虹色転生日和
天峰 繭
第一章 : ハナと押しかけ婿
第1話 理不尽な死の理由と異世界転生
「......なんだろ、ここ」
気が付いたらやたら大きな木の下で座り込んで寝ていたらしい。
辺りを見回すと一面が色とりどりの花畑。
淡い光も差し込んでいて、とっても幻想的な感じ。
「夢かな?......寝よう」
考えるのがめんどくさいのでもう一度寝ようとすると頭上から慌てたような声が聞こえてきた。
「待って待って!説明するから二度寝しないで!」
その切羽詰まったような声に胡乱げに上を見上げるが、そこには空高く聳え立つ大木しか見えない。
甘いテノールボイスだっただけに、前世声オタだった私は期待してワンチャンそこに声の主が居るのかと期待したが、誰かがその辺に居るようには見えなかった。
......幻聴か?
「うん、大丈夫だから!君が見上げている物で合ってるよ。僕はユグドラシル。君が今もたれかかって見上げている大木だよ」
「............木って喋れたんだぁ」
ーーうん、やっぱ寝るか。
「待って!お願いだから待って!!なるはやで説明するから寝ないでお願い!!」
物凄く焦った声で声の主らしい(自称)大木?が叫んでいる。
木も『なるはや』とか人間界の言葉知ってるんだなぁ。
「あのね、記憶は消してないらしいからちゃんと覚えてると思うんだけど。君は病気で亡くなったんだよ。............あれ?覚えてるよね?」
「......死んだかまでは分からないけど、重い病気だったのは覚えてる」
23歳の時、突然高熱と共に原因不明の謎の病に侵され病院のベッドで2年以上、投薬治療のかい無く少しずつ弱っていき寝たきりの状態になったのを思い出す。
最近はいつ亡くなった婆ちゃんがあの世から私を迎えが来るのかと......ただひたすら死が訪れるのを待っていた。
正直、体も心もボロボロで生きる気力など......もはや無かった。
最近はあまり家族すら会いに来なくなり、ひたすら病室で孤独に時間だけが過ぎていた。
「あ、それなんだけどね?どうやら君はある人物に呪われていたみたいなんだ」
「......呪い?」
言葉としては知っているが、それが自分に結びつかなくて頭になかなか入ってこない。
......そもそも、なぜ私が呪われるのかが分からない。
人様に恨まれるような事はした事が無い......はず。
理不尽な理由で無ければ、だが。
「しかも本来、その呪いは別の人物へ向けた呪いのはずだった。けれどその呪いのやり方が中途半端に間違っていたせいだろうね、その中途半端に間違った呪いは本来呪う相手とは別の人物へと向かってしまった」
「......まさか」
「そう、本来は何の関係もない君だ」
「..................」
私は間違ったやり方のせいで無情にも呪われ、苦しめられて......死んだ?
そんな事ってあるだろうか。
そんな理不尽な事って......ある?
「あんなに......あんなに苦しんだのに、」
「......そしてそんな理不尽な呪いによって不幸にも殺されて魂をも呪いに穢された君を不憫に感じた君の世界のとある神が、今君がいるこの世界の主神オーベル様にどうにか前より幸せに君が生きられるようこちらの世界で取り計らってくれないかと掛け合ったんだ」
「掛け合ったってどういう事?」
「本来はいくら不憫な死と言えど神が一個人の為に介入する事なんて無いのだけど、君はちょっと特殊だからね」
「......神職の家だからって事?」
私の父は現役の神社の神主だ。
跡継ぎは兄になる事は決まっていて、私は父や兄を手伝ったり、たまに神事の際に巫女を務めたりしていた。
「それもあるけど、君は元からあっちの神と交流があったそうじゃない」
「......は?」
神様と交流?
私の人生においてそんな凄すぎる大物と交流した記憶などない。
「あーほら、よく神社の裏手で狐にご飯あげたり遊んであげたりしたでしょ?」
言われて記憶から愛らしい狐の姿が思い浮かんだ。
小さい頃に雨の神社で出会った子狐。
雨に打たれ、体を丸めて震えていた子狐を数日間こっそり自分の部屋で介抱した。
その後元気になった子狐を見つけた神社の裏手に放したものの、それから私が大人になり家を出るまでたまに神社で見かけてはこっそりお肉をあげたり犬用の玩具で遊んだりしていた。
......今思えば家族から狐の話題は聞いた事が無かったな。
「まぁ、それはありましたけど............って、え?」
「うんそう、それ」
「............え、マジで?」
「マジで。その狐は君の世界風に言うなら【お稲荷さん】と言えば分かるかな?力はそこまで強くないけどアレも立派な神だよ」
マジか。
中心街からは少し離れてるとは言え、なんで都会に野生の狐が出るのか最初は不思議だった。
けれど可愛いからいつの間にかそんな事はどうでもよくなって神社で掃除する時に狐に会えるのをいつも楽しみにしていた。
あの可愛い狐が神様だったなんて......。
いや、確かに野生にしたら最初からやたら人懐っこい狐だとは思っていたけども!
「でも、狐......お稲荷様はどうしてこの世界の神様に掛け合ったの?」
「どうやら以前、こっちの世界で悪さした神モドキが君の元いた世界に逃げ込んだみたいでね。その時にお稲荷さんがその悪神を捕獲するのに協力した事で縁があったみたいだよ」
「へぇ~......」
説明されてもよく分からないが、とりあえずお稲荷様に貸しがあったこちらの神様が今度はお稲荷さんに借りを返したという事なのだろう。
「ちなみに改めて言うと、僕は君をこの世界に転生させたこの世界の主神であるオーベル様の眷族で世界樹でもあるユグドラシル。一応、この世界の君は僕と同じくオーベル様の眷族という事になってるよ」
「......神様の眷族?って......え?つまりどういう事?」
「んーそうだなぁ。僕が言うより自分で確認した方が早いと思うよ?なんかオーベル様曰く、君の為にスキルの使用や確認は君の世界で流行っていた某ゲームと似たような仕様にしたとか言っていたから、試しに『ステータスオープン!』とかそれらしい事言ってみたら?」
私の世界で流行っていたゲーム......なんか色々ありすぎて逆に分かりづらいけどどれだろ。
ドラ〇エかファイナルファ〇タジーか......もしかしてペル〇ナとか?
とりあえず待たせるのもあれだし、ちょっと恥ずかしいけど言ってみるか。
「ステータスオープン!」
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名前:ハナ(木咲ハナ)
HP:1000/1000
MP:20000/20000
年齢:見た目16歳程度
性別:女性
種族:オーベル神の眷族、神族(生まれたて)
称号:稲荷のお気に入り、主神オーベルの代理人、異世界からの転生者
スキル:七つの大罪 レベル1(傲慢【対象を服従させる※】・強欲【対象の能力を奪い取る※】・嫉妬【対象の姿形を真似する】・憤怒【一時的に攻撃の威力を大幅に増やす】・色欲【対象を魅了する※】・暴食【弱らせた対象を喰らい経験値を上げる】・怠惰【対象からの攻撃を無効にする※】※対象により成功率が変わる・レベルアップにより成功率上昇)
念話(対象:オーベル、ユグドラシル)
言語理解
備考:多忙でなかなか下界(神界以外のこの世界)に降りられないオーベル神の代わりに下界を見て回る役割。つまり現地監督者。
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......待って?
ちょっと待って?
なんか色々とツッコミたいけどなんなんですか、これ!?
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