三大美少女の待ち受け画面が俺らしい。
悠/陽波ゆうい
第一話
――スマホの待ち受け画面といえば、どんなものにするだろうか?
好きなアーティストの写真?
可愛がっているペットの写真?
無難に友達と撮った写真?
それとも、ちょっと気取ってエモい景色?
意外と、時間割にすると便利だよな。
まあ、いずれにせよ、共通して言えるのは……他人に見られても問題ないということだ。
その分、写真選びは慎重になるはずなのだが……。
さて、前置きはこの辺にしておこう。
そろそろ……現実と向き合わなければいけない。
「おい、ふざけんなよ! 本当にコイツがなのか!!」
「特にイケメンでもなく、勉強も運動も並よりちょっと上レベルぐらいで、どこにでもいそうな普通の男子なのにぃ!」
「友達関係もちょっと可愛い幼馴染がいること以外は普通だしな!」
「やっぱりあの噂……罰ゲーム説が濃厚だろ」
「いやいや、実は脅されている説あるんじゃね?」
――俺の席には、今日も所狭しと人が押し寄せていた。
その口から出るのは、俺への文句ばかりで……いや、俺の自己紹介の代行業でも始めたのか、お前らは。
コイツらの言う通り、俺、
だが、ここ1週間は普通の範疇には収まらない日々を送っていた。
その理由といえば――
「おい、答えろよ! なんでお前が――三大美少女のスマホの待ち受け画面になっているんだよ!!」
1人の男がそう叫べば、周りに集まっている全員が「そうだ、そうだ!」と叫ぶ。
なんだこの団結力。コントの練習か?
そして俺は……『三大美少女のスマホの待ち受けになっている男』として、学園で謎の注目を浴びている。
いや、どういうことだよ!?
「さあ、答えろ夕凪太一ぃ!!」
「今日こそは吐いてもらうそぉ!」
「知るかよ! 俺が聞きたいぐらいだ! というか、いい加減、休み時間になる度に来るな! 群がるな! 迷惑だ!!」
それに、俺の両隣と前後の席のやつらは毎回、わざわざ移動してくれているんだぞ!
「つーか、そんなに気になるなら本人に理由を聞けよ! 三大美少女ってやつらにさ! そっち方が早いだろうがっ」
俺が声を張り上げてそう言えば……先ほどまで止まらなかった彼らの声が、これまた息を合わせたように、ピタリと止まって……。
「い、いや、三大美少女に話しかけるなんて、おこがましいし……」
「そ、そうよっ。私なんて目が合うだけでついつい喜んじゃうし……」
「お、俺は話すより見ている方が好きだし……」
途端に目をそらしてしおらしくなった。
なんか、腹立つわッッッッッ!
「さっさと帰れ! あと3分で次の授業だぞ! 移動教室や体育のやつもいるんじゃねーか?」
「やべっ。俺、次理科室だったわっ」
「私、次体育なんですけどぉ〜」
「げっ、次の授業1分前着席にうるさい現代文の先生だっ。急げー!」
俺の周りに集まった生徒たちが一斉に散らばり、やっと教室に静けさが戻る。
「みんな、ほんとすまん……」
一応、クラスのやつらに軽くだが謝る。
アイツらも散々騒いだ分、謝ればいいのにっ。
「あはは……太一お疲れさま」
ふと、癒される声が耳に響く。
横を見れば、灰色のゆるっとしたミディアムヘアに、優しいタレ目な美少年がこちらにやってきた。
名前は、近衛
家が隣同士の幼馴染である。
昼寝や風呂まで一緒に過ごすほど文字通りの生まれたときから一緒だ。
今もお互いの家を行き来し、一緒にゲームをしたり、休日は遊んだりする変わらぬ関係だ。
「夏希ぃ〜。お前だけが俺の癒しだよ、ほんと……」
机に突っ伏す俺に、夏希は笑顔を浮かべながら言った。
「でもさ、三大美少女の待ち受け画面にされているなんて太一すごいじゃん!」
「全然すごくねぇよ! しかも、まだ噂寄りの話なんだろっ」
一応、文句や質問しまくってくるアイツらの話は聞いている。
その中のほとんどは、「噂で聞いた!」「クラスで話題!」などという、妙に信憑性がないものばかりで……。
まあ、話題になっているからとりあえず乗っているって感じだよな。
「でも、誰かは見たんじゃないの? 火のないところに煙は立たないって言うじゃん? それも、その相手が太一なんだし」
「ああ、そうだな。俺は黒髪黒目のフツメンのどこにでもいるごく普通の男子高校生のはずなのな……」
「自分で言うんだ。でも、ほんとなんでなんだろうね?」
「だから俺が聞きたいっつーの!」
俺の叫び声が教室に響いたが、「あっ、やべっ……」みたいな恥ずかしいさはもうない。
こうなったのも元を辿ればぜーんぶ、三大美少女で……。
「つか、そもそもよぉ……」
「ん?」
「三大美少女って……なんだ?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
更新頑張ります。
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三大美少女の待ち受け画面が俺らしい。 悠/陽波ゆうい @yuberu123
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