊達が常に気にしているから大丈夫だけど。それに君の傍にはもうすぐ古竜から格上して神竜となるかもしれない奴もいるし((ドガーンッ))』
「(さっからちょいちょいヤバめの音がするけど怖くてツッコめない)はぁ............はぁ?しんりゅう?」
「なんと!俺も我が嫁と同じ眷族となれるのか!?」
『その辺はジェグルド君のこれからの頑張り次第かなぁ?((ギュルルルルルルッ))』
「......ふむ。まぁ、我が嫁と離れる事などないから成り行きに任せれば自然と成っている事だろう」
『そうだね~☆だからハナちゃんの事は任せたよ、ジェグルド君!......あ~!しまった、足首を残してたせいで顔が生えてやがる!待て!((ズガガガガッ))』
「顔が......生える......?」
なんなの?
ヤバめの音と言い、オーベル様のところはいったい何が起きてるの......?
「ハナ、不思議そうな顔してるね?オーベル様はね、神界で刑罰の執行係も務めてるんだよ!ああ見えて裁きを与える神でもあるしね。僕達の親、そして上司でもあるオーベル様は実は結構偉い神様なんだよー!」
「なる......ほど?」
ユグドラシルの楽しげな声での説明にふんふんと聞きながら想像する。
ああ見えて......と言われてもオーベル様の姿を見た事がないから顔の造りの想像は出来ないが、なんとなく楽しそうに鼻歌でも歌いながら罰している様が思い浮かぶ。
......うん、サイコパスですね。
『まぁ、スキルについてや他にも分からない時は気軽に声掛けてよ!((グシャッ))お仕置中以外なら答えられる......はず☆』
「分かりまし......あ、そうだ!リュックの中身!」
『リュック?あぁ、そっちに送った荷物の中身か~......あ、もぉ~!目玉の親父が6体も出来ちゃった......ハァ~燃やすかぁ。ハナちゃん、ごめんけどリュックの中身はユグドラシルかジェグルド君にでも聞いて~!こっち忙しくなったからまた後でね!......ぐぉらぁぁぁぁてめぇらぁぁぁぁぁ.ぁ...ぁ........((チュドーンッ))』
「..................うん、忙しそう」
神様って大変なんだな(遠い目)。
□ □ □ □ □
あの後ユグドラシルにリュックの中身を聞いた。
中に入っているのはお金や身分証、旅には欠かせない世界地図などを含む道具や日用品が主で、あとはオーベル様特製の便利道具が入っているらしい。
............不安。
「その身分証は冒険者ギルドのカードにもなっていて、それがあれば各国に自由に行き来出来るんだよ。まぁ、中には身分証+入国料を取るところもあるけどね」
「ふんふん......」
「冒険者ギルドのランクについては任務の事もあるからオーベル様がちょちょいと神仕様で最高のSランクにしてて、特例SS難易度クエストも受注可能にしてるみたい。詳しい事はハナの隣にいる現役Sランク冒険者に聞いてみて」
言われて思わず隣を見上げる。
グンさんは相変わらず飽きもせず私を見ていたらしく、目が合った。
「どうした?我が嫁」
「いや......グンさんてSランク冒険者だったんだね」
「ああ。昔、暇でなんとなく冒険者ギルドに登録してな。美味い魔物肉を得るついでに討伐をこなしていたらいつの間にかSランクになっていた」
最高ランクのSランクってそんな暇を潰してたら成れるものなの......?
「暇人のお遊びのようなものだからソロで適当にやっていたんだが、ランクが上に上がれば上がるほど周りの有象無象が鬱陶しくてな。最近は面倒になって森に引き篭っていた」
「あー......いるよね、そういう人達」
グンさんによる説明だと、冒険者ギルドのランクは最高がSランクでその下にA~Gランク。
一番下はGランクでそこからF・E・D・C・B・Aランクの順に下から上がっていくみたい。
私はオーベル様の文字通りの神仕様により初っ端からSランクにされたけど、そもそも何かと戦う事自体初心者だから戦い方やスキルの使い方もグンさんとかに学びたい。
だから最初は少し易しめのクエストを受けて練習を積むつもり。
「ちなみに、そこのジェグルドは竜王国だと王様よりも偉い人扱いだから伴侶として行ったらハナもめっちゃ歓待されるよ」
「うえ」
そういや竜の中では始祖の血を受け継ぐとか言う古竜であるグンさんが一番強いんだっけ。
しかも場合によっては神竜になれるとか言ってたし......神竜って神様の竜って事でしょ?
私という存在も異質だけど、グンさんも相当稀な存在だよね......ある意味お似合いって、コト......?
「ハナは生まれたてでも神族だから食事を摂らなくても死ぬ事はないけど、ジェグルドは神竜へ片足突っ込んでるとは言え、神界ではなくまだ下界の生物の枠のままだからハナも彼と一緒にご飯食べたりと前の世界でやってた生活をここでもすればいいよ」
「うん、分かった」
今まで人間として生きてきたから急に食べなくても大丈夫と言われても戸惑いしかないし、今まで通りで良いと言われてホッとした。
前の世界でも最後の方は点滴や薬漬けの生活ではあったけど、元気な時はそれこそ自炊してそれなりに美味しいものを食べていたのだ。
「ちなみに僕というユグドラシルの木があるこの地はエルフ族の国であるガーランド王国にある精霊の森の奥なんだ。だから最初はまずこの森を抜けてガーランドの首都エリアスを目指すといいよ」
うん、地名を言われても全然分からんけどグンさんもいるしなんとかなるだろ。
よっこいせと立ち上がりリュックを背負う。
グンさんが自分が持つと言ったけど、そこまで重くもないしグンさんにリュックは笑えるほど似合わないから気持ちだけ受け取ると言って頑なに断ったら諦めたみたい。
「ユグドラシル、ありがとう。何かあったら遠慮なく念話を送るわ」
「何かなくてもいつでも送ってきて大丈夫だよ、やることも無いし。なんせ、僕は木だし」
「......まぁ、そうだね」
度々言うその「木だし」のセリフはユグドラシルジョークというやつだろうか?
「じゃあね、ユグドラシル。行ってきます!」
「いってらっしゃーい!ジェグルド、ハナを頼んだよ」
「ああ、我が嫁は俺に任せろ」
ファサファサと揺れる大木を背に、私とグンさんは並んで歩き出したのだった。
虹色転生日和 天峰 繭 @amaminemayu
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